2015年07月10日

エネルギーの自由化

 電力やガス事業の自由化が進められていますが、この度、改正電気事業法などの関連法が国会で成立しました。今回はエネルギーの自由化についてふれてみます。


■エネルギーの自由化
 電力やガス事業においては既存の会社の力が強く、市場において新規の会社の参入は難しい状態にありました。制度的にも地域ごとに独占的な販売権を与える代わりに安定供給を義務付けることが行われて来ました。しかし、現在では競争的な市場を作り、消費者に対して料金引き下げやサービスの向上などを実現させることが求められています。
 また、世界の潮流である自由貿易推進の観点からもエネルギーの自由化を行い、外資の参入や投資を容易にすることも期待されています。このようにエネルギーを取り巻く環境変化が電力やガス事業の規制緩和や自由化を加速させています。
 エネルギーの自由化においては自由化後の業界の健全な発展をしっかりと推し進めるとともに、国民にとって重要な安定供給や安全性の確保などもバランスよく実行されなければなりません。

■電力の自由化
 発電の自由化で誰でも電力供給事業者になることができ、小売の自由化でどの供給事業者からでも電力を買えるようになります。既に事業所向けの大口の小売自由化が実施されていますので、今後は住宅等の小口の需要家に対しても自由化が行われます。たとえば、一般の家庭において再生可能エネルギーによる電気を購入して使用することも可能となります。
 電力の自由化を一層推進するために、送配電の自由化で誰でもどこへでも既設の送配電網を使って電気を送配電できるようになります。発送電分離の競争的環境を整えるために既存の電力会社の発電部門と送電部門を切り離すことが計画されています。
 電力の自由化の今後のスケジュールは、2015年中に広域系統運用機関を設立して、新規電源の接続受付、系統情報の公開などを行い、2016年中に小売全面自由化を行い、小口需要家も様々な料金メニューや電力会社の選択が可能になります。2020年には既存の電力会社の発送電部門の法的分離が行われます。

■ガスの自由化
 ガスには都市ガスとプロパンガスがありますが、現在進められているガスの自由化は都市ガスの自由化のことです。プロパンガスの自由化は1996年に実施されています。
 都市ガスも事業所等の大口需要家むけの小売自由化は既に実施されていますが、2017年4月に家庭等の小口需要家むけの小売全面自由化の予定です。また、現在3種類ある都市ガス事業者をガス小売事業者とガス導管事業者の2種類に集約されます。また、2022年には導管分離が実施されます。これは電力の発送電分離と同様の措置です。
 ガスの自由化により、既に大口の小売を開始している電力会社や石油会社の他、流通業や通信事業者などが電力に加えてガスの市場にも参入する可能性があります。

■電力の自由化の国際動向
 電力の小売全面自由化を例にとり国際動向を見てみますと、非常に早いスピードで自由化が実施されています。ドイツでは1998年に、イギリスでは1999年に、フランスでは2007年に小売の全面自由化が実施されました。フランスの電力事業はフランス電力公社が独占しており、電力事業の公益性が重視されて自由化がやや遅れました。
 アメリカでは1990年代に電力の自由化が推進されました。小売の自由化は州にまかされていますが、1996年から2000年にかけて24の州とワシントンD.C.で小売自由化の導入が決定しました。その後、カリフォルニア電力危機やニューヨーク大停電の影響を受けて、小売自由化の動きは停滞しています。
 日本の電力自由化は他の先進諸国に比べて20年~10年ぐらい遅れています。実は、電力の自由化に限らず、日本の様々な改革は欧米諸国に比べて常に10年前後遅れています。たとえば、経済に大きな影響を与える金融改革(いわゆる金融ビッグバン)は、欧米ではとっくに実施されていましたが、日本では21世紀になってやっと金融改革が実施されました。

■競争の時代
 エネルギーの自由化により、様々な業種から電力やガス事業に参入が可能です。また販売やサービスの方法も規制が緩和されます。電気とガスと電話がセットで格安に販売されたり、顧客を多数持つ電力やガス会社が日用品も販売するということも起こります。
 現在、都市ガス事業者は全国で200ほどありますが、その約1割は自治体が公営事業として行っています。自治体がサービス合戦を行うことには不向きであり、今後様々な競争が激化しますと、自治体による都市ガス供給事業は行き詰ることになるかもしれません。

■迫られる節電
 これまで、大手電力会社は夏場の午後の電力需要のピーク時に備えて、過剰とも言える発電設備を持ち、電力の使用制限を行うこともなく電力を供給してきました。しかし、電力の自由化により競争が進みますと、過剰な発電設備を持つ余裕がなくなるかもしれません。
 さらに価格競争が進みますと、安価な電気を供給するために電力事業会社によっては、電力需要の高い時間に節電に協力した需要家には電気料金を安くするなどの方法がとられることも考えられます。そうなりますと、一般家庭も含めて需要家は一層の節電を迫られることになるかもしれません。とくに経済的弱者には節電を余儀なくされる状況になるかもしれません。たとえば、夏の午後は家でクーラーを使わず、外に出て公園の木陰を見つけて時間を過ごすというようなことが考えられます。

 エネルギーの自由化は世界の趨勢で、避けることはできないことです。しかし、国民の生活や経済活動に負担や支障を生じないように、バランスのある実施を期待いたします。