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2022年05月10日

カーボンニュートラル、企業の対応策と取り組み方

現在、カーボンニュートラルは世界の大きな潮流であり、日本政府もその実現にむけて強力な施策を打ち出しています。個々の企業にとっては、具体的に何を行うべきかということに大きな関心があることと思います。今回はカーボンニュートラルに対して、企業の対応策とその取り組み方について触れてみます。

カーボンニュートラルの推進とビジネスチャンス

カーボンニュートラルの達成のために、日本における国レベルでの取り組みは次の通りです。まず、発電部門の脱炭素化を推進します。産業、運輸、業務、家庭部門などの発電部門以外では、電化が中心になります。熱需要には、水素の利用やCO2回収で対応します。

発電部門の脱炭素化には大きく二つの方法があります。一つは化石燃料を使わずに水素などを使って発電を行う方法や、再生可能エネルギーで発電する方法です。もう一つは化石燃料を使って発電しますが、発生する二酸化炭素を大気中に排出せずに、回収して地中に貯留する方法です。

発電部門、非発電部門のいずれの分野においても、大量の水素が必要です。なお、発電部門は電力部門とも表現されますが、今回は分かりやすく発電部門というように記述します。

カーボンニュートラルにより、発電やエネルギー利用が大きく変わってくることにより、様々な技術や装置、システム、さらに省エネ機器が一層使われていくことになります。その結果、ビジネスチャンスが生まれたり、さらには新産業の創造という状況にも発展します。エネルギー関連の企業等においては、カーボンニュートラルによるビジネスチャンスを生して、企業の更なる発展を図ることが出来ます。

カーボンニュートラル、企業の取り組み

上述で紹介したカーボンニュートラルおける企業の取り組みは、社業が何らかの形でカーボンニュートラルに関係する企業の場合であって、一般企業が行うような事柄ではありません。一般企業がカーボンニュートラル、すなわち脱炭素に対応する方法や、その取り組み方について次に紹介いたします。

水素社会の構築やCO2の回収と処理は、政府が先導して日本全体で実施するものです。一般の企業にとっては水素ネルギーを利用したり、省エネルギーに取り組むなどを、費用対効果や経済合理性の下で行うことになります。

省エネルギーとしては、様々な省エネルギーを実施したり、節電の推進やエネルギーの高効率な利用も省エネルギーです。たとえば、照明をLED化したり、事業所の屋根の遮熱塗装を行う他、古い機器を省エネ機器に更新するなどです。

再生可能エネルギーは、日本では太陽光発電と風力発電が主たる方法です。電動自動車の利用も脱炭素につながります。

エネルギー転換は極めて重要です。化石燃料の代りに水素や電気を利用することが推進されていくことでしょう。その他、燃料としてA重油からLPGに変換もCO2の排出を削減できます。

これまで、国および自治体等においては、温暖化対策、脱炭素対策、省エネ推進、再生可能エネルギーの推進などを目的として、補助金、助成金、融資金、税の優遇措置などが実施されています。これからは、カーボンニュートラルの推進に力を入れた形で実施されていくことでしょう。企業でカーボンニュートラルに取り組まれる場合は、これらの補助金等を大いに活用されることを期待致します。

また、カーボンニュートラルは温暖化防止のパリ協定のみならず、CSR、SDGs、ESG投資などにも寄与します。カーボンニュートラルやSDGsの取り組みを着実に実行して実績を積み重ねることにより、企業価値が上がり、ESG投資における評価も上ることになります。

カーボンニュートラルは国単位で達成を目指すもの

1990年代に地球温暖化問題への取り組みが熱心になされましたが、当時、「あの業界はCO2をたくさん出している」とか、さらには名指して、「あの企業はCO2をたくさん出している」などと、社会で流布されました。魔女狩り的な言動は社会にとって明らかにマイナスです。カーボンニュートラルは、個々の企業が単独で達成を目指すものではありません。

ある講演を行ったとき、「廃棄物処理を行っている当社では、カーボンニュートラルなどは不可能です」と悩みの質問を受けたことがあります。カーボンニュートラルは国単位で実現が求められるものです。すなわち、国の取り組みの下で企業、国民が力を合わせてトータルで達成を目指すものです。

社会にはエネルギーを沢山使う産業もあれば、エネルギー使用の少ない産業もあります。社会は様々な産業によって構成されており、どれ一つ欠いても今の社会は成り立ちません。

カーボンニュートラルの国際動向に常に留意を

現在、EUは厳しい環境規制を実施しており、これをクリアできなければ、世界の企業はEU市場から締め出されます。カーボンニュートラルも同様に、厳しい環境規制を世界規模で推進して、結果として排他的な経済の優位性をEUが目指しているという指摘もあります。元々は世界の中心であった西ヨーロッパです。EUの誕生で、これからは様々な分野で世界のイニシアチブをとってくることでしょう。

CO2(温室効果ガス)の排出をプラス・マイナスでゼロにすることは、極めて困難なことであるとか、カーボンニュートラルの目標はそもそも実現可能なことなのかという意見もあります。カーボンニュートラルは、必ずしもCO2の排出の正味ゼロが目的ではなく、それに向けた努力をすることに意味があるという考えもあります。

省エネの推進はコストがかかりますが、原油等のエネルギー価格が上昇すればするほど推進されます。さらに、カーボンニュートラルの実現にはコストがかかりますが、温暖化の影響が大きくなればなるほど推進されることになるでしょう。

エネルギー計画や施策は、国の内外の情勢に左右されます。情報の的確な入手と理解が大切です。特に原油価格の高騰の原因を知るとともに、将来の動向を予測できるような情報の入手が重要です。また、ロシアのウクライナ侵攻により日本を取り巻くエネルギー事情に極めて大きな影響が及ぼされることでしょう。

地球温暖化の進行、日本政府の積極的なカーボンニュートラルの取り組みの現状を考慮しますと、個々の企業はカーボンニュートラルとの様々な形でかかわっていくことになることでしょう。個々の企業においては的確な取り組みによって、脱炭素と合わせて企業発展を達成されることを期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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