2010年12月01日

『もしドラ』で自らの失敗を反省

 今、驚異の150万部を突破しているあの本...私もずっと気になっていたのですが、移動の多かった最近、本を購入し車内にてようやく手に取ることになりました。ビジネス書とはにわかに信じられない表紙絵のそれとは『もし野球部の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』です。"もしドラ"などと略されたりする人気書籍です。

 すでにこの本を読まれた方、あるいはドラッカーの『マネジメント』自体を読まれた方、共に多くいらっしゃるかと思いますが、簡単に内容に触れますと、ある事情で高校野球のマネージャーになって野球部を甲子園に連れて行くことを決意した主人公の女子高生が、「なったはいいが、マネージャーって一体どんな仕事をするんだろう?」という初歩的な疑問を解決するために、いわゆる野球部の女子マネージャーの仕事の内容が書かれている本を買おうと、1冊の本を書店で購入します。それが"経営学の父"と言われるドラッカーの『マネジメント』でした。読んでみるとまったく野球部の"マネージャー"(選手達の身の回りの世話をしたり、データをノートに取ったりする女子マネージャー)の仕事の内容についての記述はないのですが、その代わり"マネジャー"(マネジメントをする人。経営者。)に関する考えがびっしりと書かれていたわけです。この大きな勘違いがきっかけではありましたが、読めば読むほどこの本に引き込まれ、感銘を受けた主人公の女子高生は、次々にその本に記述されている考えを野球部に当てはめ実行に移していきます。これまでの成績は最高で都大会ベスト8、都内では万年中堅の実力に位置していた野球部がみるみる成長を遂げ、甲子園を夢ではなく現実的な目標として目指し奮闘するという、いわばビジネス書兼小説という斬新な発想の読み物となっています。ドラッカーの考えを非常にわかりやすく噛み砕いて説明されている上に、「この組織論を自分の持ち場に置き換えてみるとどうなるだろう...?」とすぐにでも日常に反映しやすい内容なので、私は主人公の女子高生同様に終始共感仕切りでした。

 なんだか本の紹介文のようになってしまいますので、内容についてはこれぐらいにして本題に入りますが、では、実際に自分の持ち場や組織に当てはめて考えてみたとき、この本のように果たしてうまくいくのでしょうか?

 私はこの本を読んで特に気になったキーワードがあります。"野球部の監督は、実はマネジャーではなく専門家"、"マーケティングの重要性"、"人の能力を生かす配置と仕事の内容"、"持ち場以外のことは担当者を信頼し任せ、口出ししない"という4つです。なぜこれが心に引っかかったのかと言いますと、このキーワードに関わることでチーム内に不協和音が生じた体験があったからなんです。そう、"もしドラ"のようにうまくはいきませんでした。

 上記に挙げたキーワードの一つ"野球部の監督は、実はマネジャーではなく専門家"について。この本に出てくる監督は、東大卒で野球に対する情熱もあり野球の知識や戦術をよく知っていますが、いかんせん、それを伝えようとするときに難しい言葉を使いすぎるきらいがあり、さらに論理的思考で全ての物事に当たるので、生身の人間の起伏ある感情的な部分に少し疎いところがある設定として書かれています。そしてこうも書いています。こういった知識が豊富で、論理的思考の人物は"専門家"であると。ここでマネジャーがする仕事は、専門家(=監督)の特性を生かし、まずチームの進むべき方向性や戦術を仰ぎ、それをわかりやすくチームに伝えることができ、またある程度の専門知識も兼ね備えた人をその専門家の専属通訳に任命し、通訳を介してチームに伝達・共有した方がうまくいくと言っています。マネジャーは全体をみて、適材適所な配置に人事を行う任命責任者でもあるということです。

 数年前、私自身チームのメンバーの一員として結束の強い組織を作ろうとしていたことがありました。当時を振り返り、うまくいかなかった理由をいつしか本の中に探していました。当時のチームメンバーを本の登場人物に当てはめて考えてみたとき、専門家(本では野球部監督)キャラの人が確かにいました。私達のチームのその方は、個人の能力がとても高い人でした。専門家の仕事である、方向性や戦術を考えるのはもちろんのこと、全体のマネジメントもし、役職を任命し、通訳どころかチームメンバーに直接指示を出していました。結果として、全部一人で仕事を請負過ぎて、本当にやりたいことがチーム内で共有できず、方向性がぼやけ、目標達成が消化不良のまま終わってしまうということになりました。

"人の能力を生かす配置と仕事の内容"というキーワードもここにリンクしてきます。方向性がぼやけると、チーム全体が浮き足立ち、せっかく配置した人事が機能しなくなります。全体的に停滞ムードが高まると、人の仕事のことが気になり始めたり、自分がそもそもこの仕事に向いているのか?などと疑問に思えたり、任命者は私の能力を理解していないのでは?と不信感を持つようになります。それに対してどんな不満が出てきているのかなどの聞き取り調査"マーケティング"をする聞き上手な人が、マーケティング以外の仕事をしなくてはいけなくなっていたりして、聞き取りすること自体の機会を失います。また、チーム内に対する内向きなマーケティングも重要ですが、外側の"顧客"が私達チームに対して何を求めているか、これを知ることもさらに重要であるのにそれが手付かずになります。このモヤモヤした閉塞感を取り払おうとして「まかせておけない!私が現場を仕切る!」と買って出る船頭さんが、ようするにマネジャー役をやろうという人が次々に名乗りを上げ、"持ち場以外のことは担当者を信頼し任せ、口出ししない"のキーワードは一切ないことに。もう口出ししまくりです。口を出された方は方で「そっちだって自分の持ち場がちゃんとできていないのに...」と、指摘点を修正しようとする前向きな力の使い方よりも、腹立たしさの方が先にたってしまい、不協和音はさらに拡大してしまうことになりました。

 本のように現実は一筋縄ではいかないでしょうが、"もしドラ"の主人公のように私も1冊の本との出会いによって、失敗の原因や改善点に気づき、次に新たな組織を作る機会があれば必ずや生かされる考え方を与えてもらったと思います。メンバー同士、どういうチームや組織を作りたいのかをじっくりと議論し、その中で人間性や能力を見出し、適材適所な持ち場で力を振るう。理解し信頼しあう。まずここを徹底させたいですね。