ご相談

講演依頼.com 新聞

コラム 政治・経済

2018年11月09日

進行する地球温暖化にどう対処するべきか

本年、地球温暖化が原因と考えられる豪雨水害や台風災害が多発しました。犠牲者の数や建物やインフラへの被害は過去に例を見ない大きなものとなりました。今回は地球温暖化への対策について触れてみます。

日本の地球温暖化対策は有効だったのか、犠牲になるのは国民

図1にハワイのマウナロア山で観測された大気中の二酸化炭素濃度の変化を示します。横軸は西暦を、縦軸は二酸化炭素濃度がppmの単位で示されています。地球温暖化問題が世界的に議論され始めた1988年ごろの大気中の二酸化炭素濃度は約350ppmでした。その後も二酸化炭素の濃度は増加し続け、2018年には410ppm近くに上昇しています。驚くべき増加のスピードです。

図1 大気中の二酸化炭素濃度の変化(ハワイ・マウナロア山)

1997年に日本政府のリードの下で京都議定書が締結されました。具体的な目標を定めて世界の国々が温暖化ガス排出の削減を目指した最初の国際的な会議でした。日本では行政指導により業界ごとに5%~10%の目標を定めて、二酸化炭素の削減を実施しました。しかし、京都議定書の後も大気中の二酸化炭素の濃度は増加し続け、現在も地球温暖化は早いスピードで進行しています。

京都議定書が締結された時期は、日本の産業界における温暖化ガスの排出は減少傾向にありました。それは1990年代の長引く不況や、製造業における産業の空洞化が進行していたからです。当時、産業界とは逆に、民生・住宅部門やオフィスビル・商業施設からの温暖化ガスの排出が増え続けていました。生活様式が変化して二世代、三世代で一緒に住むことが少なくなり、核家族化が一層進み、生活における光熱費等の消費が増加しているからです。日本政府は住宅・民生部門における温暖化ガスの排出削減の積極的な行政は実施しませんでした。
さらに、東日本大震災の後、日本の電力の90%以上を火力発電で行っています。現在、日本はかつてないほど二酸化炭素を大気中に放出し続けているのが現状です。

これまでにない新たな台風災害、脆弱な日本

台風が強力になりますと、新たな台風災害が発生します。本年9月に日本を襲った台風24号は勢力が極めて強い台風でした。中部地方では電柱などの電力設備に大きな被害を出し、100万戸近くが停電し、その復旧に長い日数を要しました。

関東地方では強風により海水が吹き上げられました。その結果、農作物への塩害の他、電柱・送電線が被害を受けて電気がショートし、一部の鉄道が長期に運休する事態も起こりました。

大規模停電や塩害は、これまで顕著に発生することはありませんでしたが、これからは本年のように頻発するかもしれません。勢力の強い台風に対して十分なる対策がとれることが望まれます。

日本では温暖化対策としてノーネクタイ運動が進められ、現在も社会に定着しています。また、行政はヒートアイランド対策のために打ち水を推奨してきました。ただ、地球温暖化はノーネクタイ運動で抑止できるような生易しい事ではありません。打ち水についても、デメリットがある、効果が無い、無駄などという指摘があります。

ないがしろにされてきた治水努力、『三匹の子豚』の教訓を生かすべき

近年世界で多発する水害等の自然災害の原因は地球温暖化であると国連を中心に議論されています。しかし、日本の現在の報道では「異常気象による自然災害」という捉え方が基本スタンスです。地球温暖化による豪雨災害や強い台風の発生というような表現での報道は極めて少ないです。

本年の西日本豪雨では多くの犠牲者が出ましたが、土砂災害の他、堤防の決壊や河川の氾濫が大きな原因でした。近年日本では土木事業にお金を費やすことは良くないことという風潮が作り出され、治水機能のあるダムの建設中止や、堤防強化の実施の回避などが行われました。西日本豪雨で被害の出た愛媛県の肱川流域のいくつかの治水機能があるダムの建設がかつて一時中断されました。関東においても治水機能も有する八ッ場ダムの建設が一時中止となりました。

河川の堤防についても同様です。降雨量の増加に備えて、堤防の強化を適切に実施していれば、堤防決壊による氾濫災害も減らすことができたでしょう。

温暖化にどう対処するか、理想ではなく現実に目をむける

日本はかつてないほど二酸化炭素を排出し続けています。国際的にも有効な温暖化対策がとられる兆しはありません。今後も温暖化は確実に進行していくことでしょう。このような状況下では、日本のとるべき対策は、温暖化を止める対策よりも温暖化によって生ずる災害を極力少なくすることが得策と思います。

具体的には温暖化を防止するための予算があれば、そのお金は治水工事など国土強靭化等に投入することです。温暖化による災害の被害をできうる限り少なくすることが現実的な対応策になるでしょう。

もし線状降水帯が東京付近に発生して大雨をもたらしたら、また台風21号のような強力な台風が東京を襲ったら、首都東京はどうなるのだろうと懸念するところです。地球温暖化は単に暑くなるだけではなく、多くの人命を失い国土に甚大な被害を与える状況となった今、真剣かつ現実的な方法で対処しなければなりません。本年のように、水害で多数の犠牲者が出るようなことが繰り返されないことを切に願います。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

  • facebook

講演・セミナーの
ご相談は無料です。

業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。