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2008年04月05日

人材のマネジメントは「管理・服従」から「支援・自律」へ

企業運営において、人材マネジメントに関心のない会社はまずないと言っていいでしょう。そしてそれは、昨日今日、急に関心が高まった訳ではなく、昔から現在に至るまでその重要性は変わりません。一方で、時代背景や経営環境が変化すれば当然のことながら、人材マネジメントや、その前提となる企業と人材の関係も変わらざるを得ません。問題は、そのことがどれくらいきちんと認識されているか、です。

もちろん、多くの企業は人事制度の変更や、研修体系の見直しなど、様々な対応を行ってきています。しかし、それが効果的に行われているという話はあまり聞いたことがありません。経営者や管理職社員は、有効な打ち手が見つからず思案顔です。なぜでしょうか?それは、この10年の人材マネジメントの本質的な変化を捉えていないこと、に起因するように思えて仕方ありません。

では、その本質的な変化とは何でしょうか?私は、一言で言うと「管理・服従」から「支援・自律」であると考えています。従来のマネジメントが、人材を「管理・服従」を指向していたのに対し、現在では、「支援・自律」を指向せざるを得ないということです。したがって、従来の考え方をしていたのでは、当然のことながら対応は間違えたものになってしまうということになります。

企業を取り巻く変化が比較的緩やかな時代、先が見通し易かった時代は、経験が非常に有効に機能しました。積み重ねてきた経験を持つ人、すなわち社歴の長い人ほど多くの知恵を持ち、それまでの成功体験・失敗体験を元に、自信を持って部下や後輩を指導していくことが出来ました。もちろん、部下が積極的に提案していく、いわゆる「ボトムアップ」で組織運営が行われる場面もあったし、伝統的にその色彩が強い企業もありました。しかし、総じて「上意下達」を基本としていました(「トップダウン」というと、厳密には欧米企業が使う場合と意味合いが異なりますので、と敢えて日本語で表現しました)。長期雇用を前提として、企業が人材を企業ニーズに当てはめるように指導・教育し、人材は企業に企業人生を通して忠誠を誓ったのでした。このマネジメントですと、人材はできるだけ罰点が付かないように、波風を立てず無難に会社人生を送るように意識付けられます。皆が同じ方向を目指す組織集団の強みが最大限発揮しやすいのです。これが「管理・服従」です。

一方、時は移り、経営環境は絶えず大きく変化し、先を見通すことが非常に難しくなりました。特に、競争環境がかつてのように単純ではなく、外国企業や、思わぬ企業が競合となったり、反対にかつての競合とアライアンスを組んだり、合併したりするのは日常茶飯事です。M&Aの危険にも絶えず晒され、環境保護やコンプライアンスも厳しく問われています。しかし、最も大きな変化は、インターネットのブロードバンド環境の整備でしょう。顧客がかつてとは比較にならないほど多くの情報を握り、贅沢、わがままになっています。マスでは対応できず、個で対応することが必須です。カタログ化できない製品・サービスがほとんどとなり、顧客接点となる営業人材は、ご用聞きではまったく役にたたず、いかに付加価値、ソリューションを提供できるかが問われます。

さて、問題はそのような環境は、経営者も上司も経験するのが初めてだと言うことです。インターネット環境のツールは若い人ほど、知識が豊富で使いこなしています。そうすると、上司はいかに部下、特に若い人の力を引き出すように支援し、発揮する環境を提供するということが必須となるわけです。もちろん人材の方は、会社が与えてくれること、上司が指導するのを待っているのではなく、絶えざる自己成長と、新しい提案を行っていくことが求められるのです。それが、『支援・自律』です。

次回は、その「支援・自律」について詳しく述べたいと思います。

小杉俊哉

小杉俊哉

小杉俊哉こすぎとしや

合同会社THS経営組織研究所代表社員

日本・外資系両者での人事責任者の経験を含む自身の企業勤務経験、企業へのコンサルティング経験、そして25年に渡るアカデミックな分野での研究を通じて、理論と実践の両面から他分野に亘り説得力のある話を展開し…

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