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2020年05月11日

新型コロナウイルス後の世界経済と日本

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止のために、日本では緊急事態宣言が出されました。4月7日に東京など7都府県に対して、16日には全国へ対象が広げられ、愛知など6道府県を加えた13都道府県を特定警戒都道府県に指定されました。

新型コロナウイルス感染症について日本および世界において、いつどのように終息するかはまだ予測はつきません。終息後に重要なことは国民生活を護るために経済の立て直しです。今回の感染症拡大と類似の過去の例を振り返って、終息後の世界経済の展開と日本への影響を考えてみます。

なお、過去の事例としましては感染症の世界的拡大と、世界に大きな影響を与えた経済危機を取り上げます。

スペイン風邪(1918年~1920年)

1918年~1920年にかけてパンデミック(感染症の世界的流行)を引き起こしたスペイン風邪は、元来その発症地点はアメリカのカンザス州でした。世界中で5億人が感染したとされており、これは当時の世界人口の4分の1に相当しました。死者数は1700万人から5000万人との推計が多く、1億人に達した可能性も指摘されています。スペイン風邪は人類史上最悪の感染症の1つです。

スペイン風邪は日本では1918年10月に大流行が始まり、当時の人口5500万人に対し約2380万人が感染したとされています。日本における死亡者は約39万人と推計されています。日本経済については、1917年の実質GDP(当時はGNP)成長率は9.0%、1918年は8.6%、1919年は5.0%と高成長が続いていました。当時は第一次世界大戦中で、直接戦争に関与しない日本は戦争特需の好景気をむかえていました。しかし、スペイン風邪の影響は大きく、感染が終息した後の1920年は、日本経済はマイナス成長に転じました。

サーズ(2002年)とマーズ(2012年)

サーズは重症急性呼吸器症候群のことで、2002年11月から2003年7月にかけて中国南部を中心に発生しました。世界30ヶ国8422人が感染して916人が死亡しました。サーズは2003年7月5日にWHOによって終息宣言が出され、現在に至るまでサーズの新規感染報告例はありません。サーズによる世界の経済損失は400億ドル程度と推測されています。

マーズは中東呼吸器症候群のことで、2012年にサウジアラビアで発生し、中東や欧州、韓国、中国に広まった感染症です。サーズは終息しましたがマーズは現在も感染しており、終息の見通しは全く立っておりません。2019年11月までにマーズの世界の確定患者は2494人、死者858人にのぼっています。

スペイン風邪はインフルエンザウイルスによるパンデミックでしたが、サーズやマーズ、今回のCOVID-19は、種類は違いますがいずれもコロナウイルスによるものです。

リーマンショック(2008年)と欧州債務危機(2009年)

リーマンショックとは、2008年9月15日に米国の大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズが破綻したことが発端となって起こった世界的な金融危機のことです。リーマン・ブラザーズの負債総額約6000億ドル(約65兆円)で、米国の歴史上最大の企業倒産でした。

日経平均株価も大暴落を起こし、2008年9月12日(金曜日)の終値は12214円でしたが、10月28日には一時は6994円まで下落しました。世界経済は後退して日本も含め世界の株価は大幅下落しました。ただ、日本は世界不況の影響は受けたものの、米国で起きたリーマンショック、翌年の欧州で起きた債務危機に対して第三者の立場でしたので、急激な円高に進みました。為替レートは2011年3月には史上最高値となる1ドル76円になりました。円高は日本の貿易産業に大きな打撃を与えました。2008年度の日本の実質GDP成長率はマイナス3.4%、2009年度はマイナス2.2%でした。

リーマンショックの発生からわずか1年余りの2009年10月に、ギリシャの債務問題が顕在化し、その後欧州債務危機へと発展していき、世界経済に大きな影響を及ぼしました。欧州債務危機はギリシャの他、スペイン、ポルトガル、イタリア、さらにはハンガリー、ラトビアなどにも波及しました。日本の欧州への輸出が減少し、ユーロ安が円高を推し進めました。

新型コロナウイルス後の経済はどうなるか

新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響については、様々な予測がなされています。たとえば、世界経済の成長率の落ち込みはリーマンショック時を上回るが、日本の成長率は概ねリーマンショック時並みという予測があります。

具体的には、今年の世界経済がマイナス3%成長とスペイン風邪以来ほぼ1世紀ぶりに大きく縮小しますが、2021年は6%近いプラス成長に回復すると見込まれています。

日本経済については、海外経済の失速で製造業の輸出が下振れし、国内の自粛要請でサービス業など非製造業の国内需要も喪失して、実質成長率5.2%減となる予測があります。

具体的な日本の経済損失額として16~20兆円、さらにそれより大きいという予測もあります。なお、東日本大震災の経済損失は約20兆円、さらに福島の原発事故による損失が約20兆円という試算例があります。

企業淘汰が起こる中で、勝ち残り組のさらなる発展

現時点では、日本において新型コロナウイルスのパンデミックがいつどのように終息するか予測がつきません。仮に2020年中に終息した場合は、2021年には2020年の落ち込みを上回る経済成長が予測されています。ただ、リーマンショック後を振り返ってみますと、日本において株価の低迷と円高が約4年間続き、2012年の秋ごろより日本経済が回復基調に乗りました。COVID-19による2020年の経済落ち込みの回復には4年程度の辛抱が必要かもしれません。

景気の落ち込みの時期には必ず企業淘汰が起こります。生き抜いた企業は退場した企業の顧客を得ることになり、一回りも二回りも大きく成長することができます。

今後は厳しい経済状況が予測されますが、新型コロナウイルス感染症拡大が早期に終息するとともに、企業においてはこの危機を乗り越えて、結果として一層発展されることをお祈り致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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