「女性や若手は管理職を目指すことに対して積極的ではないから」このような声を主に男性管理職から聞くことがあります。時にそれをやる気がない、とイコールの意味にしてしまう人がいます。今回のコラムでは、(1)管理職を目指したくない理由と(2)本当に管理職を目指したくないのか、について考えてみたいと思います。まず、(1)に関しては、責任が重くなるから、ライフイベントと両立しづらくなるから、残業が増えるから、という働き方が理想的ではない、という理由から目指したがらない人が増えているようです。そこで(2)にも繋がるのですが、(1)の問題が解消されたらチャレンジしてみたい、という声が多いように感じています。
つまり、女性や若手は、現管理職の人たちの働き方が理想的ではなく、役割を担うこと自体に後ろ向きではない、ということです。
閣議決定された2023年版の「男女共同参画白書」では、およそ2万人の男女を対象に調査した結果、子供を持つ男性で、「仕事の時間を減らしたい」と答えた人は40~60代で25.7%、20~30代では34.1%。「家事育児の時間を増やしたい」と答えた人は、40~60代で14.3%、20~30代では27.7%。若い世代ほど家事育児に積極的に参加し、育児休暇を取る意欲も高いことがわかったのだそうです。若手になるほど、特に男性の価値観とミドルシニアの価値観には大きなギャップがあるようです。管理職=ライフに時間を割けなくなる、という印象が払しょくされなければ、担いたくないと思うのでしょう。
続きまして、(2)の本当に管理職を目指したくないのか、についてです。20代30代の女性たちの管理職への意欲ですが、同じく2023年版の「男女共同参画白書」では、20代の女性で「昇進できる」と考えている人は39.3%、「管理職につきたい」と考える人は28.9%。40代以上に比較するとどちらも10%以上高い結果になったとのことです。
現在の40代女性が社会人としてスタートした時代は、まだまだ性別で仕事の役割が決まっており、例えば営業や管理職、経営は男性の仕事で、それをサポートするのが女性の役割、といった固定観念がありましたが、今の若手にはそのような概念は薄らいでいます。そして、定年まで働き続けることは当然のように考えている世代です。
時代が変わったのに、組織の中には、女性は管理職をめざしたくない、という固定観念が抜けていないのかもしれません。
そして、もうひとつ、そう思われる理由があります。それは、女性たちが自ら管理職になりたい、と手を挙げないことです。手を挙げないことにより、本当は担えるだけの経験があるのに、機会損失になっている可能性があります。こちらのデータもご参照ください。
21世紀職業財団の2020年度男女正社員対象ダイバーシティ推進状況調査、20~30代女性対象に管理職になりたいかを調査したところ、「推薦されればなりたい」まで含めると意向が6割になりました。一般職、エリア職、総合職すべての女性が同じ結果になりました。自ら手を挙げて管理職になりたいと思っている人は少ないものの、推薦されれば、まで含めると一気に増えるのです。
女性向けにリーダー候補研修を実施する際、研修前は管理職になることに抵抗を感じていた人が、最後は前向きに管理職になることを決意されることはよくあります。その時の理由の多くは、「自信がないけれど、周囲が期待してくれるから頑張ろうと思った」とおっしゃることも多いのです。
自身のキャリアアップとして管理職を目指してほしい若手や女性を増やしたい。そう思ったら管理職の働き方の見直しと背中を押す。この両軸でのサポートを会社全体でしてみてはいかがでしょうか。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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