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コラム 環境・科学

2012年11月22日

蓄電池の展望

 脱原発が議論される中で、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによる電力への期待が大きくなっています。火力による発電では、需要に合わせて発電量をコントロールできますが、太陽光や風力発電では自然任せのところがあり、負荷に追従した発電は行えません。

 再生可能エネルギーで発電された電気を、使いたい時に自由に利用するためには、蓄電池の利用が期待されます。今回は蓄電池の現状と将来展望について述べてみます。

■蓄電池とは
 蓄電池は二次電池もしくは充電池ともいわれます。充電池は充電式電池の略称です。充電を行うことにより電気を蓄えて電池として使用できる様になり、繰り返し使用することが出来る電池のことです。化学反応を利用して電気を蓄えますが、放電する場合は逆の反応が進行します。

 乾電池や燃料電池にも名前に電池という語が付いていますが、機能や目的は蓄電池と全く異なります。乾電池は一次電池とも呼ばれ、電気は一度だけ使用できます。燃料電池は発電装置の一つです。

 蓄電池には様々な種類があります。現在使われている畜電池には鉛電池、ニッケル・水素充電池、リチウム電池などがあります。それぞれ異なる特長を有しており、用途によって使い分けられています。

 その他、大容量用の蓄電池としましては、実用化されているNAS電池や実証試験が進められているレドックス・フロー電池があります。
 
■鉛蓄電池
 鉛蓄電池は、正極に二酸化鉛が、負極に鉛が使われ、電解液として希硫酸を用いた蓄電池です。
 単セルあたり2ボルトと比較的高い電圧が利用でき、電極材料の鉛も安価であること、短時間に大電流放電させたり、長時間緩やかな放電を行っても安定した性能を持つなどの特長が有ります。

 一方、他の蓄電池に比べて大型で重く、希硫酸を使うために漏洩や破損時に危険が伴う事や、使用上発生するトラブルを避けるために、なるべく満充電の状態を維持して使わなければならないなどの短所があります。

 自動車のバッテリーとして広く使用されている他、産業用としてバックアップ電源、フォークリフトやゴルフカートなどの電動車用主電源、小型飛行機などで使用されています。

■ニッケル・水素充電池
 ニッケル・水素充電池は、正極に水酸化ニッケルが、負極に水素吸蔵合金が使われ、電解液に濃水酸化カリウム水溶液を用いた蓄電池です。

 ニッケル・水素充電池には、大電力、大電流時の放電特性に優れている、単純な回路で充放電が可能である、カドミウムなどを使用せず、環境に優しい、リチウム蓄電池に比べ安全性が高いなどの特長があります。ハイブリッドカーで使われる他、乾電池型の充電池として利用されています。

■リチウムイオン二次電池
 リチウムイオン二次電池は、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う畜電池です。正極にリチウム金属酸化物を、負極にグラファイトなどの炭素材を用いるものが主流となっています。

 リチウムイオン二次電池の最大の特長は、高いエネルギー密で充電できることです。その他、高い電圧が得られること、継ぎ足し充電に向いていること、氷点下の環境でも使用できることなどの特長を持ち、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラやビデオに用いられています。

 リチウム電池の欠点は、安全性を確保するために、破裂や発火の防止に十分に対策をとらなければならないことです。

■ナトリウム・硫黄電池
 ナトリウム・硫黄電池はNAS電池とも呼ばれ、正極に硫黄が、負極にナトリウムが使われ、電解質にβ-アルミナを用いた蓄電池で、300℃程度の高温で作動します。

 ナトリウム・硫黄電池は、鉛電池に比べて3倍程度の充電密度を有することから、電力変動の大きな太陽光発電や風力発電と組み合わせて出力の安定化を図ったり、また、工場等に設置して割安な夜間電力を利用したり、停電に備えた非常時電源としても使われます。

■レドックス・フロー電池
 レドックス・フロー電池は、イオンの酸化還元反応を溶液のポンプ循環によって進行させて、充電と放電を行う流動電池です。現在は実用化にむけて実証試験が進められています。

 長所として、サイクル寿命が1万回以上と長い、室温での動作が可能、大型化が容易、メンテナンス性が高いなどをあげる事ができます。

 短所として、原料のバナジウムが高価である、電解液を循環させるための付帯設備が必要、充電効率が低いなどがあります。

 再生可能エネルギーの安定利用、有効利用には大型の蓄電池の開発が必要ですが、レドックス・フロー電池は最も期待される蓄電池です。

■蓄電池の展望
 鉛蓄電池、ニッケル・水素充電池、リチウムイオン2次電池は、それぞれの特徴により用途が定着しています。

 一方で、各種燃料電池の普及や再生可能エネルギーによる発電の促進により、効率の良い中規模の蓄電池の開発が望まれています。中でも断然大きなエネルギー密度を有するリチウムイオン2次電池電気の大型化に期待が寄せられていますが、一層の安全性の確保やコストダウンが課題です。

 再生可能エネルギーの普及に伴い、日本のみならず世界の市場においても蓄電池の市場規模はJカーブを描くように伸びて行くことが予測されています。

 携帯型・小型の充電器の他、中型・大型の蓄電池の分野において、大きなビジネスチャンスが生まれることが期待されます。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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