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コラム 教育

2012年12月20日

福祉という名の下での偽善者たち

 教育現場や福祉現場は、人を扱う場所として、特に人権に対する配慮を怠ってはならない場所であり、その責務は大きいということを忘れてはならない。
しかし、最近子どもやお年寄りといった弱い立場の人権を無視し疎かに考えている現場職員がいるようである。
 
 子どももお年寄りも共に弱者であり大きな声をあげて心の悲鳴や真実を周りに叫ぶ術を持たないのが現実である。だからこそ傍に寄り添う者たちは、報告書を一つ書くにあたっても時間をかけて、その対象者に温かな心を持ってじっくり向き合い、様々な角度から観察し、その結果を報告書として提出することが重要になる。
しかし、現場、特に高齢者の福祉現場では、人材難もあり少ない人数で支援していることから、経験も知識も薄い人間一人の判断により上司に報告せずに、事実とは異なった報告書が提出され、最近一人のお年寄りの人権を侵害した事例がある。

 これは偽りの報告書によって健康な人間が、問題を持つ人間として報告された事例である。今回発覚したのは良い方で、泣き寝入りをされているお年寄りは多いと思われる。現場職員は、「私たちの仕事は、人を幸せにすることです」と言っていたことが耳に残る。これはまさに、言葉と実践が反比例している例であるといえよう。幸せにする代わりに、歳を重ねながら精一杯に生きている何も問題を持たない一人のお年寄りの純真な心を傷つけたのである。
人生という長い道のりを苦楽を友として歩き続けてきたお年寄りにとって、その人格を否定されるような行為をされた心の傷は、二度と消すことができない悲しいシミ後となって何時までも心に残る。
その大きさを福祉現場の職員はしかりと受けとめ反省し、二度とこのようなことが起こらないように組織においても職員の意識改革を進める必要がある。

 経験・体験という慣れほど怖いものはない。向き合う対象者一人一人同じ人間はいない。そのことを忘れてはならないように思う。教育、福祉現場職員の人材の育成と資質の向上を図ることは、今後さらに子ども支援の面や高齢化において必要不可欠なことである。
 一人一人の存在の大きさ、命の尊さを今、根本から問い直されているように思う。弱い立場の子どもやお年寄りが、心のそこから笑える日が訪れることが、ひいては、心豊かな幸せな社会へと繋がっていく。そのためには、人と人とが手を繫ぎ合い支えあっていくことが何よりも大切なことである。
 新しい年は、みんなが笑顔の年であって欲しい。

春日美奈子

春日美奈子

春日美奈子かすがみなこ

フリージャーナリスト

國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。

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