2004年06月05日

上司をコーチングしてみませんか?~逆コーチングのススメ~

 最近、コーチングを導入する企業も多くなり、書店にいけば必ず「コーチング」の棚があります。しかし、そのほとんどが「上司が部下をコーチング」するという切り口。ところが今回、とある銀行の研修で依頼を受けたテーマはなんと、「上司を逆コーチングしてください」というもの。その研修がとても好評だったので、今回はその内容をかいつまんでお話しましょう。


●サラリーマンが抱える三つのジレンマ
 「私の上司は本当に理想的な人です」――こう言いきれる人は恵まれています。しかし、多くのサラリーマンにとって、上司は目の上のたんこぶ的な存在。誰もが感じている三つのジレンマはというと...。

1. 上司は必ずいる
 「"課長いる?"返った言葉は"いりません"」――今年のサラリーマン川柳での優秀作品だ。組織で働く以上、上司は必ず存在する。上司のいない職場などありえない。

2. 自分で上司は選べない
 「あの上司の下で僕は働きたい」と言っても自分で上司は選べない。そんなことをしたら、誰からも選ばれない上司がたくさん出てしまう...?

3. そして、その上司の出来が悪い
やる気がない、頭が固い、要領悪い、リスクをとらない、人間的にイヤ...

 さて、もしあなたがこうした状況に直面したら、どうしますか?
(1)どうせ言っても無理」とあきらめる
(2)「あの上司はホントに無駄が多いよね」と評論家になる

 このいずれかの人が多いのでは?

 でも、ちょっと待ってください。確かに上司を変えるのは簡単ではありません。でも、「もののみかたを変える」ことで、この状況をなんとかできないものでしょうか。


●上司との関係を新しくとらえる
1. 理想の上司はどこにいる→理想の上司などいない
 私もサラリーマンのとき、見本にしたい人を一生懸命探しましたが、仕事ができても人間的にバランスが悪かったりして、ついに見つかりませんでした。いま思うのは、理想の上司を探そうとはしないことです。それは自分が作ると考えましょう。目の上のたんこぶをダイヤモンドに変えるのは自分なのです。

2. どうせ言ってもかわらない→自分が変われば、相手が変わる
 相手を、ましてや上司を変えるとなると、かなりの労力を要するもの。しかし、相手を変えたいときの一番効果的な方法は、自分の接し方を変えること。自分が変われば相手は変わるんです。

3. 上司と部下は上下関係→上司と部下はパートナー
 上下関係と思った瞬間に力関係を意識して「上の人を動かすなんて...」と尻込みしてしまいがち。今の時代は、役職的には下でも現場の人たちのほうが力はあるし、知識や情報もある。必ずしも上が優れていて、下が劣っているわけではないのです。上司は自分を活かす最高のパートナーだと考え、いかに上司にうまく動いてもらうか、そのことを考えましょう。


●上司を逆コーチングする
 自分のやりたいことを通すため、どうしたら上司に動いてもらえるでしょうか?もちろん、上司は人生の先輩。そうした意味での尊敬の念は持つべきです。上司に働きかける際の基本テクニックを三つ、紹介します。

1.相談する
 自分が「この業務日報は無駄だ」と思っていても「これは無駄です。廃止すべきです」といきなり正論から切り込まない。わかっていてもまずは相談するというスタンスが大事。「業務日報なんですが、もっと効率的に処理する方法はないでしょうか?」と持ちかけ、そのあとに「私はこう思うのですが...」と言ってみましょう。

2.質問する
 あなた「今度、60代向けの金融商品を作りたいのですが」
 上司「だめだ。そんなの売れないよ」
と言われたとき、「どうしてですか。他社にはないし、時流にも合っているから売れますよ」というのは反論です。そうではなく、相手に質問を投げかけることにより、問題を絞り込んでいきましょう。たとえば「そうですか、具体的にどんなところがだめなんでしょうか」というふうに。すると「難しいイメージがあってな」などと問題が見えてくるので、「では、わかりやすいように工夫すればいけるのでは?」と対策がみえてきます。反論ではなく、質問をしましょう。

3.教えを請う
 「クライアントに新規企画を提案したいのですが、担当の方が取り合ってくれなくて。ぜひ部長のお力を拝借したいのですが...」
 人は頼られると嬉しいもの。教えてほしい、意見を聞きたいと言えば「一肌脱いでやるか」という気になるはず。また、こうすることで、相手を知らぬ間に巻き込んでおけるメリットも。


●上司改造プロジェクト
 上司のあら探しをする前に、上司の親やコーチになったつもりで思いやりを持って上司を見てみましょう。「もっとこうしたらこの人はよくなるのに」―― というあたたかい目で。その際、次のような「上司改造計画シート」を作ってみました。


28-01.jpg1. Analysis~あなたの上司はどんな人?
 上司の欠点や短所ではなく、上司を足し算でみてみましょう。どんなタイプか、彼(女)が大切にしている価値観、尊敬できる点などを書き出してみましょう。また、レーダーチャートにより、上司の能力を柔軟性、人間性、仕事力、育成能力の4つに分け、客観的に上司を分析してみましょう。

2. Goal~「もっとこうしたらいいのになあ...」
 上司の現状がわかったら、次は理想像を考えます。あなたにとっての理想の上司に近づけるためには、上司がどうなればいいでしょうか?「もっと人の話を聞くときに、目をみたほうがいい」「指示を具体的にして欲しい」など、あなたなりの提案を3つ、あげてみましょう。

3. Contribution~それに対し、あなたができることは?
 現状を分析し、目標を決めただけでは評論家と同じ。ここで大事なのは、その提案に対し、あなたができることを探し、積極的に上司に関わっていくことなのです。上司を変えるためにあなたにもできることはたくさんあります。上司も人の子。「こうするともっとよくなると思います。そのために私ができることをやります」という姿勢で接すれば、うれしくないはずがない。

 以上、ざっとポイントだけを要約したが、実際のセミナーではもう一歩、奥に踏み込んでとても盛り上がりました。「上司を変えるなんて考えてもみない発想だったが、自分にも何かできる気がしてきた」「さっそく職場に帰って上司を分析してみようと思います」などの感想多数。

 「コーチング?上司にそれを学んでほしいね」と嘆いているあなた。でも会社にはそんな余裕はきっとありませんよ。ならばあなたが変わるしかありません。え、もっと話を聞きたいって?お問合せ、お待ちしています(笑)。