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2021年12月08日

DXのための人材確保における日米の違い

2021年の10月に、情報処理推進機構(IPA)が「DX白書」を公開しました。デジタルトランスフォーメーション(DX)の現状について戦略、人材、技術の観点から掘り下げ、日本企業と米国企業の比較を行ったものです。今年7-8月に行った調査の報告書ということですので、政府機関の調査にしては結構早く結果が公表されたのではないかと思います。

タイトルからして、日米で差が出たのだろうなあ、ということはわかりますが、日米の差は予想以上です。「全社的にDXに取り組んでいる」と答えた企業の割合が、日本では21.7%なのに対し、米国では36.6%と2倍近い差がありますし、「取り組んでいない」は日本の33.9%に対して米国が14.1%と、2倍以上の差があります。しかも日本では、「全社で取組んでいる」よりも「一部の部門において取組んでいる」が23.6%と、多くなっています。このコラムでも書きましたが、DXとは企業文化の刷新であり、全社で取り組まなければ大きな効果は望めません。

■人材のリスキリングについての日米の取り組みの違い

白書は全体で400ページ近くあり、第1部「総論」第2部「DX戦略の策定と推進」第3部「デジタル時代の人材」第4部「DXを支える手法と技術」という構成です。中でも、人材について大きな割合が割かれているのが印象的でした。私は人材こそがDX推進において非常に重要だと思っていますが、この点についてはIPAも同じ考えのようです。

DX人材の充足状況について聞いたところ、『「やや過剰」「過不足ない」の割合が日本で17.3%、米国では54.2%だった』ということで、日本では圧倒的な人材不足です。それにも関わらず、その人材を育成するという活動でも日本は後れを取っています。

白書では「人材の確保は、外部からの調達では足りないとされることが多く、内部の人材の学び直し(リスキリング)も必要とされる。」とした上で、「全社員あるいは一部社員にリスキリングを行う考えの企業は、日本では24.0%、米国では72.1%だった」ということで、人材を育成するという面でも日本は大きく立ち後れていると言えます。
さらに、「ITリテラシー向上の施策について、日本の53.7%が「実施していない」と答えた。米国は12.7%だった。」ということです。半分以上が実施していないんですね。このコラムでも書きましたが、DX人材は外部に求めるよりも、内部で見つける方が早いし効果的です。是非この点を認識して頂いて、人材の再教育に取り組んで頂きたいと思います。

■日本は人材育成について戦略を立て直すべき

白書中のコラムで日経BPが行った日本国内の調査の結果が紹介されており、そこには『DX領域で採用・育成を強化すべき人材像の1番人気は、「変革リーダー(DXを主導するリーダー)」(58.5%)だった。』ことが紹介されています。「社内を」変革してくれるリーダーを最も必要としている時点で、内向きとも言えますし、そもそもこれは経営層がリーダーになるべきで、育成するものでも無いような気もします。

こうしてみると、日本では個々の対策が遅れているという前に、全体的な戦略/ロードマップが描かれていないのではないかという懸念が生じます。この白書の発表を機に、今一度DX戦略を見直し、人材の育成・確保を組み込んだ全体戦略を立て直すべきなのかも知れません。

大越章司

大越章司

大越章司おおこししょうじ

株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役

外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…

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