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コラム 教育

2018年02月23日

子ども自身に考えさせるネット教育(2)

前回に引き続き、子どもが自分で考え、判断するためのネット教育について解説しましょう。

スマホを駆使する子どもたちに大切なのは「当事者意識」。要は自分の問題として考える、自分に置き換えてみるということです。

たとえば自撮りについて。ほとんどの子どもがスマホのカメラ機能で自分の姿を撮影しています。単に撮影するなら問題ありませんが、なかには交流サイトに自撮り写真をアップしたり、SNSで知り合った相手に自分の画像を送ってしまうケースもあります。これらの行為は危険で、ときには犯罪に遭うこともあるのですが、当の子どもたちにはなかなかピンときていません。「どこか遠い世界の話」、「自分には関係ない」といった印象を受けます。関心が低い理由のひとつに、誰が、どのような被害に遭っているかという実態を知らないことがあるでしょう。実際の状況がわからないため、自分に置き換えて考えることがむずかしいのです。

そこで大切なのが、具体的な情報を与えることです。先の自撮りで言えば、平成28年に自撮り被害に遭った児童480人(警察庁調べ)のうち、一番多いのは中学生の52.7%。次が高校生の39.2%、そして小学生が5.8%です。中学生の被害が一番多い、こうした情報を中学生自身が知ることで、「自分の身にも起きるかもしれない」という意識が高まります。

また、被害者の約8割はLINEやツイッターなどで知り合った相手に自撮り写真を送っていました。いったいなぜ送ってしまうのかというと、言葉巧みにだまされるのです。最初は「自己紹介して」、「顔を見たいから写真を送って」などと言われます。「それくらいなら」と安心して自撮りを送ると、「かわいい」とか、「好きになった」とか、甘い言葉が返ってきます。何度かやりとりをつづけるうち、「エロい顔写真がほしい」などと相手の要求がエスカレートしていきます。

もし自分ならどうするか――、私は取材や講演で会う子どもたちにそんな問いかけをしています。すると、「断る」、「絶対送らない」という子どもが圧倒的です。

正しい判断のようですが、現実はそんなに甘くありません。仮に断ったら、今度は相手から「オマエの写真を俺の仲間にバラまく」、「アダルトサイトに転送する」などと脅されたりするのです。そして実際、脅しや執拗な要求に疲れ、過激な自撮り写真を送ってしまう子どもが後を絶ちません。

最初は気軽な感覚でも、思わぬ展開や予期せぬ事態が待っています。だからこそ、事前に具体的な情報を知り、「もしも自分だったらどうするか、どうしたらいいか」を考えておくことが大事なのです。

自撮りの問題に関しては、被害に遭うだけでなく、「加害者」になる可能性についての教育も必要です。最近は学校内での「盗撮」が増えていて、生徒が他の生徒の裸や下着姿を撮影するような問題も起きています。撮影する子どもは「ふざけただけ」などと言いがちですが、そんな簡単な話では済みません。友達の裸の写真を撮ったり、スマホに保存したりすると、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の被疑者として検挙や補導される可能性があるのです。

こうした情報を知っていれば、自分の行為がどんな結果を招くか、しっかりと認識することができます。他人事ではなく、自分の問題として捉える、そんなネット教育がより広まっていくことを願います。

石川結貴

石川結貴

石川結貴いしかわゆうき

ジャーナリスト

家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…

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