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2012年10月25日

「しっかりやれ!」と叱責するだけのリーダーは、二流

「決める政治」というフレーズを良く聞きます。民主党の代表選で再選された野田首相の言葉です。

 ゲームの解説や講演などの仕事で、私は頻繁に地方へ出かけます。そこで目にするのは、新たな新幹線の工事であったり、道路の整備などです。東京都内を車で移動していても、首都高速道路などは工事が絶えません。

 民主党が政権交代で掲げた「コンクリートから人へ」という方針は、いったいどこへいってしまったのだろう。「決める政治」と言うけれど、誰のために決めているのだろう? などと思ってしまうのです。

 ブレない姿勢というのは、リーダーに求められる大切な資質でしょう。
 しかし、「何のためにブレないのか」があやふやになると、リーダーはグループの賛同を得られなくなってしまいます。野田首相や民主党への指示が拡がっていないのも、民意が置き去りにされているからではないか、と私自身は感じています。

 サッカーの監督も同じです。チームの特徴や個々のタレント性に合わないものを求めても、良い結果は得られません。ひとくちに決断と言っても、「良い決断」と「悪い決断」があるのです。

 監督があれもこれも決めてしまう、つまり目標達成へのプロセスをすべて押しつけてしまうのは、「良い決断」とは言えません。監督自身は「働いている」という満足感を得られるもしれませんが、選手は「やらされている」という意識になりがちです。チームが勝利を逃したら、選手のストレスは溜まるばかりでしょう。

 たとえば、チームが連敗中だったとします。
選手の心では、「これ以上負けられない」という気持ちが膨らみます。「勝ってやるぞ」という気持ちとは似て非なるもので、どうしてもプレーが消極的になります。ミスを恐れてしまうのです。

 この日も、安全第一のプレーが多い──そんな状況で、ハーフタイムを迎えました。「しっかりやれ!」と叱責するのは簡単ですが、それでは具体性に乏しい。「このままだと、いつか失点してしまうぞ。ゴール前ではもっと身体を張らなきゃダメだ」と危機感を煽っても、選手は「そんなことは分かっているよ」と思ってしまうでしょう。

 私ならこんな話をします。
「ゴール前で身体を張れるかどうかが、今日は勝敗を大きく分けるぞ。思い切ってチャレンジしよう」と。

失敗を怖がらない姿勢を意識させ、前向きな姿勢を呼び覚ますのです。 

 それでも、ゲーム内容が改善されないことはあります。負けてしまうことがあります。しかし、選手を責めたりはしません。私は自分を責めます。

後半も選手のプレーが変わらなかったのはなぜか。自分の指示のどこが至らなかったのか、を考えます。

 結果を残しているチームは、個々の選手が主体的にプレーしています。監督の指示を待つような受け身の姿勢でなく、「自分がやらなきゃいけない」という当事者意識を持っているのです。

 サッカーの指導者としてそれなりの経験を積んできましたが、まだまだ勉強することばかりです。選手に教えられることは、本当に多い。そう考えると、学ぶ姿勢を忘れないことが、監督にとって何よりも「良い決断」かもしれません。

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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