2010年01月25日

思春期の子どもに親の気持ちを伝える その2

親にとっては、子どもが学校でどのように過ごしているのか気になるところです。ところが思春期になると、子どもは学校での様子を親に話すことが減ってくるような気がします。

今回のコラムでは、先生からの電話によって学校での息子の様子を知った母親が、親業訓練の基本となる【問題所有の原則】を複数の人に当てはめ、適切に対応した例をご紹介します。

A君は中学一年生。ある日、担任の先生から家に電話が入ります。
電話は、A君が担任である自分の言うことを聞かずに困っているという内容です。

「ネクタイをしない、シャツのボタンをはずす、制服の乱れを注意しても、言うことを聞かない。今日は教室の掃除当番なのに、掃除をやる様子も見せないで遊んでいた」等、息子に対する(いわゆる)愚痴を沢山言っています。

A君の母親は先生からの電話に対しても、もちろん【親業】で身につけた対応をします。
母親は、今イヤなことを抱えているのは先生であることを感じます。したがって、先生に対して『能動的な聞き方』をします。しばらく話が進んでからの会話です。

1)先生「お母さんからもしっかり注意をしてください」
2)母親「先生はうちの息子のことでほとほと困っていらっしゃるのですね。
      申し訳ありません」
3)先生「私は、A君と分かり合えるようになりたいんです」
4)母親「ありがとうございます。息子は細かいことをあれこれ言うと返って反発
      しますので、少しの間様子を見ていただけますようお願いいたします。」
母親は先生に丁寧に謝罪し、電話はここで終わりになりました。
そばにいたA君は、口うるさい担任の先生を母親が言い負かしたと勘違いをしたのか、母親に向かって笑顔で拍手を送っています。
母親はA君のその行動を見てムッとします。
5)母親「あなたが学校でしていることで、私が先生から叱られるのはイヤだわ! 
      とっても不愉快よ!」
6)A君「(ビックリした顔)...はい...そのとおりです。...ごめんなさい」
と、母親に対して普段使わない敬語を使い、神妙な顔をして頭を下げました。

上の会話を、それぞれの気持ちに注目しながら振り返ってみましょう。
1)先生は息子のことで困っているので、母親の協力をもとめています。
2)母親は先生の困っている気持ちを受け取りました。『能動的な聞き方』で、
   先生の気持ちを理解したことを示します。そして、謝罪。
3)母親に自分の気持ちが伝わったことを感じたのでしょう。感情が静まり、
   ご自分の目標を言っています。
4)先生の考えを聞いて感謝の言葉が出ています。そして、母親自身の考えを
   伝えています。
5)息子のことで、親である自分が叱られたのに、その息子に反省の色が見え
   ません。笑いながら拍手をしている行動は母親の癇に障ります。したがって
   『わたしメッセージ』で、今の自分の気持ちをはっきり伝えます。
6)母親の気持ちを言葉ではっきり告げられ驚きます。母親に対して申し訳なく
   感じたのでしょう。神妙に謝罪をしています。

ご報告の後、母親はこんなことも言っていました。
「あの子が自分から私に謝ったのは初めてかもしれません。ちょっと嬉しかったですよ。もちろん先生のお気持ちは息子にちゃんと伝えました」
後日談ですが、その後母親は学校でA君の様子に変化が出てきたことを、先生から告げられるのです。「お母さんのご協力のおかげです」と感謝の言葉まで頂いたそうです。

息子の気持ちに目を向けながらも、先生に真剣に向き合い、先生の気持ちを理解しようと努力している母親。そして、説教の代わりに先生の気持ちと、自分の気持ちを率直に伝える母親。
A君は親の真剣な姿を見て、自分の姿勢を自ら正す道を選んだのでしょうね。

注:【問題所有の原則】とは、問題(イヤ)を抱えている人が主体的にその問題解決に取り組むこと