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2006年09月01日

セルフプロデュースⅡ モチベーションの維持

前回の武田ビジョンでは、私の考える「目標達成に向けてのセルフ・プロデュース」について紹介させて頂きましたが、今回は「モチベーションを維持するためのセルフ・プロデュース」について。

よく、講演会での質問で「長い間競技を続けてこられてやめたいと思ったことはないのですか?また、3大会ものオリンピックを目指された理由と、そのモチベーション維持の秘訣を教えて下さい。」というものがあります。選手時代、私はモチベーションを維持しようと特に自らの意志で動いた記憶が、実はありません。感情の自然な流れに身を任せたと言ってよいでしょう。それでも、「やり続けたい」「もう一度目指したい」と思える動機がなければ、人は頑張れないもの。ではどうやって自然な流れを作ったのか、それを私自身の記憶を紐解きながら進めていきたいと思います。

目標を達成したあとに陥りやすいのが、いわゆる「燃えつき症候群」。バーンナウトとも言いますが、達成した次の瞬間から今まで自分を支え、自分を突き動かしてくれていた強い目的意識が無くなり、やるべきことがわからなくなり、そして自分の存在価値を見失い、精神的、身体的に何もやる気が起こらなくなるという虚脱感や虚無感のようなものを指しています。

選手時代を振り返ると、何度も練習や人間関係がつらくて「やめたい」と思ったことはありましたが、唯一なかったのが「達成感」。もちろんある程度の達成感は感じていました。試合後にはそれまでの全てのつらかったことが浄化されるようなそんな気持ちになることができましたし、それこそ達成感の中の喜びを得られなければ、本当につらいだけのシンクロになってしまってもっと早くにピリオドを打っていたでしょう。私がここで言う「達成感がない」という表現の意味は、「今回得た達成感よりまださらにその上の達成感や大きな喜びがあるのではないか?」という予感が残っていたからなんです。

特にオリンピックや世界選手権などの大会での表彰台は、筆舌に尽くし難い高揚感があります。でもその直後に、あるいは表彰台の上で「本当の喜びってこんなものなのかな?」と、この先が、この続きがあるような気がしてならないんです。私はそれが知りたくて知りたくてどうしようもなくなり、知るためにはシンクロを続けないことにはその思いが叶えられない。至ってシンプルなんです。

私が21年間も競技を続けてこられたのは、「知りたい」という欲求です。25歳のとき、トレーニングが充実し、本番のパフォーマンスも納得のいくものができ、そして結果も、念願だった初めての金メダルを獲得できた福岡世界水泳のあとも「シンクロってこんなに楽しいものだったんだ。1度だけでこの楽しさをやめてしまうのはもったいないな。まだ求めれば、もっと上の楽しさがあるはず。」と。大層なことは何一つ考えていません。私がこの経験で気づいたのは、「動機は単純な方が、躊躇のない一歩が踏み出せる」ということ。

まもなく競技を引退してから丸々2年が経とうとしています。新しいキャリアをスタートするときも、不安を掻き消してくれたのは「新しい世界を知って、新しい喜びを見つけよう。そのためなら何だって頑張れる。」でした。選手の時ほどの明確さはないものの、やはり頑張り方はどの世界に出たって共通していて、前へ進むスピードが違っても気にしないこと。そして、頑張ろうと思える動機が単純明快でこの先にある感動や達成感はどんなものなのだろう?という私の行動の原点を大切にして無くさなければ、多少の不安も乗り越えていけると信じています。

セルフ・プロデュースという響きの格好良さより、なんだか陳腐に聞こえてしまう程シンプルな私のモチベーション維持方法。でも、重要なのは「何が一番私を強くさせられるか」を知っておくことなのではないでしょうか。

武田美保

武田美保

武田美保たけだみほ

アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト

アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…

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