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コラム 教育

2013年11月20日

夜空を見上げて

 日が暮れるのが早くなり、雪の便りも聞こえる季節になりました。凍てつく寒さの中、透明度の高い空では、冬の星座たちが、ひときは輝いて見えます。オリオン座、シリウスなど一年中でもっとも星空が美しいときです。それは、冬の澄んだ空だからかもしれません。

 先日、電車の中で、ある大学生の会話を耳にしました。「昨日、社会人の先輩に会ったら、人生の中で一番大切なものは、お金ではなくて、権力だって。さらに権力を持って、お金を得ることだって言っていたよ。それ、どう思う?」「それって、結局は、お金が大切ということじゃないの。オレはだめだなぁー。世の中には、そう思って生きている人もいるんだよなー」

 二人の学生の会話は続いていました。形のないものが信じられない人間が、形あるものに頼って生きている典型的な姿だと思わずにはいられませんでした。この二人の学生は、その先輩のような考えの大人にだけはなってほしくないなぁと傍で聞きながら、私は祈ったのを覚えています。

 お金が人生の中で、一番大切だという人もいます。大切なものの基準や価値観は、それぞれ違いますが、お金で買えるものよりも、買えないもののほうが、ずっと価値があります。それは、人の心です。人を信頼し、人を愛し、また人から愛されることは決して、お金では得られない尊いものです。その尊いものが、物質社会の中で、軽んじられ失われています。

 そんな世の中だからこそ、人は心の底から形のない温かな大きなものを恋うように思います。人が人に優しくならない限りは、その叫びは、それぞれが心の奥にふたをして、声なき声として、心の中で叫びながら生きざるを得なくなります。

 夜空に輝く星たちは、空が澄んで透明であればあるほど、それぞれが持つ光をひときわ美しく放てるものです。しかし、空が淀んでいたら、それぞれの輝きは目立たなくなってしまいます。
人の世界も同じ。社会が淀んでいたら、個々の輝きも薄れて見えにくいものです。しかし、社会が綺麗であれば、そこに生きる個々の輝きはそれぞれの存在をはっきりと示しながら光を放つことができます。

 せっかく命を授かっているのであれば、それぞれの魂が星のように輝くように生きたいものです。

 人それぞれが望む姿で、光を放てる優しい社会になれたら、空を見上げなくともすぐそこに沢山の星が見えるような気がします。

 今年も残り少なくなりました。最後は自分なりの色で輝きたいものですね。

春日美奈子

春日美奈子

春日美奈子かすがみなこ

フリージャーナリスト

國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。

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