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コラム 政治・経済

2020年09月10日

再生可能エネルギーの新展開

日本の再生可能エネルギーは大きな転換期を迎えています。今回は太陽光発電を中心に再生可能エネルギーについて触れます。

再生可能エネルギーは地球温暖化の解決に、またSDGs活動の促進にも大きく寄与しますので、その動向についてもご紹介します。

日本の再生可能エネルギーの固定価格買取制度は2021年3月末までに見直しが行われることになっていますが、ドイツの現行の制度などを参考に、予想される見直しの中身について考えてみます。

パリ協定と再生可能エネルギー

パリ協定は1997年に採択され、京都議定書以来18年ぶりとなる気候変動に関する国際的協定です。協定採択時には、気候変動枠組条約に加盟する全196カ国が参加しました。

パリ協定では、エネルギー供給の低炭素化による温暖化防止のため、再生可能エネルギーや原子力などの二酸化炭素排出量が少ない電源の比率を上げていくことや、化石燃料を使う場合には、従来の石炭から天然ガスのような低炭素な燃料へと転換していくなどの取り組みが進められています。

日本ではパリ協定に対応して、2020年までに自然エネルギーの発電量を8パーセントに引き上げる目標をかかげています。その達成のために、再生可能エネルギーの導入量を増やすなど低炭素排出なエネルギーミックスの推進と、エネルギー利用の高効率化の取り組みなどが進められています。2030年のエネルギーミックスにおいては、徹底した省エネルギーとともに、再生可能エネルギーを22~24%、原子力を22~20%とするなどの電源構成の見通しが提示されています。

SDGsと再生可能エネルギー

国連で採択され、日本も官民あげて積極的に推進されているSDGs(エスディージーズ)は、持続可能な開発のための国際目標であり、17の目標と169のターゲット(達成基準)から成ります。

SDGsの7番目の目標は、「7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」と定められています。

この目標のターゲットの中で再生可能エネルギーに関して次のような記述があります。

7.2, 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。

7.a, 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率、および先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究および技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。

以上のようにSDGsの中においても、再生可能エネルギーは大変注目されています。

日本とFIT(固定価格買取制度)

FITとはフィード・イン・タリフのことで、再生可能エネルギーの固定価格買取制度のことです。日本では1990年頃より、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの普及が進められて来ました。

2011年の東日本大震災による原発事故を受け、2012年7月に再生可能エネルギーのFIT(固定価格買取制度)が創設されました。当時のFITの買取価格は世界的に見ても高額でした。そこで、太陽光発電を中心に、日本で再生可能エネルギーが一気に広まりました。

しかし、短時間でFIT制度の設計をして開始しましたので、直ぐに様々な問題が生じました。太陽光発電への導入偏重、初期の高価格案件の未稼働、再生可能エネルギーによる不安定な電力のため地方で大停電のおそれ等の問題です。

このような状況を踏まえ、2017年にFIT法が改正され、入札制度の導入や未稼働案件の防止、そして適切な事業実施を確保するための事業計画認定制度の創設などが行われました。ただ、このFIT法の改正だけでは十分ではありません。そこで、2021年3月31日までに抜本的な見直しを行うことになっています。なお、現在FITは日本の他、ケニアやトルコで実施されています。

ドイツとFIP(フィード・イン・プレミアム)

FIPとは、太陽光発電で得た電気を電力卸売市場で販売し、その販売できた価格に対して特別割増(プレミアム)を上乗せして払うという制度です。FIPと前述のFITとの一番の違いは、市場取引の有無です。FITの特徴として、固定価格で買い取られ市場取引が行われませんが、FIPは市場での取引が基本で、価格は市場で販売できた価格になります。

当然ながら、市場価格は常に変動しますので、FIPでは太陽光発電システムを設置しようとする事業者にとって投資対効果の予測が立てづらいという短所があります。なお、FIPはドイツやデンマークで実施されています。

本年度末までにFIT制度の見直し

2021年3月末までに日本のFIT制度の見直しが行われます。どのように見直しが行われるかについては様々な予測が出されております。

主流である太陽光発電については、基本的には大規模事業用太陽光発電はFIPで、住宅用太陽光発電および小規模事業用太陽光発電についてはFITが維持される可能性があります。ただ、FITでは買取の対象が余剰電力に限定される可能性もあります。

FIPにおいてはプレミアム(特別割増)の乗せ方をどのようにするかという課題が残ります。すなわち、収入を予測しやすい完全変動型プレミアムFIPか、もしくは市場への統合がし易い全期間固定型プレミアムFIPかという選択です。いずれの方法も長所、短所がありますので、両者の折衷案になる可能性があります。

具体的には、30分ごとに変動する電力卸売市場価格とプレミアム(特別割増)を連動させるのではなく、一定期間ごとに市場参照価格なるものを設定し、そこにプレミアムを上乗せするというものです。そして上乗せするプレミアムには上限を設けることにより、FIP価格は一定になるので投資意欲はある程度保たれ、市場参照価格を市場価格の平均よりも高めに設定すれば国民負担も全期間固定型プレミアムFIPよりも抑えられることになります。

2012年3月末までに実施される現行のFIT制度の見直しは、再生可能エネルギーの更なる発展のスタートになるのではないかと期待しております。エネルギー資源の乏しい日本においては、クリーンで国産のエネルギーである再生可能エネルギーの利用を強力に推進してほしいものです。

また、再生可能エネルギーはパリ協定の履行、SDGsの推進にも貢献しますので、このような観点からも再生可能エネルギーの普及に期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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