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2022年03月10日

プラスチック資源循環促進法における環境配慮設計について

プラスチック資源循環促進法(正式名:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が本年4月より施行されます。この法律では、環境配慮設計に関する指針や認証制度が策定されています。その結果、様々な機器、商品の製造・販売において、企業のプラスチック対策の取り組みが促進されることになります。今回は環境配慮設計について触れてみます。

環境配慮設計と認定制度

プラスチック資源循環促進法において、プラスチック製品の環境配慮設計に関する指針に即した環境配慮製品を国が初めて認定し、消費者が選択できる社会を構築します。その内容は次の通りです。

  1. 製造事業者等向けのプラスチック使用製品設計指針(環境配慮設計指針)を策定するとともに、指針に適合したプラスチック使用製品の設計を認定します。
  2. 国等が認定製品を率先して調達することやリサイクル設備を支援することで、認定製品の利用を促します。

この法律におけるプラスチックの定義は重要です。プラスチックという用語は和製英語です。英語のplasticは可塑性を意味します。日本語のプラスチックに相当する英語はresin(樹脂)です。

日本の法律等におけるプラスチックの定義は、JISや容器包装リサイクル法で定義されています。容器包装リサイクル法上でのプラスチックは、「高分子を必須成分として含み、加工時に流動性を利用して賦形、製品化する材料」とされています。セロハン、合成繊維、ゴム類はプラスチックには含まれません。

なお、法律や制度によってプラスチックの定義は異なることがあります。たとえば、税関における輸入品に対するプラスチックの定義はより幅広く判断されています。

プラスチックの環境配慮設計

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の政省令・告示についてという資料が、2021年8月に公開されました。この資料の中の「プラスチック使用製品設計指針」は、プラスチックの環境配慮設計のガイドラインになるものです。この指針について以下で説明いたします。

プラスチック使用製品設計指針においては、主務大臣は、プラスチック使用製品製造事業者等が講ずべき事項及び配慮すべき事項に関する指針を策定し、指針に適合した設計を主務大臣が認定する仕組みを設けるとされています。設計認定に係る製品を国等が率先調達(グリーン購入法の配慮)します。国等には地方自治体や公的機関等が含まれます。また、設計認定に係る製品を、再生材の利用に当たっての設備への支援が実施されます。

環境配慮設計にかかる調査は指定調査機関で行われます。指定調査機関の指定については、設計調査を行おうとする者の申請によって行うものです。申請に当たっては、必要な書類等を提出して頂き、欠格条項に該当しないことや適格要件に該当すること等の指定の基準等に照らして審査を行います。

設計調査に当たっては、製品分野ごとに別途定めることとしている認定基準について、設計認定の申請書類等の調査を行うことになり、そうした調査を行うに足る能力等を有した者を指定することとなります。

環境配慮設計の認証制度における、国、指定調査機関、メーカーとの関係を図1に示します。

図1 プラスチック製品の環境配慮設計認定のスキーム (環境省資料)図1 プラスチック製品の環境配慮設計認定のスキーム (環境省資料)

プラスチック使用製品設計指針

前述の告示資料に含まれるプラスチック使用製品設計指針は、環境配慮設計の指針になるもので、次のような項目が含まれています。

  1. プラスチック使用製品の設計に当たっての基本的な考え方
  2. プラスチック使用製品製造事業者等が取り組むべき事項及び配慮すべき事項
    (1)構造
    (2)材料
    (3)製品のライフサイクル評価
    (4)情報発信及び体制の整備
    (5)関係者との連携
    (6)製品分野ごとの設計の標準化や設計のガイドライン等 の策定及び遵守
  3. 設計認定を受けるに当たって適合すべき事項
    (1)総合的な評価及び情報発信
    (2)製品分野ごとの基準

上記の中で、2の(1)構造と(2)材料は環境基準設計で極めて重要な事項ですので、ここで紹介いたします。

(1)構造

  • 減量化:
    材料・部品、さらには製品全体として、できるだけ使用する材料を少なくすること等を検討すること。
  • 包装の簡素化:
    製品自体の保護や運搬・輸送時における効率化等を目的とすることが多い包装に関して、その目的の達成を維持しながら、過剰な包装を抑制することを検討すること。
  • 長期使用化・長寿命化:
    耐久性の高い部品の使用等により製品全体の耐久性を高めること、製品を繰り返し使用に耐えるものとすること、寿命の短い部品や消耗部品を使用する場合には、その部品を容易に交換できる構造とすることなどを検討すること。製品が壊れた場合、容易に修理することができるような設計を検討すること。
  • 再使用が容易な部品の使用又は部品の再使用:
    使用された後に再使用が容易な部品を使用することを検討すること。部品の再使用について検討すること。
  • 単一素材化等:
    製品全体又は部品ごとに単一素材化又は使用する素材の種類等が少なくするよう検討すること。
  • 分解・分別の容易化:
    部品ごとに容易に分解・分別できるような設計を検討すること。特に、収集・運搬や処理の段階で火災が発生するおそれがあることから、リチウムイオン蓄電池とその他の部品等とを容易に分解・分別できることが望ましい。その際、当該部品等を取り外すまでに必要な工程数ができるだけ少なくなるような設計を検討すること。部品等について、使用されている材料の種類の表示を行うことを検討すること。
  • 収集・運搬の容易化:
    可能な限り収集・運搬を容易にするような重量、大きさ、形状、構造となるよう検討すること。
  • 破砕・焼却の容易化:
    プラスチック使用製品が使用された後等には、部品の再使用又は再生利用が可能な部品を分離できない部品や再使用又は再生利用が難しい部品等については、チック使用製品廃棄物の減量化及び無害化又はプラスチック使用製品廃棄物からの熱回収等を目的として、破砕や焼却による処理が行われることを考慮し、破砕や焼却の容易化に配慮することを検討すること。

(2)材料

  • プラスチック以外の素材への代替:
    プラスチック以外の素材への代替について検討すること。
  • 再生利用の容易な原材料の使用:
    再生利用が容易な材料を使用し、かつ、材料の種類を減らすこと等を検討すること。再生利用を阻害する添加剤等の使用を避けることについて検討すること。
  • 再生プラスチックの利用:
    再生プラスチックの利用について検討すること。
  • バイオプラスチックの利用:
    「バイオプラスチック導入ロードマップ」に示した考え方に基づき、バイオマスプラスチックの利用について検討すること。やむを得ず自然環境中に流出することの多い製品については、生分解の機能が発揮される条件を考慮した上で、生分解性プラスチックを使用することについて検討すること。

プラスチック環境配慮設計の課題と展望

現在では、多種多様なプラスチックが極めて多くの商品、製品に使われています。プラスチック資源循環促進法により、プラスチック対策が一層進むことを期待されます。
プラスチックの環境配慮設計において、主たるポイントは次の3点です。

  • 小型化・軽量化、省資源・減量
  • 解体容易性、選別のし易さ
  • リサイクル、再利用しやすい

企業においては環境配慮設計において、製品や商品が、機能性向上および商品性向上との両立がなされ、プラスチックの減量やリサイクルが進むことを期待いたします。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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