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2008年07月05日

支援・自律 その(3) ~支援型リーダーシップ

前回、企業を変えるためには、マネジメントによって人材を『管理』しようとしても上手くいかず、リーダーシップを使って人材を『支援』することが必要という理由を述べました。今回は、そのような支援型リーダーシップについて述べようと思います。

ジム・クラークという人物をご存じでしょうか?元々、カリフォルニア大、スタンフォード大で教鞭を執っていたコンピュータ・サイエンスの研究者でしたが、学生たちと共にシリコングラフィックス(SGI)を創業します。そののち、ウェブブラウザであるモザイクを作ったマーク・アンドリーセンに連絡し、後のネットスケープを設立します。そして、その後、医療ソフト会社であるヘルシオンを創業します。3社とも大成功に導き株式公開させます。アメリカでも3社の上場に成功した起業家は他にいません。

ジム・クラークのスタイルは、常に「先の先」を探して、ネットワークに点在する情報、知識の中から自分の目的に合うように、必要なものを見出し、組み合わせるという試行錯誤の中から、イノベーションや新しいビジネスモデルを創り上げるというものです。それは、ものづくりを基礎とした官僚制階級組織、上意下達とは対極にあり、社内外を問わず、ネットワークに点在するメンバーの中から参画意欲と能力のあるものが自由に加わります。事業創造のために、自らのアイデア、資金を提供し、顧客ルートをネットワークの中から見つけてきます。もちろん自身が強烈な起業家魂をもった人ですが、そのプロセスでは成功のためにメンバーを支援します。

究極の支援型リーダーシップは、「サーバント・リーダーシップ」でしょう。これは、直訳すると「召使いのリーダーシップ」ですが、サーブ(お仕えする)ことと、リードすることは不可分という考え方で、グリーンリーフという人が提唱しました。彼は、ヘルマン・ヘッセの小説「東方巡礼」を読んで触発されたようです。

小説には、ある秘密結社の巡礼の旅に同行するレーオという召使いがでてきます。彼は、このようは人物として表されます。 「この目立たぬ男は、どこかひどく感じのよいところ、押しつけがましくなく人の心を引きつけるところを持っていたので、私たちはみな彼を愛していた。 彼は陽気に仕事をし、たいていひとりで歌や口笛をくちずさんでいた。必要な時だけしか姿を見せない、理想的な召使いだった」。そして、最初はレーオに感謝していたメンバーたちはだんだんそれが当然と思うようになり、また、当初目的を持って巡礼の旅を始めたにもかかわらず、いつしかそれもメンバーの頭から忘れ去られたようでした。そんなある朝、レーオは忽然と姿を消します。そしてその巡礼の旅は途中で終わり、メンバーは散り散りになります。その中で、主人公はレーオを求めて彷徨い、そして遂に再会を果たします。レーオこそが、秘密結社の長だったのです。

秘密結社に入るには、「個人個人の目的を持たなければ組織に参加してはならない」という条件がありました。しかし、皆が目的を忘れたためにレーオは旅のメンバーから離れたのです。また、結社の長レーオは奉仕する法則というのを語ります。「自分のもっとも優れたものを与えることによってのみ目標を達成する」、「長く生きようと欲するものは、奉仕しなければなりません。支配しようとするものは、長生きしません。」 どれも非常に含蓄を含んだ言葉です。そのまま企業に当てはまります。

 1.企業においても、リードされる者は個々人が目的をもっていなければ参加してはいけない

 2.リードする者は、その最も優れたものを与えることで、初めて企業の目標を達成する。また、リードする者は、奉仕しようとすることが必須で、支配しようとすると短期に没落する。

 3.さらに、リードされる者は、共通の目的ではなくて、「個人個人の目的」を持つということが正に「自律」であり、リーダーがそれを「支援」するという役割なのだ、

ということを表しているところがこの小説の秀悦なところなのです。

小杉俊哉

小杉俊哉

小杉俊哉こすぎとしや

合同会社THS経営組織研究所代表社員

日本・外資系両者での人事責任者の経験を含む自身の企業勤務経験、企業へのコンサルティング経験、そして25年に渡るアカデミックな分野での研究を通じて、理論と実践の両面から他分野に亘り説得力のある話を展開し…

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