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2016年08月25日

『ポケモンGO』と夏休み

 7月22日、スマホゲームの『ポケモンGO』(株式会社ポケモン、米ナイアンティック社)が日本で配信されました。先行していたアメリカでは、デイリーユーザー(1日の利用者数)が2000万人を突破、日本でもわずか3日でダウンロード数が1000万を超え、空前のブームとなっています。

 かくいう私も早速利用してみました。現実の空間や景色の中に、バーチャルのモンスターが登場します。近くの名所旧跡が表示されたり、モンスターが潜んでいることが通知されたり、「体感的」にゲームを楽しめます。空き時間には、つい新種のポケモンを探してしまい、今までにはないスマホゲームが登場したことを実感しました。おとながこんな状態ですから、子どもにとってはより新鮮で刺激的なゲームでしょう。友達同士で対戦したり、集めたポケモンの数を競ったり、夢中になっているかもしれません。

 一方で、こうしたゲームの登場を全面的に喜べない気持ちもあります。まずは、スマホを利用する時間が長くなるという問題です。総務省の『青少年のインターネット利用環境実態調査(平成27年度)』によると、10歳から17歳の子どものスマホ利用時間は1日あたり約140分です。SNS、動画視聴、ネット検索、ゲームなどと楽しみ方はそれぞれでしょうが、どれも「やめどき」がむずかしいのです。それこそ『ポケモンGO』のように刺激的な仕掛けがあるものは、どうしても「つづき」が気になってしまうからです。ちょうど夏休み、自由な時間がたくさんある彼らにとっては、ますます長時間利用に陥ることが懸念されます。次に問題なのが、生活への影響です。北海道では、『ポケモンGO』の配信がはじまってからの10日間で、122人もの少年(12歳~18歳)が補導されました。モンスターを探して深夜の街を徘徊していたことが主な理由です。

 こんなふうに時間や場所に関わらずスマホ中心の生活になると、さまざまな問題を抱えやすくなります。睡眠不足や生活習慣の乱れといった身近な問題だけでなく、知らない人とトラブルになったり、犯罪に巻き込まれるかもしれません。他人にぶつかってケガをさせるとか、私有地に無断で入ってしまうようなことも考えられます。さらに、大切な機会や体験を逃すという問題もあるでしょう。家族旅行とか、友達と出かける花火大会とか、田舎に帰省するとか、夏休みならではの機会があるはずです。部活動や塾の集中講義、イベント参加やボランティア活動などを体験することもできるでしょう。こういう機会にもスマホを手放せず、親子ゲンカや友達との軋轢を招いたりして、散々な思い出になってしまうケースも相次いでいます。

 中学生や高校生を対象にした講演会で、必ずお話しする内容があります。以前のコラムでも書きましたが、「スマホやネットの利用時間を別のことに換算する」という方法です。

 仮に1日3時間スマホを使っていたら、1ヵ月で90時間。1年間では1080時間となります。これを日数に置き換えると45日。つまり1年365日のうち45日間、夏休みより長い時間を丸々スマホに使っていることになります。これほどの時間を別のことに使ったらどうなるか、ここを考えてほしいのです。スマホの利用時間を1時間減らして勉強に充てるとか、読書をするとか、そういう小さな積み重ねで先々の人生が変わってくるかもしれません。成績が上がればより上位の学校を受験することもできますし、結果的に希望の仕事に就ける可能性も高まります。

 なにより「お金」に換算してみましょう。もしも時給800円でアルバイトしたら、1年間で86万4千円です。これほどのお金を得られるはずの時間をスマホに費やしている――、そんな自分の生活に、子ども自身が気づくことが大切なのです。

石川結貴

石川結貴

石川結貴いしかわゆうき

ジャーナリスト

家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…

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