2009年10月01日

ジュニア世代の選手の悩みに触れて

文化の秋?スポーツの秋?だからなのでしょうか、この1,2カ月の間に中学校や高校の文化祭、文化講演会、そして色々なスポーツの合宿先に出かけて行き、ジュニア世代の選手にセミナー講師としてお会いするような機会が重なりました。行った先での出会いがなかなか個人的にも面白く感じ、次に伺うのが楽しみな今日この頃であります。今回はその出会いの場でのやり取りを一部切り取って、皆様にご紹介させて頂こうと思います。

 ジュニア世代へのセミナーでは、こんなやり取りがありました。思春期というのか、青春真っ只中の世代で関心があるのはどうやら「恋愛話」コイバナのようでした(笑)。実はセミナー中、あまり積極的な質問が出なかったのですが、終了後に個人的に質問を受け付けたら、来るわ、来るわ!コイバナの質問が!!「武田さんは選手時代、彼氏はいたんですか?シンクロは男女交際禁止って言われてたんですか?」とか「彼氏が試合を観に来たとき変な緊張しませんか?僕は4回彼女が観に来てくれて全敗なんです。有り得ないミスをしたり、この間なんて何年かぶりに予選落ちしてしまって。」とか。「全然会えないのに彼氏は許してくれたんですか?私は駄目になってしまいました。」とか。しかし、結果としてそれがとてもよかったようです。

 コイバナでひとしきり大盛り上がりしたところで、選手達はリラックスして話しやすくなったのだと思います。いよいよセミナー中には出なかった真に迫る質問が出だしました。それぞれの選手達から、その競技が大好きで本気で頑張りたいという気持ちが伺えました。

 「私は一度失敗したらどんどんネガティブな思考回路になってしまい、どうしても失敗を引きずるのでまずはそれを直したい。武田さんはそんなときどう切り替えていましたか?」

 「試合中はどんなことを考えていますか?無になっているのか、次はこうして、次はああしてとずっと考え続けながら行っているのですか?前、自分は無になって行こうとしたら、逆に緊張感に欠けて足に力が入らなくて失敗しました。」

 「直さないといけない注意をいっぱい抱えていて、それを本当に直したいのにうまくいかないんです。例えば一つできたらもう一つができなくなってしまったりするのでどうしたらいいでしょうか?」などなど。

 こちらとしても、質問に対して精神誠意で応えようと思いました。その考え方がその選手にとっては最良の答えじゃないかもしれないですが、とにかく同じ迷いや悩みを持ったときにどう対処したかを思い出して素直にお話しました。

 私も絶対に失敗が許されない試合で大失敗をしてしまった経験があり、周りにも申し訳なく、自分のことも許せなく、本当にやり場のない感情になったことがあります。ここから這い上がるために重要なことは、その失敗から学んで二度と同じ間違いを繰り返さないことはもちろんのこと、失敗したことを払拭するぐらい以前の自分をはるかに超えた演技をしなければ競技人生を終われないなと考えるようになりました。そこでまず始めたのは、なぜ失敗が起こってしまったのかを自らが探り、知ること。大会前の合宿からさかのぼって、取っていた行動、体の状態、精神の状態のあらゆる面から徹底的に分析してみました。そうしたら見えてくるものがたくさんありました。原因が特定できてくると、それを克服していくことでそれが逆に試合へ臨んでいくための自信に変わっていきました。

 あのまま辞めなくてよかったと今は心から思います。失敗はむしろ私にとって必然なことだったとすら思えるようになりました。とにかく選手生活で自分の財産になったのは、自己分析力がついたことではないでしょうか。毎日の行動や感情や感覚などを夜寝る前やお風呂に入っているときの冷静な状態で分析すると、記憶に残しておきたいこと、消去してもよい情報などがその都度整理され、それを「脳内ファイル」に保存していくという作業になります。いつしかそれが膨大なファイルの量になります。だから選手から頂いた他の質問にも、そのケースにあてはまるようなファイルが頭の中からすぐに見つけることができたので、言葉に詰まることなく答えることができました。

 他に例に挙げた質問については、このような経験談をお話しました。

 試合の最中は、無ではなく、次にすべきことを冷静沈着に考え、脳からの指令を筋肉に正確に伝達していくというような感覚で競技をしていました。それを確実にこなしているかどうかをもう一つの自分の意識が確認している感覚もありました。前提として試合で冷静沈着でいられるためには、あれこれいっぱい考えなくてもいいように日々の練習でいかに不安材料を無くしておくことができるかにかかってくるので、初めてその時コーチが言っていた「練習は120%でやって、試合は100%を出せ!」の意味がわかりました。

 一つの注意を守ると、他の注意が守れなくなるという悩みについては、与えられた注意が例えば5つあったとしたら、まず確実に意識して直せそうな注意を一つ選び、何度もその注意だけを反復してやってみて何回ちゃんとできたか統計を取ります。それによって技術補正に効果が高い注意の直し方なのかどうかがわかると同時に、その動作を何度も繰り返していたことによっていつの間にかそれが無意識のうちに行えるようになっていたりもします。そうやって一つずつの注意を潰していくという理論です。

 こういう場には、これからもどんどん出掛けていきたいと思います。質問によって、私自身ももう一度自分を知ることにもなりましたし、それが今のセカンドキャリアにおいても活かせることだと思っています。未来に会うであろう、皆さんとの新しい出会いに今日もわくわくしている武田美保でした。