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2014年09月10日

食料自給率と日本農業

 最近、TPP問題と関連して食料自給率が盛んに議論されています。今回は食料自給率について考えつつ、日本の農業問題にもふれてみます。

■食料自給率とは
日本で使われている食料自給率には主に二つの種類があります。一つは、カロリーベースの食料自給率で、もう一つは生産額ベースの食料自給率です。カロリーベース食料自給率は食べ物を、カロリーを基準にして計算する方法です。すなわち、食べ物のうち国産の食べ物でどれだけカロリーや栄養を摂っているかを表します。生産額ベース食料自給率は食べ物をお金に換算して計算する方法です。食費のうち国産の食べ物を買っている割合と考えることができます。なお、これらの二つ以外に重量ベースの自給率も使われることがあります。
日本の食料自給率は40%を切っているなどとよく言われますが、この場合はカロリーベースの数値です。下記に農林水産省による日本の食料自給率推移のデータを示します。平成25年度の日本の食料自給率はカロリーベースでは39%ですが、生産額ベースで見ますと65%になります。
なお、食料の他に食糧という言葉も用いられます。食料は食べ物全般を指しますが、食糧は穀物など主食になる食べ物を指します。

img_shindou_0910_01.gif■カロリーベース食料自給率
 世界的には食料自給率は生産額ベースの数値が用いられますが、日本では、独特のカロリーベースの数値がよく使われています。カロリーベースの場合、国産の牛肉であっても輸入した飼料で育てた場合は除外されます。牛肉1kgあたり10~11kgのトウモロコシや大豆などの飼料が必要で、日本では98%が輸入されています。カロリーベースの自給率は、このような点を留意しなければなりません。
年々、日本では米の消費が減少していますが、逆に肉の消費が増加しています。米の生産は春から秋にかけて多大の労力を要します。農業従事者の高齢化が進んでいますが、高齢者にとって米作は大変な作業です。その点、畜産は戸外ではなく敷地内の畜舎の中で行われますので、高齢者には比較的取り組みやすい作業です。高齢化対策としても日本では畜産業が進んで来ました。かつて米作は日本農業の代表でしたが、現在では米作よりも畜産関係の生産額の方が大きくなっております。

■日本の食料事情
 農林水産省が試算した主な国のカロリーベース食料自給率は次の通りです。フランス=129%、アメリカ=127%、ドイツ=92%、イギリス=72%、イタリア=61%、日本=39%。日本のように食料自給率が100%を切っている国はいくつかありますが、日本の数値は大変小さいのも事実です。なお、国際的に利用されている生産額ベース食料自給率で評価しますと、日本は主要先進国の中では3位の高位になります。
 食料自給率の低さが懸念される一方で、日本の食品廃棄物(残飯)の多さも指摘されています。日本は年間5500万トンの食料を輸入しながら、1800万トンの食品廃棄物を出しています。日本の食品廃棄率は消費大国のアメリカを上回り世界一です。食品廃棄物はレストラン、ホテル、ファストフード、コンビニ、スーパー等から出ていますが、一番多いのは家庭からで食品廃棄物の半分以上を占めます。

■賞味期限と消費期限
 コンビニやスーパーでは売れ残った食品が大量に廃棄されています。家庭においても食べ残った食品や時間がたった食品はよく廃棄されます。日本人は賞味期限に過敏と言われています。消費期限は、開封していない状態で表示されている保存方法に従って保存したときに、食べても安全な期限を示します。対して、賞味期限とは、開封していない状態で表示されている保存方法に従って保存したときに、おいしく食べられる期限を示します。従って、賞味期限を過ぎても食べられなくなるとは限りません。
 消費期限と賞味期限は語感がよく似ているので、賞味期限=消費期限と捉えられているきらいがあります。賞味期限という語を誤解の少ない別の言葉に変えるのもよいかもしれません。ちなみに、アメリカでは賞味期限の事を「Best before 日付」と明瞭に表現します。日付の前までに食べますと、とってもおいしいですよという意味です。

■待った無しの日本農業
 近年、日本農業は非常に厳しい状況にあります。さらにTPP問題も加わり、抜本的な改革が急務となっております。日本農業をどうするか、食料確保をどうするかなどを真剣に考えなければなりません。
食料問題は単に量的な確保のみならず、食の安全、安心も確保しなければなりません。耕作放棄地や休耕田が増えていますが、国土保全や環境対策の観点からも適切な対策が必要です。今後どのような農業改革が実施されるにせよ、農業従事者が安心して生活できるようなしくみをしっかりと作らなければなりません。

農業改革には世界の動向、特にグローバル化による国際的分業体制の進行などを的確に見極めつつ、農業改革が実施されることを期待いたします。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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