ご相談

講演依頼.com 新聞

コラム ビジネス

2011年09月22日

モチベーションの向上と、人件費の使い方

社員のモチベーションを上げるための方策に、頭をひねっている経営者の方は多いと思います。昔からの王道で、もっともよくある方法は、お金で報いること。昇給したり賞与が上がったりしたら、やる気になりますし、たとえば何か資格をとって手当がつくようになったり、目標達成して報奨金をもらったりするのも、嬉しいものです。ただ、こういうご時世で、経営的には人件費をそんなに上げる訳にもいかないので、簡単にお金で報いることができない…。ここが、難しいところです。

そこで今回は、モチベーションを上げるという観点から、人件費を増やすことなく、給与制度を見直すポイントについてご紹介したいと思います。

一つ目は、諸手当です。役職手当など責任や役割に対する手当は、ここでは除きます。例えば、家族手当、住宅手当、資格手当、営業手当、運転手当、皆勤手当、地域勤務手当など、属性や職務や勤務形態などに関するもので、名称や意味内容も含めて、非常にたくさんの種類の手当があります。その額は、住宅手当や一部難関資格に対する資格手当を除けば、1,000円~3,000円、ちょっと高くて5,000円くらいでしょう。私は、人事制度の改定コンサルティングを行うとき、いつも社長に「この手当、社員の方はもらって嬉しいと感じているでしょうか?」とお訊きします。もし、「もらって当然」「もらうのが権利だ」といった受け止められ方をされているなら、見直したほうがよい。社員のやる気を鼓舞することのない、意味の薄いお金の使い方になってしまっているからです。

喜んでもらう、感謝されるためには、毎月少額を支払い続けるよりも、1回にドンと払うようにすること。社員から見れば、「子供が生まれたので、毎月3,000円の家族手当がつくようになる」よりも、「出産祝金を20万円もらえる」ほうが、はるかに嬉しいはずです。20万円といっても、毎月3,000円を5年半払うのと同じですから、大判振る舞いをするわけではありません。資格手当にしても、毎月2,000円もらうより、合格したときに10万円もらえるほうが、嬉しいに決まっています。なぜか、何でも手当をつけるという発想になっている会社が多いのですが、これらを一時金に変えていくことで、モチベーションの向上に寄与する上手なお金の使い方になります。

二つ目は、報奨金(インセンティブ)です。月間目標を達成したら、5,000円とか1万円とか、そんなルールを作っている会社が多いのですが、ルールになっているということは、「達成したらもらえる」と分ってしまっているので、インパクトに欠けます。インパクトを与えるためには、意表を突くことが大切。そもそも目標達成は、半年に1回の正規の評価の際に勘案しているでしょうから、それと報奨金は別に位置づけても構いません。社長賞などをタイミングよく、それぞれに選出理由をつけて数名表彰するほうが、効果があります。誰がいくらもらえるかが分らないことで関心が集められるし、意表を突くことで盛り上がりもあります。様々な観点から表彰し、報いることで、トップとしてのメッセージ性も高くなりますし、トップがしっかり見ていることを伝えるわけなので、やる気につながっていきます。

三つ目は、昇給です。長くデフレが続いた結果、昔は常識であった「ベースアップ」はほとんど聞かなくなりましたし、企業の収益力の低下によって、定期昇給の額もかなり小さくなってしまいました。(年俸制などへ移行し、定期昇給を廃止した会社も少なくありません。)中小企業なら、1年に1回の定期昇給が、500~1,000円程度の会社が多いのではないでしょうか。これも、手当と同様に、社員がそれを有難いと感じているかどうかで、考え直したほうがよいでしょう。そもそも、なぜ1年に1回昇給するのか、ということも問い直すべきポイントです。

等級制度を変更した上で、年1回ではなく、昇格したときに昇給するという仕組みに変えると、○○が評価されて昇給したという意味が分りやすくなり、額も大きくできるので、嬉しさが生まれるでしょう。昇格したけれど給与は同じという制度になっている会社は、非常に多くありますが、そういう状況を解消するには、定期昇給の見直し分を原資にすればよいということです。定期昇給を無くしたと見えないようにするには、賞与の原資に振り替えるなど、貢献度に応じた分りやすい配分方法にするというやり方も、有り得るでしょう。

社員のモチベーションの維持・向上は、経営や組織運営の大きなテーマの一つになっていて、様々な理論が紹介されたり、色々な方策が議論されたりしていますが、いかに社員の心に訴えるか、気持ちに響くか、ということがそのポイントになっているのは共通しています。研修や、何かそれまでにないイベントや仕掛けをするのもいいのですが、今回ご紹介したような身近なことを、社員がどう受け止めているか、という観点から少し見直してみるだけで、効果が表れることもあるのです。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

  • facebook

講演・セミナーの
ご相談は無料です。

業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。