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コラム 教育

2014年03月03日

子育て、自分育て

 教育の語源ともいわれる「パイディア」(paideia)という言葉があります。この言葉は、紀元前五世紀、ソクラテスの時代に生まれたギリシャ語で、本来は、”子どもを善くする”という意味とされています。

この教育という言葉は、当時の親や大人たちが、子どもを善くしようとする願いの中から生まれたものでもあります。つまり教育とは、子どもを”よい大学に入れるために、子どもを賢くしよう”ということではなく、”子どもを善く”することが目的として生まれ始まったものなのです。

 

 時代の流れとともに、この教育の本来の目的が見失われ、いつの間にか「子どもを賢くする」ことだけにとらわれ重視されるようになってしまいました。このことが、いつしか子どもたちの心の飢えをまねき、夢を持つことよりも諦めの心を植え付けそして居場所まで失い、いつしか子どもたちを生きづらくしています。

 

 子どもは、純粋で無垢な種子です。これからどんな花を咲かせ、どんな実をつけるのか、全て私たち大人の育て方にゆだねられていることを知らなければなりません。そして、その権利を全ての子どもが持っており、善くなろうという願いを全ての子どもが持っていることを認識する必要があります。そして、先人たちが残し、願いを託した教育の発祥の意味を、今一度私たち大人は思い出す必要があるように思います。

 

 子どもの教育というと、子どもだけの問題として考えがちですが、実は大人自身が、自分の人生にしっかりと責任を持ちながら歩みを進め、凛とした姿でしっかりと子どもの前に立っているかということが重要になります。子どもは、純粋な目で、一番近くにいる大人の姿を見ています。そして、その姿を見て育ちます。机上の論理よりも、人の生き方、生きる姿は何よりも勝る教科書でもあります。それゆえに、大人自身も子どもとともに成長していくことが必要になります。

 

 「少年問題は、社会の鏡」ともいわれます。問題の原因を考えると、単にその少年の資質の問題や、親の養育態度の問題にとどまらず、様々な社会問題が見えてきます。問題の形は時代の変化に応じて変わっても、いつの時代でも子どもたちからの信号・警告であることに変わりありません。それは、子どもが危機にあるという子どもからのSOS信号であり、また大人社会への警告でもあります。

 

 子どもの教育の前に、今一度大人自身が我が心、我がふりを見直す時にきているのではないでしょうか。やがて社会を担う子どものために、大人はしっかりとした姿を見せなければなりません。子どもが育つ条件をつくるためには、子どもだけではなく、大人自身、歳を重ねても自分の人生に目標を持ち努力しながら生き生きと歩みを進めていくことがとても重要になります。どうか人が一生懸命生きる姿の尊さを、日々の生活の中で子どもに教えてあげてください。

 

毎年、美しい姿を見せてくれる桜の艶やかさ、華やかさは、寒風に耐え、ときには雪をいただきながら、着々と力を蓄えてきた結果としてのその美しさでもあります。その努力と忍耐がなければ決して花は開きません。

人の歩みもまた同じです。どの分野の人であっても、人の輝きは努力と忍耐の末にあることを知らなければなりません。人はともすると、一気に花を咲かせたいと思うけれど、そう簡単なことではありません。やはり大切なことは、じっと耐え、こつこつと努力を重ねながら時期を待つこと。努力を重ねる人には必ずその時期がくることを、未来ある子どもたちに私たち大人が、その姿をもって伝えていくことがこれからの教育として大切なように思います。

 

「徳は才に勝る」このことが大切にされるようになったら、社会は今よりももっと穏やかで、優しい居場所になるでしょう。人それぞれが大切にされる社会になることを願ってやみません。

春日美奈子

春日美奈子

春日美奈子かすがみなこ

フリージャーナリスト

國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。

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