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2016年07月01日

心の代謝

 年齢を重ねると太りやすくなるのは、代謝が悪くなるからだ。いろいろな雑誌を呼んだりトレーナーの話を聞いたりして、かき集めた情報を整理すると、年齢とともに筋肉量が減り、それにともない脂肪を消費する機能が落ち、結果余計な肉がついて、体重が増えて体型が崩れる。とまあ、「中年太り」はこんな理屈のようだ。

 私はこれ、身体だけではなくて、心にも起こりうる現象だと思う。

 心の中年太りは、経験を重ねることによって、それなりの自信やセンスが身につき、新しいことを受け入れにくくなり、同じ感覚だけを行き来することによって、驚いたり喜んだり疑問に思ったりする範囲が狭くなってしまうことを指す。たとえば、自分の青春時代の音楽しか聴かなくなる、髪型や化粧がずっと同じ、流行のものがみんな薄っぺらく見える、などなど。もちろん、これを、即刻解決すべき悪いことといっているわけではない。自分の趣味趣向がぶれずに定まっているのは大切なことだし、大人のたしなみだ。

 けれど、たまにはそこから出て行って、外側からそんな自分の趣味趣向に触れてみるのはいかがだろうか。だからこそ、見えてくることだってある。

 身体の代謝の場合は、たいてい筋トレをする。もしくは、最近流行の体幹トレーニング(長友選手が行っていることで有名ですね)、ピラティスやジャイロトニック。私は、半ばあきらめかけていたのだけれど、最近、トレーナーについて「軸トレ」と呼ばれる体幹トレーニングの一種を再開させ、筋肉だけではなく、関節も鍛えようとジャイロトニックを始めた。定期的にスタジオに通っているのだが、なかなか慣れなくてうまくいかない。というか、ちゃんとできているかどうかも判らず、とまどうこともある。だからこそ、肉体にとって新鮮だ。

 心だって、こんなふうにトレーニングをしてもいいと思う。本を読んだり映画を見たりして、物語に触れる。これがもっともおすすめの「心の筋トレ」である。とにかく、感情を動かすこと。涙は心の汗だ! というのは、昔流行ったフレーズだが(出典は忘れました・・)、本当にそう。心も、感情も、使えるだけ使って循環をさせていかないと、どんどん硬化してしまう。

 ところで、最近、年甲斐もなく引き締まった体型の中年の男女も少なくない。たいていはファッションも若作りで、後姿はほとんど若者。代謝代謝と書いておいてなんだけれど、やっぱりああいうのはかっこいいとは私は思えない。身体だけではなく、心も「枯れていく」のは自然な成り行き。受け入れることと抗うことのバランスこそ、その人の個性なのだろう。

甘糟りり子

甘糟りり子

甘糟りり子あまかすりりこ

作家

玉川大学文学部英米文学科卒業。学生時代は資生堂のキャンペーンガールを経験。大学卒業後、アパレルメーカー勤務。雑誌の編集アシスタントを経て、執筆活動を開始させる。『東京のレストラン』『真空管』『みちたり…

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