2009年06月25日

排出権取引の現状と、二酸化炭素の価格

 「排出権取引」の目的は、二酸化炭素の発生の少ない社会を築いていくことです。
 欧米にはすでに二酸化炭素の排出権(枠)取引市場が存在し、日本企業も様々な目的で売買することはできます。また、現在はありませんが、日本も将来に排出権取引市場が設置される可能性があります。今回は、排出権取引の現状と二酸化炭素の価格を考えてみます。


【ヨーロッパにおける排出権取引】
 ヨーロッパでは2005年から2年半の試行期間を経て、2008年より二酸化炭素の排出権取引が行われています。「キャップ・アンド・トレード」という方式で、最初は排出権(枠)は基本的に無償で割当られました。対象は、燃焼設備、製鉄・金属加工、セメント・窯業、紙パルプ等の大口直接排出主体の約12,000の施設に適用されており、これらの企業はすべて強制的に参加させられました。各国はそれぞれ自国の排出目標(キャップ)を決めたうえで、これらを対象設備に割り当てます。国ごとの目標設定についてはEUが一定の基準で審査して決めました。取引では二酸化炭素1トンあたり20ユーロ(当時のレートで約3,300円)で売買が行われました。割当量以上に排出を行ったときの罰金は、二酸化炭素1トンあたり100ユーロですが、実際には企業は罰金を払うよりは市場で安い排出権を購入することになります。


【日本における国内排出量取引の試験的実施】
 日本においては、省エネ設備への補助金をインセンティブに、企業の自主参加の形で、環境省により試験的に2005年より2年半の期間で行われました。これは、排出権取引のノウハウの獲得が主たる目的でした。参加企業は38社で、そのうち国から補助金交付を受けて省エネ設備を設置すると共に、排出上限を設定した目標保有参加企業の31社全ては、削減目標を達成しました。参加企業間の取引の価格は、二酸化炭素1トンあたり、平均取引価格は1212円で、最高取引価格は2500円、最低取引価格は900円でした。


【日本政府の二酸化炭素の購入】
 国際協力銀行などが公表する排出枠価格は、2008年8月に二酸化炭素1トン当たり3,800円を超える高値をピークに下がり続け、一時は1,000円近くになりました。このような中、京都議定書の約束の削減数値を満たすため、日本政府は本年2月にウクライナから3,000万トンの二酸化炭素の排出枠を購入することで合意しました。取得価額は300億円~400億円とみられています。さらに本年3月には、日本はチェコから温室効果ガスの排出枠4,000万トンを購入する契約を結びました。やはり取得額は非公表ですが、500億円程度と推測されています。


【二酸化炭素の取引価格はいくらか?】
 昨年の秋以来の世界金融恐慌の影響は、排出権取引市場にも及びました。価格は現在も低迷を続け、昨年の秋以前のヨーロッパ市場における二酸化炭素1トンあたり20ユーロ、もしくは3,000円程度が妥当な価格だと思います。尚、工場の煙突から出る二酸化炭素を大気に出ないように回収して、地中などに処理する場合も、二酸化炭素1トンあたり3,000円程度のコストがかかると言われています。このことは3,000円を大きく超えた取引価格にならないことを意味しています。

 経済の安定した状況下では二酸化炭素の排出権取引における価格として1トンあたり3,000円を一つの目安とされることが、現時点では適切と思いますので参考にして下さい。