2019年04月15日

テロリスト新時代

 今年3月15日にニュージーランド南部クライストチャーチにあるイスラム教の合同礼拝所(モスク)が襲撃された事件。銃を乱射した実行犯はオーストラリア出身の若者。礼拝に参加していたイスラム教徒を銃で殺害する衝撃動画をライブ中継し、世界中に生々しい映像が拡散されました。世界で最も治安が安定し、多様性を重んじているニュージーランド。この国での穏やかな生活風景とテロ襲撃事件というあまりにも対極的で乖離した多数の犠牲者が横たわる現実を誰しもが受け止めることができませんでした。

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 テロリストによる襲撃事件とは、これまで過激な思想に傾斜したイスラム国のように宗教大義を掲げ連帯を組み、世界規模で組織を動員する戦闘行為が特徴の一つでありました。イスラム国に忠義を感じる若者たちは自らイスラム国を目指し、現場入りできない関係者は自らが生まれ育った自国でテロ事件を引き起こしていく。事件後には必ずイスラム国広報部が実行犯を讃える犯行声明を世界に発信し、情報に触発を受けたさらなる関係者が次のテロ事件につなげていく。テロリストの情報サイクルがインターネットを通じて地球規模で拡散・浸透することがテロリストの新しい構図といわれてきました。武器を大量に運び込んだり、多数のテロリストが各国に潜入をかけていく戦術から、少人数、極端にいえば一人で、人の集まる市場にトラックで突っ込んで行ったり、催し会場でナイフを使った殺傷事件を引きおこしていく。攻撃力は決して大規模でなくとも、事件そのものが情報として世界配信されれば、テロの実績としてカウントされていく時代となってきています。

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 反面ニュージーランドでの銃乱射事件は、宗教大義や組織体制による攻撃というよりも一個人による経験、性格、判断からくる突発性が際立つ犯行でありました。2011年の北欧のノルウェーで発生した大量殺人事件に触発されたことが報告されました。テロリストによる犯行というものは今後、組織的な戦闘行為だけでなく、各々のバックグラウンドを前面にだした個人的で急進的な動きが加わってくる可能性を示唆しています。
クライストチャーチの事件では、犠牲となったイスラム教徒の方々による許容や寛容の姿勢が世界に広がりました。事件背景を知ることで衝突を押さえ込んで行くことができるというメッセージを誰しもが受け取ったと感じています。

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