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コラム 人権・福祉

2021年08月12日

アフリカ・ナイル川の水問題

アフリカ・東部エチオピアで大規模水力発電を進めるグランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダムが完成。国民の約半数が電力不足に直面する中、エチオピア政府は電力事情の大改革を掲げ巨大ダムを建造。その規模は世界第7位を誇る総貯水容量約740億トン。巨大ダムの膨大な発電規模により電力事情だけでなく、エチオピアが苦しむ貧困問題解消の起爆剤としても注目を集めています。

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同時にこのエチオピアのダム開発を巡り、隣国のスーダンやエジプトから抗議の声が上がってきました。アフリカ東部一帯を流れるナイル川の上流地域であるエチオピアがダムによる水量管理の権限を手にすることで、ナイル川下流域にあたるスーダンやエジプトでの水不足の懸念が浮上。特にエジプトは国内産業の大半がナイル川の恩恵で成り立っており、水量管理をエチオピアが握ることで外交の不利益は避けられないと判断、即座にナイル川の国際管理のルールや非常事態を想定した法的手段、さらには軍事圧力も示唆しています。

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大河を巡る圧力はアフリカだけの問題ではありません。水資源を利用した外交戦略が様々な大義のもとで強引に進められている現状が世界各国で確認できます。東南アジア一帯を流れるメコン川では上流域の中国によるダム建設、水量管理に下流域のカンボジアやタイ、ベトナムなどメコン川に支えられてきた国々から反発の声が上がっています。欧州では複数の国々をまたぐドナウ川に関して周辺国による共同管理のルールが規定されました。水をめぐる衝突は今後、地球上でますます増加していくことは避けられません。持続可能な開発目標である世界基準のSDGsでも環境負荷、特に水問題に関わる国際協力を掲げています。

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諸外国同士での資源意識の共有、法規定、何より自然界に向ける負荷をかけない柔軟な姿勢が求められ、地域問わず地球規模での環境保護連帯は不可避となっています。私たちは歴史や文化、国境、民族、流動的な国際情勢を考慮しながら21世紀の暮らしを再認識するときを迎えました。各国の自国ファーストが地球規模で生活の土台をぐらつかせ、数字や理論のデータからも環境破壊の進行は明白です。これまで水をめぐる戦争は何度も発生してきました。自然に向き合う新しい生活様式を組み立て、浸透させていくことが地球に暮らす私たちの責務と言えます。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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