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コラム 政治・経済

2016年07月10日

企業の災害対策・BCP(事業継続計画)

 21世紀になって日本のみならず世界各地で大地震や大水害の発生が増加しています。水害の増加は地球温暖化が原因と思われますが、大地震の頻発はたまたま集中しているのか、それとも何らかの原因があるのか、今のところはっきりしていません。
 さて、企業が大地震や豪雨水害等により大きな被害を受けた場合、重要業務に対する被害を最小限にとどめ、最低限の事業活動の継続、早期復旧を行うために事前に策定する事業継続計画がBCPです。今回はBCPについてふれてみます。

BCP(事業継続計画)とは

 BCPとは、企業が自然災害や大火災などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
 緊急事態は突然発生します。有効な手を打つことがきでなければ、特に中小企業は経営基盤の脆弱なため、極めて大きなダメージを被るおそれがあります。

 緊急時に倒産や事業縮小を余儀なくされないためには、平常時からBCPを周到に準備しておき、緊急時に事業の継続・早期復旧を図ることが大切です。こうした企業は顧客の信用を維持し、市場関係者から高い評価を受けることとなり、株主にとって企業価値の維持・向上につながります。

BCPの役割(中小企業庁資料)

事業継続を図るBCPの特徴

 BCPで策定しておくべき主な計画は次の通りです。
(1)優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する
(2)緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
(3)緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と予め協議しておく
(4)事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく
(5)全ての従業員と事業継続についてコニュニケーションを図っておく

 図2の通り、企業が大地震などの緊急事態に遭遇すると操業率が大きく落ちます。何も備えを行っていない企業では、事業の復旧が大きく遅れて事業の縮小を余儀なくされたり、復旧できずに廃業に追い込まれるおそれがあります。
 一方、BCPを導入している企業は、緊急時でも中核事業を維持・早期復旧することができ、その後、操業率を100%に戻したり、さらには市場の信頼を得て事業が拡大したりすることも期待できます。

事業復旧のBCP導入効果のイメージ(中小企業庁資料)

BCPの防災のポイント

 経済産業省の資料、「中小企業が緊急事態を生き抜くために」を参考にして、地震対応事例からみるBCPのポイントを以下にまとめました。

1)代替手段の有効性
 代替性のある設備や施設を予め確保しておくことが望まれますが、いつ発生するかわからない災害のために二重コストをかけることを避けたい企業は多いです。
 災害対策として代替設備等を購入や保有をしなくても、現在保有している設備の中に代替機能を有するものがある場合には、被災時に活用することができる場合があります。したがって、代替方法の確保については、現在の設備や施設等について、その全体構成や機能や転用可能性などを確認しておくこと良いでしょう。

2)分散化の効果
 在庫商品の保管場所が分散していたり、製造場所が分散していたことで、事業継続に大きな支障が生じなかったという事例も見受けられます。
 分散化の効果の重要性は注目されますが、経営上の合理性・効率性との兼ね合いで経営判断が必要な側面があります。前述の代替手段の確保と同様に、まずは現在の経営資源の所在状況を確認して、分散化の視点で検討してみると良いでしょう。

3)取引企業からの支援
 原材料や部品メーカーが被災すると、製品供給先やさらにはサプライチェーン全体に損害をもたらします。取引関係にある企業の間においては、一方の企業の被災は他人事ではなく、取引の回復・継続にむけた企業間の協力や支援が行われます。
 災害に遭った場合には、取引先の企業に対して積極的に支援を求めることが必要な場合もあります。どのような場合にどのような支援を求めるか、予め検討しておくと良いでしょう。

4)情報発信の効果
 被災後にインターネットなどを活用して積極的に情報を発信することは、事業の継続を図る上で大いに効果があります。むしろ、震災で世の中の関心が集まっているときには多くの人や企業の目にとまる可能性が高く、新たな事業展開のきっかけになる可能性が大きいため、積極的な情報の発信が望まれます。

5)耐震措置や訓練の効果
 工場などに耐震措置を講じた結果、大きな被害がなかったや、豪雪に耐えるうる丈夫な設計にしていたため、構造的な被害を生じなかった、店内の見映えを犠牲にして耐震補強をするとともに、ガスを自動停止設計にしていたおかげで店舗への被害がなかったなどの事例があります。
 ホテルで年2回実施している避難誘導訓練により従業員が主体的に行動した結果、地震発生から短時間で宿泊客全員の避難を完了させた事例や、病院で40年来実施してきた避難訓練やあらかじめ避難場所を決めていた成果で、エレベーターが使用できなかったにもかかわらず、地震発生から約30分で入院患者223名全員の避難を完了できた事例があります。

 日本は自然災害の多い国です。企業においてはBCP(事業継続計画)を策定し、災害に強い体制を作られることをご期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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