2008年08月01日

今だからこその人生を噛み締める

いよいよ北京オリンピック開幕です。連日オリンピックに関する色々な情報が入ってきて、見聞きするたびに血が騒ぎます。そんな今日この頃、ふと頭に浮かぶのは「そういえば私、セカンドキャリアを歩み始めてから4年の月日が流れたのだな・・・」ということでした。過去の連載にも「私は子供の頃からの習性なのか、オリンピック周期で物事を考えてしまう」というようなことを書きましたが、事実、4年に一度、猛烈に自分を振り返り見つめ直すことを実践してきました。オリンピック報道のテレビ画面や音声に混じって、「そろそろ時期ですよ」と誰かに囁かれているような気分になっています。

シンクロを始めて以来、将来の夢は五輪メダリストで「選手とは、4年に一度しかないオリンピックを目指すべきで、その舞台に立ち、全ての能力を出し切るべく取り組むことこそが本分。」と本気で思っていました。現実的に見てみると、オリンピックから次のオリンピックまでの4年という時は、それはそれは長く、濃く、正直、辛いことの方が多い。「やっていけるのだろうか」と自問自答ばかりの毎日で、唯一その思いが報われるのは本番で本領が発揮できたときだけという限定つき...。

それでも根本に、「シンクロという競技が好き」というものがあったので、時間と労力を費やす価値のあるものだと信じていられました。また試合後の達成感や充実感は何物にも変え難く、人生における最高の感動と言えるものでした。しかし感動が大きければ大きいほど、そのあとの反動が厄介なもの。「これからまた同じこと、それ以上になるようなことをもう一巡しなければいけないのか・・・。」と思うと愕然としてしまって、そのあまりにも過酷な4年という月日に再度足を踏み出す気力がなかなか湧いてきませんでした。だから、とにかく気持ちの整理をつけるために、自分を逆さまにしてぶんぶん振っても何も落ちてくるものがないぐらい空っぽになるところまで完全リセットをし、4年間を過ごせるだけの気力の"泉"みたいなものを満タンにしようと考えをめぐらせました。自分を見つめ直す作業はそのためにとても必要なことだったのです。

4年間を過ごして自分を見つめ直す時期に入り、今感じていることは「私、やっとセカンドキャリアに対して真正面に向き合っているかもしれない」ということです。これを聞いて「当たり前じゃない。4年も経ってるのに、この人、何を今更言ってるの?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、私にとっては実はとても大きな変化で、ようやく焦りがなくなって、着実な手ごたえを感じながら一歩ずつといった様子で進んでいる気がするのです。昔に比べて物事を考えるスパンが長期的になったとも言えます。

以前なら、オリンピックの前に毎年設定する目標の大会があり、ランキングも成果も全て1年以内に数字で表れるので、切られた期限が短い分、わき目もふらず全力疾走でした。現在は全く違うペースで、落ち着いた心境の中で「セカンドキャリアで自分は何ができるのか?」「自分がやりたいことと、社会から求められているものはどこまで一致しているのか?」「それをどう表現していくべきか?」ということを、ああでもないこうでもないと毎日考えています。これからの人生を考えることは"悩む"ということではなく、"取り組むべき面白いこと"というスタンスでいます。また大きな環境の変化もあり、昨年結婚をしましたが、結婚は自分の人生とそれまで他人だった人との人生が重なり合うということだと捉えています。人生設計を一人単位で考えていたところに、重なり合う人が現れ、これまでになかった将来を想像するようになりました。

以前の焦りを持った自分には考えられなかったことです。達成できていない目標を抱えていても、「今はそのタイミングではないんだ。機が熟すまで私は待てる。そして機が訪れたら必ず自分の経験の中で蓄積してきたものを思い切り表現して達成しよう」という考えになれたのです。

今は、その年齢や時期にしか味わえない経験や、その都度、その時々で色々な感情を持ち、自分にとって心地よい歩みのペースを感じながら、今はそれを探って楽しもうと思っています。もちろん毎日いいことばかりが起こる訳ではありませんが、困難の乗り越え方も、環境、年齢、心境によって方法は変わっていくはずなので、「今の自分ってこんなことを感じているんだ」なんていうものもしっかりと噛み締めていきたいです。

今だからこその人生を噛み締める、そんな発想を持てると、逃げ出したくなるようなことからも「今だからできる経験だ」と逃げずに受け入れられたり、受け入れることによって新しい自分の気づきになったり、また強くなれたりして、その経験値が年相応の輝きになって表れてくるのではないかと思っています。

アスリートのセカンドキャリアへの心の切り替えは、非常に難しいと聞きます。今回は思いがけずに、自分をさらけ出してお話をする展開になってしまいましたが、これが今の素直な気持ちです。