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コラム 環境・科学

2013年08月09日

太陽光発電とビジネスチャンス

 昨年7月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートし、メガソーラーを中心に太陽光発電の普及が一層促進されています。今回は、太陽光発電に関するビジネスチャンスについて、また太陽光発電に関するいくつかの話題について述べます。

■固定価格買取制度と太陽光発電
 固定価格買取制度における電力の買取価格は年度毎に見直しが行われます。2013年度の買取価格は太陽光発電以外は2012年度と同じでした。太陽光発電においては約1割程度買取価格が安くなりました。これは、メガソーラーの急激な普及により、設置コストが1年前に比べて20%~30%も安くなったことが買取価格に反映されたものです。従って、条件が整っていれば太陽光発電事業は十分に採算がとれる事業であることに変わりはありません。

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(資料:経済産業省)

■休耕田等の利用の可能性
 既に、メガソーラーについては、工場立地規制の緩和・規制対象外になっています。自治体が持つ埋立地や干拓地、飛行場用地、未利用地などがメガソーラーの用地として利用されています。さて、これまで農地に太陽光発電装置を設置することは出来ませんでした。農地転用を行うと設置は可能ですが、手続きに時間を要し、多量の書類を揃える必要があります。なお、以前は農地に支柱を立てて上部に太陽光発電装置を設置することは、自治体の判断が分かれることがありましたが、本年4月よりこのようなことも可能となりました。ただ、下部の農地を継続して営農することが必要です。また周辺の農地に影響を与えないことなどの条件があります。
これらの現状を鑑み現在は、休耕田や耕作放棄地に太陽光発電装置を設置するなど、再生可能エネルギーの用地として利用できる法案が検討されています。

■メガソーラーの経済性
 メガソーラー、1000kW(1MW)の設備の設置費用は、3億5千万円~4億円程度です。1000kWの設備の設置に必要な面積は、約1.5ha(15000㎡)です。メガソーラーの敷地の多くは賃貸で、月額100~200円/㎡程度です。運転維持費は年間1万円/kW程度です。現行の固定価格買取制度では、投資利回り10%程度の事業となります。従って、メガソーラーは10年で元がとれると言われています。なお、ここで示した数値はあくまでも例示で、個々の装置の条件により経済性は異なります。

■太陽光発電とビジネスチャンス
 太陽光発電関連のビジネスの裾野は極めて広く、既存技術からハイテクまで様々な利用が考えられます。装置の軽量化や長寿命化、また装置及び工事費のコストダウンは常に求められることです。さらに、技術革新や創意工夫、アイデアを活かしたビジネスも考えられます。具体的なビジネスの分野としましては、太陽電池の製造、太陽光パネルの設置と運転、小規模で太陽電池の応用、系統連系関連装置、大型蓄電池、スマートグリッド、HEMS等が考えられます。太陽光発電に関して様々な需要が生じています。たとえば、メガソーラー施設の監視システムの開発、ソーラーパネルの工業印刷、軽量で耐久性に優れたソーラーパネルの設置留め具の開発、太陽電池と小型風力発電機、蓄電池を組み合わせてLED街路灯に利用などです。

■直面する系統連系の問題
 太陽光発電の電気を買い取ってもらうためには、事前に電力会社から受け入れの承諾を得る必要があります。最近、事前承認が得られない事例が増えております。たとえば、北海道電力では現在40万kWの受け入れ容量に対して、再生可能エネルギーによる電力160万kWの買取の申し込みがある状況です。これは、北海道電力や東北電力だけのことではなく、西日本の電力会社でも地域により生じている事態です。なお、北海道電力では国の支援を得て、296億円を投じて大型蓄電池装置を建設しますが、これにより受け入れ可能電力が10万kW程度増えるのみで、受け入れ容量の不足を十分に解消できるものではありません。

 既存の電力系統に再生可能エネルギーを受け入れる場合に、その可能量は5%程度と言われています。気象変化などで再生可能エネルギーによる発電の急激な出力低下が生じた場合、供給エリアごとに確保している調整力が不足する可能性があります。逆に、電力需要を上回る発電があった場合は、電力供給が過剰になります。そのために、火力や揚水発電による需要と供給の調整体制を強化しなければなりません。従って、再生可能エネルギーによる電力をスムーズに系統連系するためには、出力変動に対応できる計測・制御システムの構築や、変電所や送電線などの設備を増やす必要があります。

 さて、日本の新しいエネルギー基本計画は2013年末までに策定される予定です。原発については、脱原発か、安全性を確認して再開かは、今後数年かけて議論されることになるでしょう。当面は太陽光発電等の再生可能エネルギーの普及・促進が図られていくものと思います。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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