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2014年07月01日

サッカーW杯、私達は現実を見ていなかったのか?という疑問

 サッカーワールドカップ。史上最強と評されながらも日本は悔しいグループリーグ敗退という結果に終わりました。私も日本代表の試合は3試合とも観戦したのですが、それ以外では仕事で動き回っていることが多く、専門家や解説者がそれに対してどういう考えを持っていらっしゃるのか、あるいはどう分析されているのか、メディアに触れる機会が少なくてあまり情報は持っておりません。しかし、だからこその「素朴な疑問」や「今大会で私が感じたこと」を、勝手ながら2つのポイントで綴らせて頂きたいと思います。

≪私の注目ポイント≫

その1
ワールドカップ直前の練習試合。これは勝った方がよかったのか?負けていた方がよかったのか?という疑問

 前回の南アフリカ大会直前の岡田ジャパンは、練習試合でことごとく負け、メディアやファンからかなりの心配と厳しい見方をされていましたが、結果ベスト16位までコマを進めました。今回はそれとは真逆で練習試合では全て勝利。ドラマティックな逆転劇があったり、得点力も非常に高く、誰しもが「これはいけるぞ!」と期待を膨らませていましたが、結果1勝もできず。対戦する国の能力によっても結果は違いますが、私はこの大会直前の心理状態も少なからず何らかの影響があるのだろうと仮定しています。

 サッカーに限らず、アスリートの心理としてはやはり試合前はいい雰囲気で自信を持って臨みたいのは当然ですし、理想です。直前に負けることは強烈な精神的負荷がかかります。極力避けたいことです。しかしこの場合においては、逃げ場がないギリギリの時期に来ていることによって、自分たちの課題と弱さを突き付けられて直視しなければならなくなります。一人ひとりに強い危機感を生み、チームを引き締め一つにさせる。こういう作用を果たすのかもしれません。今回、代表選手の方々のワールドカップに向けての意気込みにはすごい思い入れを感じましたが、その奥の奥を突き詰めれば、もしかしたらまだ「命を獲る、獲られる」というような究極の危機的状況において感じる動物の本能を感じられていなかったのではないか?と思う訳です。

 大切だと言われていた1戦目のコートジボワール戦が不完全燃焼だったのは、フィジカルというよりメンタルの闘争本能に火がついていなかったためではないかと言い換えられるのではないでしょうか。

 「サッカーを知らない人が何を偉そうに!」と言われるかもしれませんが、競技は違えど私も、あんなに調子が良かったのに当日何かが噛み合わなかった試合を何度も経験しました。「なぜ?」と自分に問うても、とにかく残る後味はどこか燃えていない部分があったという感覚なのです。何が導火線に火をつけるスイッチになるのか、アスリートたちは常にそれを探しながら、見つけたり見つけられなかったりして、失敗と成功を繰り返します。

その2
私達は現実を見ていなかったのか?という疑問

 またまたサッカーの技術をよく知らない私が・・・とお叱りを受けるかもしれませんが、決勝トーナメントに進んだ国々の選手のプレーを見ると、状況を瞬時に見極め、弾丸のような速さのシュートが正確に打てたり、日本代表随一の速さを誇る長友選手がまったく追いつかない凄まじい速さのドリブルで次々にかわしていく選手がいたり、当たられてもびくともしない強靭な肉体の選手がいたり・・・。とにかく素人である私が見ても一目瞭然でモノが違うのがわかります。では日本。6月に出たFIFAランキング46位ということでしたが、これはグループリーグ対戦国の中で一番低いランキングであったことは皆さんもご存知の通りです。一体他と何で勝ることによって決勝トーナメントに進めたのでしょうか?私達は現実よりも日本代表に過度な期待を抱きすぎていたのでしょうか?

 『個人技では敵わなくとも、日本は俊敏性と機動力、組織力が持ち味』と言われていますが、その持ち味を機能させるためには、ワールドカップ出場選手の中で日本代表選手のほぼ全員が、素早さの平均があるとしたらそれよりかなり上回って素早くなければならないでしょうし、日本と同じような持ち味の小柄で素早い国々の中の一番と言われるところにプレーのイメージを置く必要があるでしょうし、相手の裏の裏をかくような多彩な戦術も絶対条件になってこようかと思います。それもこれも日本代表の強化側とすれば織り込み済みで対策をしてこられたことでしょう。また各選手の方々もそのイメージを持ってこの4年間を過ごして来られたことと思います。しかし厳しい表現になりますが、相手はそれらの想定を軽々と上回っていた。言い換えれば、想定はさらに厳しいものでなければならなかったということになります。

 ことごとく引き合いに出して恐縮ですが、私も選手時代、ライバルだったロシアを上回るために、世界一になるために、相手の持ち味をこちらも当たり前にできるように、そして自分たちの持ち味を相手が真似できないレベルに持っていくために、そんな意識を持って、コーチ、選手が本当に信頼関係を築き、辿った過程も納得しながら取り組めた大会がありました。しかし、相手ロシアは昨年の課題だった部分を完全克服し、動きのキレ、高さも段違いに上手くなっていました。「射程圏内に入る」と思っていたロシアとの点差は昨年より開いてしまう結果になったのです。相手の方が意識やイメージ、練習の過酷さなど全てが私達より上だったということです。欧米やヨーロッパの選手の中にいて、体格差がある私達日本人はその条件を克服した上で、さらにさらに上回る想定で相手を見ていなければ勝てないのです。悲しい現実でしたが、ただ言えることは、可能性は自分たちが信じればずっと続きます。サッカー日本代表が優勝を目指せばその可能性は信じる限り開かれているのです。私達応援側も過度な期待を持つというより、いつか彼らはやってくれる!と信じて、可能性を信じて、応援し続けるということが一番のような気がします。

 勝手に独自論を展開してしまいましたが、元アスリートだからこそ分かる辛さや苦しみ、喜びがあると感じています。この原稿を書きながらも決勝トーナメントは進んでいます!どこが優勝するのか・・・楽しみですね。

武田美保

武田美保

武田美保たけだみほ

アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト

アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…

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