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2016年05月10日

地震の正しい知識で防災と安全確保 -活断層型地震―

 この度の熊本地震で大きな被害が発生し、地震の怖さを改めて知ることになりました。5年前の東日本大地震後も私は地震について多くの場所でお話をしました。今回も早速多方面から地震について問い合わせを頂いています。そこで今回は、熊本地震を引き起こした活断層型地震について触れてみます。

熊本地震は活断層型地震

 熊本地震は布田川、日奈久断層帯の活動によって引き起こされたものと考えられています。4月14日の前震はマグニチュード6.5、最大震度7が観測され、4月16日の本震ではマグニチュード7.3、最大震度7が観測されました。なお、21年前の阪神淡路大地震も活断層型地震で、マグニチュード7.3、最大震度7でした。

 マグニチュードは地震のエネルギーの大きさを対数で表した指標値です。数値が1大きくなると約32倍の大きさになり、2大きくなると1000倍になります。関東大地震はマグニチュード7.9、東日本大地震はマグニチュード9でした。

 震度は地震による各地点の揺れの大きさを表す尺度です。マグニチュードの同じ地震であっても、一般に震源が遠ければ震度は小さく、震源が近ければ震度は大きくなります。また、距離が同じような場所でも地盤の状態で震度が異なります。

活断層の特徴

 活断層型地震は陸側のプレート内部での断層運動により発生する地震です。深さが概ね30kmよりも浅い地殻の内部で発生します。活断層および活断層型地震には次の特徴があります。

(1)一定の間隔で繰り返して活動
 活断層の断層面は固着しているので普段は動きませんが、断層面をはさむ両側の岩盤には常に大きな力がかかり、ひずみが生じています。このひずみが限界に達した時に岩盤が破壊され、断層に沿って両側が互いに反対方向にずれ動きます。こうして地震が発生して、ひずみは解消されます。活断層型地震はこの過程を一定の時間間隔で繰り返します。

(2)常に同じ方向にずれる
 活断層にかかる力のもとはプレート運動ですから、その運動の向きや速度は長期的にはほとんど変化しません。従って、活断層にかかる力も長期的には大きく変わりません。このため活断層の活動は基本的には同じ動きが繰り返され、いつも同じ方向にずれます。

(3)ずれの変異が累積する速さは断層ごとに異なる
 活断層が1回動いて生じるずれが数mであっても、それが繰り返されますとずれの量は累積して増加します。この増加していく速さは断層ごとに大きな差があり、活断層の活動の規模も、それから発生する地震も活断層ごとに異なります。

(4)活動間隔は極めて長い
 東日本大地震のような海溝型地震の発生間隔が数百年程度であるのに対して、1つの活断層による大地震の発生間隔は千年から数万年と非常に長いのが特徴です。活断層型地震はしばしば歴史に記録のないような大地震を起こすことがあります。

活断層データベースを理解する

 日本には活断層が約2000箇所あると言われています。そのうちのいくつかは調査がなされて、活断層データベースとして公表されています。データ例としまして、産業技術総合研究所による中央構造線起震断層・石鎚活動セグメント(愛媛県)の活断層データを表1に示します。表に示したデータは主要データの抜粋です。

表1 中央構造線起震断層・石鎚活動セグメント(愛媛県)
長さ 37km
平均変異速度 2.0m/千年
単位変位量 3.7m
平均活動間隔 1.9千年
最新活動時期 1584年~1793年
将来活動確率今後30年以内BPT分布モデルによる 0%




(1)この活断層は中央構造線起震断層の一部を構成しており、愛媛県の西条市、新居浜市、四国中央市に連なる37kmの長さの活断層です。一般に活断層の長さが長いほど、発生した地震の影響は大きくなる可能性があります。

(2)平均変異速度とは活断層の活動性を示す指標で、通常は1000年あたりの変位量として示されます。2.0m/千年とは、1000年間で2.0mの割合で変異していることを表します。

(3)単位変位量とは活断層が1回の活動(地震)で変位する量のことで、表の数値、3.7mとは1回の活断層地震で3.7m変異したことを意味します。

(4)平均活動間隔とは活断層が固有地震を伴う活動を繰り返すときの平均的な時間間隔のことで、1.9千年とは平均して1900年に1回の割合で活動していることを表します。なお、平均変異速度×平均活動間隔=単位変位量の関係があります。

(5)最新活動時期とは、ある活断層がもっとも最近に固有地震を伴って活動した時期のことで、表の1584年~1793年とはこの時期に活動(地震)があったことを意味します。歴史的には1596年に慶長伊予地震の記録が残っています。

(6)将来活動確率(今後30年以内)とは、確率モデルにより推算した30年以内に活断層が活動して地震を起こす確率で、表ではBPT分布モデルによれば0%と予測されています。

(7)この活断層のデータとしましては、平均的に1900年に1度の割合で活動しており、最近の活動は約400年前ですから、当面は活動を起こす確率は極めて小さいということが推定されます。

地震に対してまず出来る対策と備えを

 是非、皆様の住んでいる場所の近くの活断層を活断層データベースで調べて探してみて下さい。そして最新活動時期や将来活動確率などを確認してみてください。地震に備えて建物を強固にしたり建て替えたりすることは、直ぐにはできませんし費用もかかります。しかし、地震が起きたときにどう行動するかなどの準備はできます。できる対策や備えをしておくことは防災と安全確保のために極めて重要です。

 さて、公開されている活断層のデータベースには調査が十分に行われていない活断層が多数あります。また、データベースの将来予測はあくまでも確率的な数値であることをご理解ください。活断層型地震である阪神淡路大震災から21年目に、ほとんど予測されていなかった熊本地震が起きました。この間に活断層の調査はあまり進んでいなかったように思えます。国民の地震防災と安全確保のために、国による出来うる限りの活断層の調査を期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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