女性を管理職など、リーダーに登用するためには下駄を履かせる必要があるのでしょうか。そのような質問をダイバーシティに関する講演の際、受けることがあります。答えはイエスでもあり、ノーでもあると私は感じています。
何が足りないかによって、履かせる下駄の高さも変わってきます。間違った下駄を履かせようとしていないか、気を付けたいところです。そこで、間違った下駄を履かせようとしているケースとしてよくあるのが、「男性社会、今までのリーダーのやり方・風土に合わせようとする」ものです。折角女性をリーダーとして登用しようとしているのに、同じやり方だったら女性である必要がありません。
日本航空は鳥取三津子取締役専務執行役員(59)を4月1日付で社長に昇格する、という人事を発表しました。客室乗務員(CA)出身かつ女性の社長は初めてです。彼女は下駄を履かせられているのでしょうか。JALにはCA以外の多岐に渡る事業がありますが、今まで、トップになる人は、特に日本企業は様々な経験を積んで広い視野、多角的な視点を備えることが大事であり、だからジョブローテーションの意味がある、と思われてきました。しかし鳥取社長はCAから派生した業務でキャリアアップしてきました。過去の日本企業ですと、様々な業務経験がないから難しいのでは?下駄を履かせるしかないのでは?と思われるかもしれません。しかし、外資系企業にはジョブローテーションはなく、いわゆるジョブ型が普通です。ですから、マーケティング専門、営業一筋の人が普通にいるわけです。そういう人たちはトップになれないのか、というと、決してそんなことはありません。
経営者としてすべきことは、未来を見据えた判断をするための視点(情報や数字)と判断・決断かと思われますが、女性幹部を増やすためのプロジェクトを実施すると、幹部候補の女性で数字を読むことに慣れていない人も少なくありません。しかしこれは、学ぶと身につくもので、以前、ある幹部候補の女性が「今まで、数字に興味はなかったですが、読み方を教わったら理解できました!」と嬉しそうにおっしゃっていたことがありました。もし下駄を履かせるとしたら、経営的判断をするための数字を理解する力、かもしれません。でも、学ぶことで身につけられるんだ、と実感しました。
また、判断、決断は慣れていくことが大事です。ですので、研修では自分が判断することに勇気や自信が持てなければ、ひとりで抱え込まずに周囲の意見を聞くこと、そして違った、と思ったら変更も可能、一度決めたからと言っても、覆すことはできる。覆す勇気も必要、ということをお伝えしています。
これらの経験から、女性には下駄を履かせる必要がある、と一言で片づけられがちですが、もし下駄を履かせるとしたら、経営的判断をするための視点(情報や数字)ではないか、と様々な企業のサポートをしていて感じます。(もちろんすべての女性が同じ課題を抱えているわけではありません。傾向としてのお話です)
さて、話は戻りますが、日本航空の鳥取氏が社長に抜擢されたのは、「彼女の仕事のやり方」だそうです。様々な人を巻き込み、やる気にさせ、協力者を募っていく、いわゆる下から支える「サーバントリーダーシップ」です。そして、ここぞ、という時や間違っている、と思った事ははっきりとジャッジし、言える人である、というのも彼女の強みのようです。
先の読みづらい変化の激しいこれからの世の中、経営を担うためには、様々な経験を持った多様な社員を如何に生かしていくのか、社員に寄り添い、情報を吸い上げ、コンセンサスを得ながら判断していくスタイルが重要なのかもしれません。また、違う、と思ったら私が間違っていた、と潔く謝り、舵を切れるかどうか。プライドが高すぎると間違っていたことを認めにくいものです。
万能なひとりで何でも解決できるリーダーはいません。いかに部下や社員の意見に耳を傾け、協力してもらえるか。リーダーは性別ではなく、人格者であるかどうか。多くの人が、この人を助けたい、と思えるかどうか、が大事な時代かもしれません。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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