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2020年02月10日

デジタルトランスフォーメーションと経営層の役割

デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性や必要性は多くの企業で認識され始めていますす。ただ、実際にDXを実施しようとする場合、企業は多くの課題に直面します。今回はDX推進の課題や解決策、特に経営層の役割の重要性についてふれてみます。

DXに関する企業の意識調査

DXは世界的に推進されていますが、日本と世界の企業に対してDXに対する意識調査を行った例を次にご紹介します。日本と世界ではまだまだDXに対する意識に大きな隔たりがあります。

まず、世界ではDXに対する課題として、技術的な制約や法律および規制を挙げる企業が多いです。これはデジタルトランスフォーメーションの必要性を強く認識しており、しっかりとした決意を持ってDXに取り組む姿勢がうかがわれます。

対して、日本の企業においては世界平均よりも、DXに対するビジョンと戦略の不足や時間と費用の制約をDXの課題に挙げる企業が多いです。日本ではDXの重要性の認識が薄く、取り組みも弱いという状況です。

DXを行わない大きなリスクと経済損失試算例

DXを推進しない場合は、既存システムの残存リスクが増大します。業務やプラットフォームなどの変更ごとに、既存システムでは追加・改修が行われてきました。その結果、コストの全体最適化ができていないことに加えて、機能の全体像を把握している社員も減り、プラットフォームのサポート終了などの事態が発生したときの改修に伴うリスクが高くなります。

さて、複雑化や老朽化、ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う日本の経済損失は、2025年以降に現在の約3倍となる最大12兆円/年にのぼるという試算があります。

上述のような事態に陥った場合、ユーザ企業は、爆発的に増加するデータを活用しきれずにDXを実現できず、デジタル競争の敗者となる恐れがあります。

CIOやITリーダーの重要な役割

CIOとはChief Information Officerのことで、企業における最高情報責任者のことです。米国においては、CIOの重要な役割の一つがベンダー企業を客観的に評価することです。ITの分野でのベンダー企業とは、顧客企業が必要とする情報技術に関連した機器やソフトウェア、システム、サービスなどを販売・提供する企業のことです。CIOは自社にとって役に立つベンダー企業はどこかと常に見ており、自社に利益をもたらすベンダー企業と契約して結果を出したり、自社に新たな価値を提供できることに努めます。

DXのように企業にとって極めて重要な経営戦略の場合には、CIOもしくはITリーダーはDXを進めるための具体的施策を提示したり、デジタル関連の新事業実施することが必要です。そして、DXに関して適切なる情報を経営層に提供して、経営層が重大な決断ができるように提言することが極めて重要な役割です。

DX推進における経営層の決断

米国では経営者はITシステムやサイバーセキュリティのガイドライン等を理解し実現しなければ責務が果たせません。経営者は全てをCIOに丸投げせず、自ら自社のITシステム、サイバーセキュリティの現状を把握し、将来へのビジョンを示さなければいけません。

日本の経営者も、取締役会において情報システムについて自らの言葉で語ることができ、判断をくだせることが期待されます。

DXを実行しようとするユーザ企業の中で、ビジネスモデルを変革するべく、新たなデジタル技術を活用できるように既存システムを刷新する判断を行うユーザ企業はまだ少ないのが現状です。ただ、そうした判断を行っている企業は、必ずと言っていいほど経営層の強いコミットがあります。そうでない企業では経営層の関与が薄く、既存システムを刷新するのではなく、残念ながら改修して利用し続けた方が安全であると判断されるケースが多いです。

また、事業部ごとに個別最適されたバラバラなシステムを利用している企業が多数あります。このような企業では全体最適化・標準化を試みても、各事業部が抵抗勢力となって前に進まない状況に直面します。すなわち、既存システムの問題を解決するためには、業務自体の見直しも求められることになりますが、それに対する現場サイドの抵抗が大きく、いかに実行するかが大きな課題となっています。こうした各事業部の反対を押しきりDXを進めるには経営層の決断が必要です。

DXを成功させる秘訣

DXを成功させるポイントは、より安い費用で目的のDXを達成させることです。そのためには、ユーザ企業がベンダー企業と組んでDXを行う過程において、最大の効率で作業を進めることが必要です。

日本では米国に比べて企業内のIT技術者の数が少ないと言われています。必要なときはベンダー企業に頼み、社内のIT技術者不足はベンダー企業の技術者でカバーしてもらえると考える企業が多いです。しかし、効果的なDXの推進という観点からはこれは極めて非効率であり、結果として企業に大きなロスを与えます。

極端な例として、ユーザ企業がべンダー企業にDXを丸投げした場合に、ベンダー企業がユーザ企業のシステムの課題点も十分に把握できず、またユーザが最終的に何を求めているかも分らず、手探りの状態で作業を進めた場合、結局非効率なDXになります。

本格的なDXを推進する場合には、企業はまず必要最小限のIT技術者を確保することが必要です。このIT技術者は自社のシステムの課題点を十分に把握し、そしてベンダー企業に何をやってほしいかを正確に伝えることが最大の任務です。

これまでのように、ユーザ企業がベンダー企業に全てお任せではなく、両者の新たな関係の構築の中で、DXが順調に達成され、企業の一層の発展の礎となることを期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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