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2020年09月15日

ものの見方で問題解決!その6~農業協同組合編

今回はある農業協同組合さんで行った研修の例をお話しします。これは「これまでになかった新しいものを売る」という企画で、その内容はどの業界にも通じる非常に面白いものでしたので、ぜひ皆さんと共有したいと思います。

研修のテーマ:「新たなる挑戦のための発想転換術~ものの見方を変えてみる」

依頼の背景・課題

日本の農業経営においては、トラクターなどの農機にかかるコストがかなり高く(韓国の1.5倍)、それが農業継承の際の問題にもなっていました。そこでこの組合では、これまではメーカーのいいなりになって、ただトラクターを販売していたのをやめ、全国のユーザーの声を集め、必要最低限の機能を絞った低価格トラクターの仕様を固めて、それをメーカーに開発依頼し共同購入するというプロジェクトを立ち上げたのです。しかし、現場の担当者にとってはいままでにないものを売るという未知の体験を強いられることになります。そこでその準備として発想転換トレーニングの研修を実施させて頂きました。

ものの見方で斬る

この話を聞き、似たような業界が頭に浮かびました。それは家電業界です。最近、いわゆる「ジェネリック家電」というジャンルの製品が売れています。これは、必要最低限の機能に絞った製品を安く供給するというものです。扇風機や電子レンジ、冷蔵庫や洗濯機など、いまや他分野にわたりこのジェネリック家電が発売され、消費者の信頼を得ていますね。これらも最初はみな、聞いたこともないようなメーカーの製品など売れないと思われ、ナショナルブランドが幅を利かせていました。しかし、例えば電子レンジなどは、使わないボタンや機能がたくさんあり、「安くていいからシンプルなものが欲しい」というニーズはあったはずです。そこに登場したのがこのジェネリック家電でした。

今回のトラクターの件も、発想的には同じです。つまり、価値メガネを通してこのトラクターを見る、「機能は少ないけれども低価格」の製品をいかに売るか、ということですね。

研修でやったのは、まず「既存のものよりも機能を削った商品をどう売るか」、という思考トレーニング。課題として携帯電話を出してみました。いま販売されている機種よりも数世代前のもので、スペック的にも劣るものをどう売るかという課題です。全体の回答を見ると、「電話」という機能にとらわれていたものが多かったのですが、中には、通話目的ではなく、これで農作物の生育データを管理したり、トランシーバー機能を持たせたり、心拍数を管理して緊急時に通報する仕組みをつけたり、作業している人の位置把握に使ったりなど、いくつかの「新しい価値」を見つけた回答がありました。必要なのはまさにこうした発想なのです。

今回の狙いは、営農者から「でもこの機能がない、あれがない」とマイナス視点で見られがちなところを「でも、こんな使いやすさがあります、こんなメリットもあります」と、プラスの視点で返せる、たくさんの切り口を見つけてもらうことでした。
たとえばジェネリック家電では、通常のメーカー保証1年のところを3年つけたりもしていますが、こうした工夫により、「壊れたら困るけど3年保証があれば大丈夫かな」とユーザーの視点を反転させていくことができるのです。

その後のニュースなどの記事を見ると、どうやらこの低価格トラクターは、予想より多くの台数を販売し、第2弾が今秋に発売されるようです。きっと研修に参加してくださった皆さんの発想の転換がうまくいったのですね。よかったです。

今後の展望

今回のプロジェクトの成功により、メーカーとユーザーの立場が逆転したように思います。
ユーザー側が製品に求める意見をまとめ、それを共同購入するという形でメーカーに伝え、スケールメリットを利用して価格を下げるというこの手法、ほかの業界でも応用できそうですね。

さて、次回は製薬業界編をお送りします。どうぞお楽しみに。

川村透

川村透

川村透かわむらとおる

川村透事務所 代表

「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…

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