2018年10月19日

フィリピン情勢・過激派流入と自治政府の役割

 フィリピン南部ミンダナオ島。キリスト教徒がフィリピン国民の大半を占める中、この一帯は少数派イスラム教徒の住民が多く暮らし、中央政府からの政治乖離や経済格差が治安の悪化を広げてきました。かつてはフィリピンの中で最も混乱が深い地域として警察監視体制でさえも入り込めない時代もありました。このミンダナオ島のダバオ市に住居を持つ現在のドゥテルテ大統領は、南部一帯が抱える問題に自らが居住者として対峙。ダバオ市長時代には、治安復興に導き、2016年にはフィリピン大統領に就任。そこから豪腕極まる手法で麻薬組織や犯罪集団の摘発を続け、昨年末にはイスラム過激派組織掃討作戦を展開、武装組織の幹部を多数殺害する戦績を世界中にアピールしました。フィリピンが抱える問題をわかりやすくスピーディーに力づくで処理していく政治手法には、世界中から法規を無視した人権侵害であると非難が殺到。その反面、フィリピン国民からは不当と言える犯罪者拘束劇であっても絶大な支持を受け、まさに国民的英雄の称号を得るまでに登りつめました。

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 世界中の国々で民族・宗教問題が、その国を揺さぶるだけでなく周辺国に飛び火し国境沿いでの戦闘、さらには外交問題に広がっていくという事態は世界史の共通した流れであります。このミンダナオ島もその例に漏れず、国内の反政府を掲げる過激派組織に加え、中東を拠点としていた過激派イスラム国戦闘員が連帯した外国人戦闘員が流入し、イスラム思想を強めるテロ事件や市街地占拠事件を引き起こしてきました。ドゥテルテ大統領は自らフィリピン軍や自警団の先頭に立ち過激派への戦争宣言を発令。占領下に置かれたマラウィの街を大規模戦闘によって解放しました。そしてこの掃討作戦に重ねあわせるように、イスラム教徒が多数暮らす南部地域はイスラム教徒自身で政治を導いていく法案、バンサモロ基本法を認めていく道筋を発表しました。

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 限られた政治権益であっても自治政府としての機能を認めていく。武力ではなく法案によってミンダナオ島の道筋を示したことに、評価が高まっています。ミンダナオ島の街中には、今でも公共施設に過激派容疑者リストが大きく掲げられており、WANTEDとして指名手配犯を追う圧力が続いています。フィリピン情勢に触れる折には、過激派の流入地点となりうる地政上のフィリピンの立ち位置、そして国内外によるドゥテルテ大統領への評価のギャップを認識しておくことが必要なのかもしれません。

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