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2009年12月18日

無償の愛、絆の強さ

 師走に入りもうすぐ父の命日がやってきます。私の父は、体が弱く、私の幼い頃の父の記憶は、いつも床に就いている姿でした。
 お正月を何度、病院で過ごしたかわかりません。暖かい家で御節料理を食べている人たちを思うと、幼いながらに羨ましく思う自分がいました。
 でも寂しくはありませんでした。
 殺風景な病室の中に、父と母とそして私の三人の寄り添う心と姿がありました。
 どんな時も、どんな辛い時もいつも三人は一緒でした。
 私は、幼いながら一生懸命に生きる父や母の姿を見て育ってきました。ですから小さいながらにも「早く大人になって、二人を助けてあげたい」とよく思っていたものです。

 一人っ子の私は、幼い頃いつも保育園から帰ると父の布団の中に入って、父の温もりを感じながら即興でつくってくれるお話を聞き、話しの世界に飛び立って楽しい旅をさせてもらっていたものです。何十年たった今でも、あの時の父と一緒の光景は忘れられない大切な思い出となっています。

 父は非常に心優しい人で、様々な面において能力があり、とても仕事のできる人でもありました。しかし、体が弱いことから自分の願い通りに人生を歩けない悲しみを抱えていることも、私は幼いながらに感じ取っていました。そんな姿を見ていただけに「私は、父さんの分まで自分の人生を悔いなく生きよう」と、小さい頃から思っていました。
 今私がこうして楽しみながら仕事をしているのも、あの時の気持ちをずっと温め続けてきたからだと思っています。

 体の弱い父を、細い体でいつも泣き言も言わず笑顔で支え続けたのが母でした。私も父同様に、幼い頃は体が弱く、いつも熱を出し、床に就いている父の代わりに夜道を母が私を負ぶって医者に連れていってくれたことを思い出します。
 母は、どんな辛い時もいつも気丈に振舞っている人でした。私は、そんな母の姿から諦めずに頑張ることの素晴らしさを教えてもらったように思います。
 そんな事情から、幼い頃のわが家の家計は苦しく、食卓に載る物は、高価な物はあまりなかったように記憶しています。今思えば、「あの頃は、貧乏だったんだなぁ・・・」と思いますが、あの頃の私は、貧乏だということを全然感じていませんでした。
 父と母が、それを感じさせなかったのだと思います。温かなご飯があり、それを見るだけで私は幸せでした。そして何よりも家族が食卓を囲んで、みんなで一緒にご飯を食べる。貧しさの中にもそこには、笑いがあり肌の温もりがありました。
 そして、粗食でも私は、〝愛〟というご馳走をいつも一杯お腹の中に入れてもらっていたように思います。無償の愛と思いやりで人を慈しむ深い絆、それはまず家族。そして大切な人達との絆。その絆を作ることができるかどうか、それを感じることができるかどうかは、全て幼少時代の感性の築きかたにより違ってくるように思います。
 子どもは、幼いながらにもその澄んだ目と心で、大人の姿から何かを感じ学んでいます。

 私は、幸せの原点は、「家族」の中にあると思います。そしてこれからの人生において、愛というものを育てていくための原点でもあります。

 今年一年、世の中は様々な出来事がありました。大きな波に飲み込まれないように皆、懸命に生きてきたように思います。社会が貧しくなり、心が風邪をひくような大変な今だからこそ、どうか自分が心を安心して預けることができる人の温もりを今一度感じてみて下さい。そして、どうぞ大切になさって下さい。人と人との絆は、お金では決して買うことができない宝です。そのことを、この寒い時代に、家族という人の和の中で幼子たちに教えてあげて下さい。子どもにとって、人からもらう温もりは、何よりもの贈り物ですから。

 今年頑張ったご自分へのお礼。来年への希望を!

 そして、全てに感謝!!

春日美奈子

春日美奈子

春日美奈子かすがみなこ

フリージャーナリスト

國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。

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