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コラム 環境・科学

2013年02月25日

地震と原子力発電所

原子力発電所の敷地内の活断層の存在が大きな問題となっています。今回は地震と原子力発電所について述べてみます。

■東日本大震災と海溝型地震
2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震のマグニチュードは日本の観測史上最大の9.0で、宮城県北部で最大震度7を観測しました。この地震はいわゆる海溝型地震でした。

海溝やトラフでは、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込み、両者の境界に歪みを生じます。やがて、蓄えられた弾性力が跳ね返る時に地震が起こります。このような地震を海溝型地震と呼ばれます。東日本は北米プレートという大陸プレート上にあります。この北米プレートの下に太平洋プレートという海洋プレートが沈み込んでいます。そのスピードは毎年8~9cmです。
  
■大津波による原発事故
大地震の後に福島第一原発で起きた原発事故の最大の原因は、津波を受けて非常用発電装置が水没して作動しなくなったことです。事故前は予測される津波の最大の高さを5.9mと想定し、それよりも高い9mの防波堤を設置していました。しかし、大地震により15mを越える津波が襲いました。

事故を起こした福島第一原発の1号機は日本で稼働していた中で一番古い原発で、米国の会社が納入しました。福島第一原発の1~4号機の基本仕様は米国の原発と同じでした。米国では非常用発電装置を竜巻から守るために地下に設置されています。事故を起こした原発の非常用発電装置は海側のタービン建屋の地下に設置されていましたので、津波の被害を受けました。なお、福島第一原発以外の日本の原発では、非常用発電装置は陸側もしくは建屋の上部に設置され、津波によって海水に浸かることはまずありません。

日本列島の静岡県から西の地域はユーラシアプレートの上にあり、このプレートの下にフィリピンプレートが沈み込んでいます。そのスピードは毎年4~5cmです。このようなことから、東海沖、東南海沖、南海沖では過去に海溝型地震が繰り返し起きています。特に東海地方では1854年以降、空白時期が続いており、東海沖地震が近いと言われています。福島第一原発の事故の後、静岡県枕崎市にある浜岡原発が停止されました。津波に備えて高さ15mの防波壁の建設が進められました。
 
■活断層地震と原発
原子力発電所の敷地内の活断層の存在が大きな問題となっています。地下の地層もしくは岩盤に力が加わって割れ、割れた面に沿ってずれ動いて食い違いが生じた状態を断層といいます。最近の地質時代まで過去に繰り返し地殻運動を行っていた形跡があり、将来の活動が推定される断層のことを活断層といいます。日本列島には、地盤に蓄積される歪みが大きく、周辺の海底も含めて約2000の活断層が存在します。

間欠的に活動する活断層は、活動時に大地震を起こすことがあります。活断層型地震は海溝型地震と発生のメカニズムは異なります。活断層型地震が都市の直下や周辺で起こると直下型地震と呼ばれ、大きな震災を発生させることがあります。1995年の兵庫県南部地震は活断層地震であり、甚大な被害をもたらしました。活断層の活動間隔は1000年から数万年とはばがあります。たとえば、東京西部地域の立川断層の平均活動間隔は1万~1万5千年程度であり、過去の最新活動時期は約2万年~1万3千年前であったと推定されています。

活断層の上には原子炉は作らない事になっています。福井県の敦賀原発の原子炉は活断層の上に建設されているのではないかとの指摘があり、現在再評価が行われています。また、青森県の東通原発においても原子炉の直ぐ近くに活断層がある可能性が指摘されています。その他、石川県の志賀原発、福井県の大飯原発、美浜原発、及びもんじゅの敷地が再評価の対象となっています。

■地震と日本の将来
1995年の阪神淡路大震災の後、地震予知に多額の研究費が投入されました。しかし、2011年に起きた巨大地震・東北地方太平洋沖地震は予見されておらず、地震調査委員会の発生評価にもなかったことから、大地震自体が想定外の事でありました。しかし、869年に大きな津波を伴う巨大地震が東北地方を襲っていたこと、さらに縄文時代にも同様な地震と津波があったことがその後指摘されました。現在では、その他の地震を合わせますと、東北地方の太平洋側では約600年の周期で海溝型地震が発生していると認定されています。

2011年の東北地方太平洋沖地震が、全く予測されず警戒もされなかった中で発生したことは、残念でなりません。また、電力会社の内部では想定よりも大きな津波が発生する可能性を認識していたにもかかわらず、その対策を十分にとっていなかったこともまことに残念に思います。

2011年の東日本大震災では、巨大津波により約1万9千人が犠牲となりました。また、原発事故により広範な地域が放射能で汚染され、いまだ30万人をこえる人々が避難生活を余儀なくされています。このようなことが二度と起こらぬよう、国民の安全が確保されることを強く期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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