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コラム 人権・福祉

2017年07月20日

テロリストの世代交代

 2017年、ハムザ・ビン・ラディンという人物の名前が世界中を駆け巡っています。年齢は20代後半、精悍な顔立ちでインターネット上に登場しメッセージを発信しています。この若者は、2001年9月11日、アメリカ・ニューヨーク・ワールドトレードセンター爆破テロ事件を引き起こした国際テロ組織アルカイダ、オサマ・ビン・ラディンの息子で、2011年にパキスタンでアメリカ軍特殊部隊によってオサマ・ビン・ラディンが殺害されて以降、行方や存在が一部を除いて未確認状態となっていました。対照的に、過激派組織イスラム国の存在力は、ここ数年急激に上昇したものの、最高指導者であるバグダディーは、ロシア軍の空爆によって死亡したという情報が飛び交い、現在、その確認が急がれています。その間に、国際テロ組織アルカイダは、イスラム国の分裂によってジハード(聖戦)の正当性を前面に押し出し、オサマ・ビン・ラディンというカリスマの再来として、息子のハムザ・ビン・ラディンに舵を託しました。

バリ線の中を通る兵士駐留する兵士

 イスラム国が事実上壊滅状態となっていく中、中東は、テロに関わる地域ごとの組織は細分化されてきていますが、再び強靭な指導者が現れた時には、また結束を強めるという、アラブの土地で何度も繰り返されてきた歴史の渦そのものの中にあります。民族や宗教、領土、貧困などが絡み合い世界が分断されている現在は、過激派組織が生まれやすく、過激派同士が連携を取りやすい環境がどの国にもあります。国家、民族集団、テロ組織、それぞれが自分を守るためにあえて敵を作り出し攻撃。世界中のテロリストが次々と新しい形態を流動的に組み立てていき、若い世代の過激派が世界中で無意識のうちに作られています。テロリストの世代交代はすでに始まり、ハムザ・ビン・ラディンのようにカリスマ性を持った指導者が一歩を歩み始めています。

銃を構える兵士軍事ヘリコプター

 日本では2020年の東京オリンピックを視野にした危機管理体制が強化されてきました。イギリスやドイツなどテロに遭遇した国々がどのようにテロ対策を打ちだし、対応してきたのか。テロとの交戦を選ぶのか、対話の道筋を作り出すのか。戦争の定義はかすみ、敵の見えない戦いが目の前に迫っていると言えます。身近にテロは起こらないという確信をもう誰も持てない時にきています。

軍機の中で待機する軍人日の出

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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