2015年06月05日

女子アスリートの産後の現状

 最近行く先々で「シンクロに男子選手がいるんでしょ?すごいねぇ!」と話し掛けられます。そうなんです。今年7月に開催される世界水泳選手権に男女混合の『ミックスデュエット』が新種目として組み込まれ、その日本代表に一人の男子選手が選ばれました。その奮闘ぶりをメディアが取り上げる機会が増えたことがその理由だと思いますが、井村ジャパンも復活の兆しですし、何といってもシンクロ界が盛り上がっているというのはOGとしても嬉しいことだと思っています。男子選手の話題もさることながら、このミックスデュエット。女子のデュエットに求められる技術の高さというよりも、芸術性の面での見せ方に特化した構成になるだろうと予測されています。だからこそでしょうか。なんと表現力に定評のある歴代のソリストがこぞってこのミックスデュエットにエントリーしているのです!

芸術、技術共に不世出のソリストと評されるフランスのビルジニー・デデュー選手。スペインの至宝と言われていたジェンマ・メングァル選手。この両選手、既に1児と2児のママです。カムバックしてどんな表現を見せてくれるのか楽しみです。またアメリカにおいては、なんと過去に私自身対戦経験のある(1998年。アメリカ開催の大会という背景もありましたが、私達負けております・・・(苦笑))そのときの、そう、およそ17年前のライバルだった男女混合デュエットが復活しているんですよ!!前述の選手は皆私とあまり変わらない年齢なので、「おや?・・・私もいけたか?」などと思ってしまったのですが(笑)、それにしてもこれはかなり興味深く、面白いことになっています。

 そして今回このコラムに書きたかったことは、実は上で述べさせて頂いたことに深く関わっています。

 現在日本では女子アスリートが出産後に選手として第一線に戻ってくるケースがかなり少数なんですね。私が知る限り、二桁に乗っているでしょうか?もしかしたら更にいらっしゃるのかもしれませんが、海外に比べて少数であることは間違いありません。これまであまりその分野の専門医が必要でないとされてきたからなのか、日本の産婦人科の先生がスポーツドクターとしての登録をされている件数も少ないと聞きます。

 従って、出産後も選手を続けたい意志があっても、日本の現状では妊娠中は安定期に入るまでは運動は避け、安定期に入ってからも人によってはあまり動かないように言われる方もいらっしゃいますし、動けても負荷のやさしいエクササイズ程度。要するにトレーニングを約1年間ほぼ休み、出産後も育児でさらに加えて休むことになり、合計2年近くトップアスリートとしてやっておきたいトレーニングができないということになります。

 もう少し多く日本にスポーツに関する知識を持った産婦人科の先生がいてくださったとしたら、妊娠による体型変化(骨盤のゆるみ)や筋肉量が減ったとしてもどのタイミングまでなら半年ぐらいで元のレベルに戻せるのか?や、妊娠中でもやれる範囲のトレーニングの種類やその強度などのデータがあると、日本にミセスやママの選手がもっと多くなっていたかもしれません。おそらく妊娠、出産の段階で「トレーニングができない・・・」と現役続行を諦めたり、あるいはその逆で子供を作らないという選択をされる方もいたかもしれません。更に、出産後は体の衰えのみならず、育児とトレーニングをどうやって両立させていくか?という高い壁にもぶち当たります。海外の選手にそういった場合の国の補助の仕組みや専門的なアドバイスをどう受けたのかなど聞いてみたい限りです。

 さらに、私の思うところとしては、女子選手を指導される男性の監督やコーチは、女性の生理のことを知識としてどこまで知っていらっしゃるのか?ということも、今後日本のスポーツ界にとしては一度考察すべき案件ではないかと思います。私も現役中こんなことがよくありました。やはり生理前はイライラ感があるというか、感情がコントロールしにくくなるのです。例えば、いつもと同じような怒られ方をしているのに、生理前は妙に言葉に傷付いたり、「なんでこんなこと言われるんだろう」といつになく反発心を持ってしまったり、で、ふと気づけば「あ、私もうすぐそうだった・・・」というようなことがありました。

さらに、その生理が試合の日程に重なってしまった場合、パフォーマンスが落ちるのか落ちないのかも再検証する必要があるでしょうし、試合に重ならないようにする手段の一つとしてピルを勧められたりしますが、「ピルを飲むと体がむくむ感じがして、実際体重も増えたし、試合前に感覚が変わってしまいすごく嫌だった」という選手のお話も聞いたことがあります。またまたさらに、体脂肪率をかなり絞り込む競技がありますが、女子選手は体脂肪率が1桁台になると月経不順に陥ることも少なくありません。この月経不順が厄介なのです。ホルモンバランスが崩れて、女性が閉経後に起こる更年期症状が現れたり、骨粗鬆症のように骨が脆くなり怪我をしてしまったりと、まさに女性ならではの諸問題が沢山あるのです。それが議論置き去り状態なのです。

 これらのことに問題意識を持っていらっしゃる方が、勉強会やシンポジウムを開いたりされる動きが最近起こって参りましたが、私もですね、この件については積極的に参加したり、自ら勉強会を開いたりして取り組んでいきたいと思っています。