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2016年06月20日

日本ラグビー界の現状とこれから

2015ワールドカップ、これまでの歴史を思い起こすと、1勝の期待、0勝の予想が大半で、誰もが心のどこかにその数字を置きながら観戦していたに違いない。
しかし、日本代表は歴史に残る記録を打ち立てた。結果は大半の予想を裏切り、世界中に感動を与えるものとなった。

様々な競技において格下と格上が対戦する場合、例え実力が同等に並んでいたとしても、いざ勝負となるとなかなか勝つことはできない。関係者、観客、レフリーなど様々な人々の心理が、ライブでは大きな影響や反響として現れ、歴史や期待の大きな波に飲み込まれてしまうことが多い。

しかし、このワールドカップでの勝利は偶然や運が重なったものではない。私は、エディージョーンズからの一本の電話でそれを知ることとなる。

日本代表監督になる前年、彼はサントリーの監督を務めトップリーグの決勝と日本選手権を迎える直前であった。電話の内容は「私が創造する日本が世界に勝つための方法を、どうしても残るシーズンで成功実現させたい、そして日本一を経て私のスタイルで日本代表をワールドカップで勝たせてみたい、力を貸してほしい。」というものであった。

それは、日本全体がラグビーの構造を理解せず、勝敗ばかりを追い求めボールの争奪ばかりに着目をし、ルールの適応やプレーの質、プレーモラルのレベルが大きく世界から遅れているという問題であった。これは、ワールドラグビーが創造するボールゲームからも当然大きく日本が外れている点でもある。

私はただ一言OKと答えた。ここでは私が何を話したかはお教えできないが、すぐに様々なキーマンにできる範囲の中での協力を要請し調整を行った。

その年エディのサントリーは、これまでの日本のラグビーをはるかに上回るクリエイティビティなラグビーで他を圧倒した。

その後、彼は言葉通り着々とワールドカップでの勝利に向け、計算されたプロセスを積み上げ、ブレ幅の少ない右肩上がりの強化を確実に行った。
そのチーム作りにおける役割は、世界から見た日本の弱みと強みを明確にし、これまでの歴史によって積み重ねられた「世界には到底勝てない」という国民の深層心理までをも塗り替えていくことに及んだ。

歴史、文化を再検証し、ラグビーという競技の構造をロジックに分解、日本と世界の明確な差を数値化する。もちろん体格やパワー、スピードなど準備して整うものと、整わないものが本質的には残るのだが、集団競技であるラグビーではその弱みを連携や連鎖することによって合理的に補えることを、様々な角度から証明していくのである。

その構造の上にあってこそ、戦略や戦術に信頼性が生まれ、それに必要な体やスキルが明確化され、与えられた課題を選手たちは、最善を尽くして克服していくことになるのである。

そしてつかんだ3勝という大記録であるが、これもまた皮肉で、決勝リーグに進出することはできなかった。決勝に進出していても大会の長期化で持久力が持ち切らなかった可能性は残るが、優勝候補たちと戦う有志を見られることでまた違う好影響を残したに違いない。

ワールドカップを終え、五郎丸を中心に選手たちの人気は一時期頂点に達したが、スーパーラグビーでの連敗や日本のシーズンオフとうこともあり、現在は少し沈静化しているように見える。メディアではタレント選手に少々依存し、ラグビー本来の素晴らしさや社会に与える影響など、本質的に重要な部分が欠落した露出となっているところが少し寂しく思える。しかし、ラグビー事態が全く話題にもならない時代から見れば、これも手放しで喜ばなくてはいけないのである。

ラグビーに少しでも愛着のある人は、人気選手や勝敗だけではなく、ラグビーの本質的な魅力をもっと語り合い、語り伝えて欲しいと思う。ひょっとするとラグビーを愛する人たち一人一人が、一週間に外に出て飲む回数を倍にし、呑む量を4倍ほどにすると日本のラグビーはもっと違った形で、文化や社会に貢献するスポーツへと躍り出るかもしれない。

さあ、今日もラグビーを語りにまちに繰り出すとしよう。

大西一平

大西一平

大西一平おおにしかずひら

プロラグビーコーチ

1964年生まれ。 大阪工大高で花園優勝。高校卒業後1年間ニュージーランドへラグビー留学。明治大学時代には3年時全国大学選手権ベスト4、4年時にはキャプテンを務め全国大学選手権ベスト8に導く。その後…

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