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コラム 環境・科学

2012年10月25日

再生可能エネルギーの新展開

 日本では2012年7月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度が実施され、太陽光発電や風力発電の普及が一層加速されることになりました。今回は再生可能エネルギーの新展開について触れてみます。

■メガソーラー
 日本における太陽光発電の普及は、主に住宅において設置する場合の補助金によって推進されて来ました。一箇所あたりの平均的な発電容量は3キロワット程度です。現在、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の実施により、メガソーラーの建設が飛躍的に進められています。メガソーラーとは、1000キロワット(=1メガワット)を超える大規模な太陽光発電施設のことです。

 メガソーラーに適した土地の条件として、
①十分に広大な面積
②太陽光を受けやすい若干南側に傾斜した土地
③電力会社に電気を売るための送電設備の設置費用が安い
などがあげられます。

 メガソーラーの開発は、電力会社、自治体、民間企業、共同事業、自家発電用と多様な形態で実施されています。稼働中および建設・計画中を含め、電力会社によるものが25ヶ所(2012年2月現在)、電力会社以外の開発が約48ヶ所(2011年9月現在)です。主なメガソーラー計画だけで合計出力は、50万キロワットに迫っています。

 運転中もしくは計画されている大規模なメガソーラーの例を以下に紹介します。
・東京電力が川崎市に建設し、2011年12月から運転されている
  13,000キロワットの扇島太陽光発電所
・関西電力か堺市に建設を計画している
  18,000キロワットのグリーンフロント堺
・三重県が木曽岬干拓地に計画している
  40,000キロワットのメガソーラー
・ソフトバンクが苫小牧市の苫東地区に2014年に建設を計画している
  111,000キロワット

<メガソーラーの課題>
 太陽光発電は火力発電等と比べて発電コストが高く、また発電量が昼夜や天候に左右され、安定的な供給が難しいという短所があります。また、電力会社の電力供給網に接続する場合には、系統連系の安定化対策が必要になります。メガソーラーの技術課題としましては、一層の発電効率の向上、劣化削減、軽量化、コストダウン等があります。

 また、メガソーラーの建設には広大な面積の敷地が必要となります。日本の電力会社が計画している14万キロワットのメガソーラー発電施設の建設には、約400万平方メートルの土地が必要と試算されています。

 次にあげるような未利用の広大な土地は、メガソーラーの建設場所の候補地となります。
①未利用の工業団地
②休耕田や耕作放棄地などの未利用の農地
③自治体が所有する干拓地
工業団地や干拓地の利用には行政上の手続きなどが必要です。また、農地法により農地は自由には使う事はできません。日本の未利用地を有効に利用するためには、規制緩和や制度改革、また自治体の積極的な取り組みも必要です。
 
■風力発電
 日本における風力発電の設置は、2010年の時点で総設置基数は1184基、総発電容量は442,000キロワットです。

 既存の大規模な風力発電施設の例は次の通りです。
・新出雲風力発電所(島根県)  78,000キロワット
・郡山布引高原風力発電所     65,980キロワット
・宗谷岬ウィンドファーム     57,000キロワット
・長島風力発電所(鹿児島県)   50,400キロワット
・釜石広域ウィンドファーム   42,900キロワット
・阿那賀の風車(兵庫県)    37,500キロワット

 風力発電設備の建設には、年間を通して適当な風が得られることや、騒音や振動の害を防ぐために住宅地から遠く離れている事などが必要です。陸地における風力発電の建設に適した場所の確保は容易ではありません。

■浮体式洋上風力発電
 陸上では地形や障害物など影響により、大きな風が得られる場所は限られています。しかし、障害物がない洋上では陸上に比べてより大きな風力が得られることから洋上発電が注目されています。なお、日本はヨーロッパなどに比べて遠浅の海岸が少ないため、浮体式洋上風力発電の実用化が期待されています。課題としましては、陸上風車に比べて浮体式洋上風車の建設コストは2倍程度になることや、漁業権の問題があります。

 日本では浮体式洋上発電はまだ研究開発の段階ですが、国のプロジェクトとして次の計画が立てられています。
・長崎県五島椛島沖合  2013年に2,000キロワットを1基
・福島県沖合      2013年に2,000キロワットを 1基
・福島県沖合      2014年に7,000キロワットを 1基
・福島県沖合      2015年に7,000キロワットを 1基
日本は平地の少ない国土ですが、四方を海に囲まれています。また、装置が大きいほど、発電効率が高くなり、台風などの被害も受けにくくなります。今後は、浮体式を中心に大型の洋上風力発電の推進が期待されます。

 脱原発が盛んに議論される中、メガソーラーや洋上風力発電の開発が益々促進されることが予測されます。皆様にはビジネスチャンスを見出だすヒントや情報になればとご期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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