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2017年05月25日

高齢期の格差は、何によって生じるか? ~『ライフシフト』より

「ライフ・シフト~100年時代の人生戦略」という本が、話題です。誰もが100年生きる時代をどう生きるかについて提言されている本で、思想家である著者のリンダ・グラットンは、これまでの人生の3ステージモデル「①20年間教育を受け」「②45年間働き」「③リタイアして老後15年間を過ごす」が成り立たなくなると述べています。平均寿命が100歳になったとき、引退後の高齢期は40年近くにもおよび、それだけの長い期間を安心して暮らせるだけのお金を準備するのは難しく、仮にお金があったとしても何もせずに楽しく暮らせるほど短い時間ではないというわけです。

長い高齢期を幸福に暮らすには、引退後を「新しいステージ」と捉えて、お金だけではない3つの無形資産を準備しておくことが大事だと言っています。
一つ目は、「生産性資産」(Productive Assets)。仕事に役立つような技術や知識、人間関係などを意味しています。定年退職したあとでも、別の組織であるいは違う形で仕事を続けられるような人になっておけば、生涯現役も可能になります。もちろん会社でするような仕事だけでなく、趣味などの世界でも、人に教えられるレベルであれば「生産性資産」と呼べるでしょう。
二つ目は、「活力資産」(Vitality Assets)。これは健康や、家族・友人との交流などのこと。健康はもちろん様々な人達との交流が高齢期に活力をもたらし、幸福感や充実感につながっていきます。
三つ目は、「変身資産」(Transformational Assets)。これが面白い視点で、「人生の途中で、新しいステージへの移行を成功させる意思や能力のこと」と定義しています。高齢期に入ると、それまでの「組織人」「ビジネスマン」「親」といった役割がなくなり、新しい自分として生きることが求められますが、そこで変わろうとする意思を持てるかどうか、上手に変われるかどうかということでしょう。ちなみに、Transformには、見違えるほどの変化、一変するといったニュアンスがあるので、ちょっとだけ違った面を見せるのとは違うという点に注意が必要です。

「変身資産」の大小は、変身した経験によるところが大きいとリンダ・グラットンは指摘します。同じところで、同じような人間関係の中で、同じような生活をずっとしてきた人よりも、環境変化を経験してきた人の方が変わる能力が高く、変わろうという意思をそれほど強く持たなくても変わることができる。これはよく分る話で、仕事人間・会社人間だった男性高齢者が、仕事や職場がなくなったときにすることを見つけられず、家にこもりがちになるのは、「変身資産」が少ないからなのでしょう。

読者の皆様の、「生産性資産」「活力資産」「変身資産」はどうでしょうか?
53歳の私には、まだまだまったく自信がありませんので、高齢期に向けて十分に心掛けておかねばなりません。ちなみに、リンダ・グラットンは「本当の格差は、(お金などの有形資産ではなく)この3つの無形資産によって生まれる」と言っていますから。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

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