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2012年10月25日

仕事する「人」の価値 ~誰でも出来る仕事の中に。

誰しも、「自分が担当している仕事は、他の人が代わることはできない」と思いたいものです。一生懸命取り組む仕事には愛着も自負もあるでしょうから、誰にでもすぐに出来てしまうと思いたくはありません。もし、「自分の仕事は他の誰にでも出来る簡単なこと」だと思ってしまうとモチベーションも沸きませんし、不安や環境や周囲に対する不満を覚えるかもしれません。

しかし、冷静になって考えてみると、実際、自分しかできないような仕事はほとんどないことに気がつきます。マニュアルを読めば他の人でもすぐに出来る、引継ぎをやれば自分でなくても構わない、現実にはそんな仕事ばかり。振り返ってみれば、自分にしかできないはずという気持ちと裏腹に、自分がその仕事を始めたときだって、前任者からのちょっとした引継ぎだけで出来てしまったではないか・・・。

極端に言ってしまうと「仕事は誰でもできることだらけ」ですが、それは悪いことではありません。仕事を、誰にでも出来るように定型化・標準化するのは組織の知恵であり、だからこそ、組織は成長、拡大していくことができます。採用した人をすぐに戦力化できるのも、事業環境の変化に合わせて人事異動を行えるのも、退職者が出てもすぐにカバーができるのも、社員であれば仕事の多くを誰でもできるようにしているからです。逆に、仕事は特定のひとしかできない、という組織は成長・拡大できません。業務量の増加、環境変化、退職者が出るといったことに、右往左往するばかりです。

では、仕事をする人の価値は、どこにあるのでしょう。誰でも出来ることばかりなら、「誰がやるか」に意味はないと考えられます。

私の事務所の近くには数軒のコンビニがあり、決まってパックのレモンティを買っています。会計の際、私の顔を覚えていてストローだけをすっと差し出す店員と、いつも袋を出してくる店員がいます。また、駅の売店で、電車が発車しそうなタイミングで新聞を買うとき、こちらの急いでいる様子を見てサッと釣り銭が出してくれる人とそうでない人がいます。このように、どんな仕事においても小さなことに気がつき、気の利いた仕事ができる人とそうでない人がいます。私は、ここに仕事をする「人」の価値を見出します。

知識や技術は、ごく一部の人達を除けばそう大差はありません。また、知識や技術で自分の独自性を発揮しようというのも、ごく一部の人達を除けば非常に難しい話です。であれば、誰でもできる定型化・標準化された仕事の中に、ちょっとした、でもその人ならではの気遣いや気働きのこもった言動があるかどうかが、その人がその仕事をやる意味だと思います。恐らく現代社会が今、顧客や職場が本当に求めている価値も、そのような言動の中にあるように思います。このことをビジネスパーソンはもっと意識すべきですし、会社としてもマネジメントや評価、育成などに、もっと取り込んでいかねばなりません。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

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