ご相談

講演依頼.com 新聞

コラム ビジネス

2013年08月23日

評価・処遇は、「公平」でいいのか?

同じような成果を上げているのに、上司や周囲からの評価に大きな差が生じているケースがあります。ある会社の営業課長であるAさんとBさんは、課としても個人としても同等のレベルの業績を上げていましたが、Aさんの評価はBさんよりもはるかに上。Bさんはそれについて、「不公平だ」、「感覚やイメージで評価している」、「気に入られるかどうかで評価が決まってしまう」という不満を持っていました。Bさんには、売上・利益の目標をしっかり達成しており、Aさんにまったく見劣りしない成果を上げているのに、なぜ自分がそのような評価を受けるのか、まったく分からなかったようです。

二人の間に評価の差が生じていた原因は実にシンプルで、コミュニケーションの巧拙にありました。Aさんは、「業務とコミュニケーションは、セットです」と言っており、仕事の関係者に対してまめに目配りをし、情報伝達を欠かしません。部下がとってきた契約が通常とは異なる複雑な内容であった場合などは、その事務作業を行う部署の人に対して、自ら説明に出向き「手数をかけて申しわけない」といった声がけをします。新規顧客が前任者からの引き継ぎであったら、他部署に異動した前任者に電話をして「おかげさまで受注できました」と連絡を入れます。部署の目標が達成できたら、上司や協力部署に対してすぐに感謝の言葉を添えて報告を入れています。

Bさんは、このような行動をとりません。色々と話を聞いていると、「われわれ営業が稼いでいるおかげで、事務部門や管理部門が飯を食えるわけですから。」といった言葉が出てきて、自分の仕事にプライドを持って取り組むのは良いとは思いますが、どうも他部署や仕事の関係者に対する気配りが足りません。もちろん、職場でそのようなことを口にしているわけではありませんが、誰しも考え方は行動に出てしまうもので、上司からも周囲からも良くは思われていません。事務部門からは、Bさんの課の仕事は面倒なものが多い、ミスや不備が多い、といった不満が出がちです。

皆さんは、この二人をどのように評価すべきだと思われますか。同じ成果を上げているのだから、同じように評価すべきだと考える人も少なくないでしょう。しかし私は、まったくそうは思いません。理由は、Aさんのような部署や他人を動かせるタイプこそが、後々にリーダーや幹部になっていく貴重な人材なのであって、そのような人材を高く処遇し、早く引き上げるべきだと思うからです。同じ成果を出しているのに給与・賞与や昇格に差があるのは、確かに一面では不公平でしょう。しかしながら、会社経営は、社員間の公平性を追求するのが目的ではありません。永続的に社会に貢献すること(その手段として利益を上げること)を目的としており、そのためには、それを実現できる人材を選び育てていかねばなりません。一時の公平性など、どうでもよいというわけではありませんが、経営としては、次代を担う貴重な人材の育成が優先すべき事項であって、不公平でもそのような処遇を実行すべきだと思うわけです。(もっともAさんのようなタイプでも、実はただの八方美人なら問題があるので、見極めは必要ですが。)

官僚組織のように入る時の成績でキャリアとノンキャリに分けられてしまう、大手企業の一部にあるように大学の銘柄で出世レベルが決まってしまう、といったやり方は「公平でない」とされますし、一般企業においても選抜的な教育・処遇を「公平でない」という理由で避けがちになっています。それはまるで、小学校の運動会では順位をつけない、皆で手をつないでテープを切るのと同じように見えます。評価・処遇に差をつけるには、明確な根拠がいるという心理は分かりますし、明確な根拠がなければ不平不満につながる可能性もあるでしょう。だからと言って、公平性が何よりも優先されていいのかどうか。公平な評価・処遇が、企業の未来にとって本当に良いのかどうかを熟慮する必要があるように私には思えます。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

  • facebook

講演・セミナーの
ご相談は無料です。

業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。