2003年05月05日

イアン・ソープの翻訳やらない?

 4月に私が翻訳した『イアン・ソープ:夢はかなう』(PHP研究所)が出版された。イアンの4月の来日に何とか間に合ってよかった。彼のカッコイイ写真が表紙のメッセージ集、素顔のイアンや彼の考え方が垣間見え、売上は順調のようである。ところで皆、僕に同じ質問をする。

 「どうやってその話がきたの?」
 今回はそれを書いてみたい。だってそれが一番知りたいでしょ?


1.それは、20年ぶりの電話から始まった
 11月末のある朝のことだ。電話が10時ごろ鳴った。
 前日の夜遅くまで起きていて、まだ夢の中だったボクは眠けまなこで電話をとる。

 「はい、もしもし」
 「かわむら?オレ、川口」
 「は?」
 「八王子東校の。野球部のさ」
 「...あーー」

 それは高校の同級生だった川口からだった。といっても20年ぶり。顔もはっきり思い出せないくらい昔のことだ。

 「カネマキから聞いたよ。翻訳とか講演とかしてるんだって」
 「おー。まあね」
 「実はさ、イアンソープの本があるんだけど、カワムラにやってもらえないかと思って」
 「へ?あのイアンソープ?」

 これがそもそもの始まりだ。川口氏はリクルートに入り、去年、国連親善大使でマラソンの
有森裕子さんと共にスポーツマネジメントの会社「ライツ(http://www.s-rights.co.jp)」を立ち上げたメンバーの一人だ。

 事務所で話を聞くと、イアンのマネジメントをしている日本の支社から、川口氏の会社に『イアンの本が出たので、日本でも翻訳したい』との打診があり、翻訳と聞いて私のことを思い出してくれたのだった。


2.なぜ自分にチャンスがやってきたのか
 そこでさっそく僕は本の企画書を作り、いくつかの出版社候補をリストアップし、まずはベッカムの本を手掛けたPHP研究所に打診してみた。同社は即答で「やります」との返事。そのあと、写真がなかなか揃わなかったりして一時は出版さえ危ぶまれたが、編集者や皆さんのおかげで、何とか無事形にすることができた。
 この世界、最後の最後まで何があるかわからない。以前、私はアメリカでベストセラーになったある本を持ち込み、半分くらい訳したところで、著者側の意向によりおじゃんになったこともあったので、今回も手元に本が届くまで、誰にも言わなかったくらいだ。だから本がきたときは、「ホントに本になった」と喜びもひとしおだった。

 今回、イアン・ソープの翻訳が出来たことは光栄であった。これもひとつのチャンスだったと思うが、なぜ僕のところにチャンスがまわってきたのか考えてみた。

(1) 誰にでも自分がやっていることを伝えておく
 いま、自分がどんな仕事をしているか、それをどんな人にも伝えておくことだ。今回の場合、川口氏と僕との間に、高校時代の親友だったカネマキという男がいた。彼とはバスケ部の仲間で、ずっと年賀状のやりとりをしている。そのカネマキと川口氏は仲が良く、そのルートで川村=翻訳が伝わったのだ。『自分の看板をしっかりと上げておく』、そこからチャンスはやってくる。

(2) その日のうちにすぐやる
 
四谷にあるイアンの日本側エージェントのオフィスで話を聞いたあと、川口氏と一緒に京橋で寿司を食べ、その足で私は八重洲ブックセンターにいって調査を開始した。スポーツ選手の棚にいくとベッカム、オリバー・カーン、イチロー、イルハンなどの選手の本が積んである。そこで本をひとつずつ開き、出版社、タイトル、版型、値段などの候補となる出版社のリストを作った。そして帰宅してから本の概要をまとめた企画書を作り、翌々日には出版社に電話をかけた。アポをとるのも「では何日の何時に」ではなく「いまからいきます」だ。ここぞというときは、こうしたスピード感が大事だ。

(3) 人のつながりを大事にする
 独立して仕事をするようになると、人のつながりがすべてである。これさえあれば生きていけるが、逆にこれがないとアウトだ。僕はサラリーマン時代にはそれほどこの大事さを意識していなかった。会社人としてのつきあいは、たまたま仕事をしているからつきあっているわけで、仕事が終わったらまず続かない。そこには何らかの打算がある。しかし、独立してからはすべての人脈チャネルが活きてくるから、人との付き合いをおろそかにできない。そして何よりも、利害関係より、人間関係が勝る気がしている。

 もちろんすべての人と関係を保つのは無理だし、無駄だからしなくてもよいが、「この人は!」と思った人との糸は切らないように、とことんメンテナンスをしていくべきだ。今回も、イアンから僕のところに来るまでの間に4社(人)がかかわっている(イアン→イアンのマネジメント会社→日本側のエージェント→ 川口氏→カネマキ→川村)が、そうしてつながる人の縁に、ただ驚き、感じ入ってしまうばかりだ。川口氏はじめ、チャンスのバトンをつないでくれたすべての人に感謝したい。

 世の中で、大きなチャンスをつかむ人がいる。それは運がいいのではないと思う。その運をつかむかどうかは、それまでの人生でどれだけ種まきをしてきたかではないか。日々の人とのつきあい、ちょっとした約束を守る、相手のために何かをする...こういった貯金を積んでいる人に突然チャンスの花が開くのだと思う。そうだ、そういえば昨日、ある雑誌の特集で仕事をさせていただいた出版社の方々にご馳走になった。御礼にはがきをしたためておこうっと。きっとこんな気遣いの積み重ねですよね、運をつかむのって。


<今月のレッスン:チャンスのつかみかた>
1.誰にでも自分がやっていることを伝えておく
2.その日のうちにすぐやる
3.人のつながりを大事にする