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コラム 政治・経済

2021年04月12日

国際化するビジネスを勝ち抜く文明論

現在ではビジネスのグローバル化が大きく進んでおり、人の交流も盛んです。世界は広く、様々な人種、多数の民族や国家が存在します。しかし、ビジネスの手法や国際社会の規範などの点において、その大要は欧米流が占めていることは事実です。

IT技術がいくら進んだ時代とは言え、ビジネスは人と人との交流で取り行われます。欧米の優れたビジネスマンと渡り合うためには、人類や世界に関する確固とした文明論を持っていることが望まれます。今回は西洋と東洋の文明を比較しながら論じてみます。

なお、日本人の間でのビジネスでも、確固とした歴史観や文明観を持っていた方が、ビジネスを行う上で極めて有利になることでしょう。

本人がビジネスという戦場の兵隊の一人である場合は、様々なビジネスメソッドやツールを学んで、それらを駆使することが成功につながります。しかし、本人が小隊の隊長として、さらには大軍の将軍としてビジネスという戦場で大きな志と責任を持つ場合は、確固とした歴史観や文明観を持つことによって成功の確率がより大きくなることでしょう。

なお、本稿では東西の文明や文化の違いを述べますが、その優劣を論ずるものではありません。そもそも世界の文化、文明に優劣は存在しません。存在するのは差異のみであり、本稿ではその差異の生まれた過程や背景、結果を考察します。

西洋と東洋の文明の違いを産み出した環境

地理的条件がもたらすヨーロッパと日本の風土の違いを考えてみます。緯度で比較しますと、イギリスやドイツは日本では北海道からさらに北のカムチャッカ半島あたりに相当します。逆に東京は、ヨーロッパからさらに南のアフリカのチュニジアの首都チュニスに近い緯度に位置します。

ヨーロッパは大西洋を渡ってきた偏西風のおかげで、緯度が高いにもかかわらず温かい季候になっています。しかし、ヨーロッパは緯度が高いので太陽の光は弱くなります。日本では太陽を赤色で、月を黄色で描きますが、ヨーロッパでは太陽を黄色で、月を白で描きます。太陽の恵みが少ないヨーロッパの農業事情はアジアと異なっています。

日本では野菜と言えば、太陽の恵みを一杯に受けた、様々に料理するとあまく美味しい葉っぱものの野菜を一般に指します。しかし、季候の厳しいヨーロッパでは野菜と言えば、ジャガイモやニンジンなどの根菜類か、あるいは豆類を意味します。

日本の国土の73%は山地ですが、1億2千万人が住んでいます。フランスの国土は日本の約1.5倍の広さで平野も大変広いですが、人口は約6千万人で日本の半分程度です。降雨量もしくは利用できる水の量が、その国の人口密度が決まる大きな因子となっています。大陸の東に位置する日本は雨が多い気候ですが、ヨーロッパは雨が少なく、太陽の恵みも少なく、農業生産性も低い土地となっています。

単位面積当たりで比較すると、米は麦の1.5倍のカロリーを提供できます。また、食するには麦は挽いて粉にしないといけませんが、米はそのまま炊いておいしく食べることができます。

そもそも、ヨーロッパ南部で太陽の恵みや水が豊かな一部の地域を除いて、ヨーロッパは米の栽培には適していません。さらに、ヨーロッパでは北に行くほど麦も生産できず、草地しかならない所も多いです。草しか生えない場所で生きていくためには、草を食する牛などの家畜を飼ってその肉を食べて生きていくしかありません。ヨーロッパでは肉食が盛んなのはそこに理由があります。しかし、家畜の肉を食べていくだけでは食料生産性は低く、多くの人は住めません。ヨーロッパ人は狩猟民族、東洋人は農耕民族と呼ばれるのも、このような事情からです。気候や地理的条件の違いは、風土というよりもその地域の文明を特徴つける大きな要因になっています。

東洋文明とヨーロッパ文明の相違点を生み出した最大の原因は、前者が後者に比べて温暖湿潤で農業生産性の高い豊饒な土地に恵まれていることです。地球上において人間が住み易い中緯度地域では偏西風が吹いています。雨は湿った空気が冷たい空気と接触する所で多く降ります。このことから一般に大陸の東側では雨が多く、西側では雨が少なくなります。雨が多いということは、物質の循環が盛んで、高い農業生産性が得られます。日本もふくめた東洋では農耕に精を出せば、多くの人々が生きていくことができます。

西洋文明の本質

東洋文明は内部発展型、ヨーロッパ文明は大航海時代や植民地政策に見られるように外部発展型といえます。すなわち、農業生産性が低いヨーロッパでは、人が増えれば外に進出して行かなければなりません。そうすると、侵略や対立という激しい抗争がおきます。戦いに勝たなければ、滅ぼされるかもしくは隷属するしかありません。そういう厳しい現実が宗教も含めたそれぞれの文明に自ずと違いを生じさせます。

私はそれぞれの宗教には存在する意義があることを十分に認識しており、敬意を払っております。本稿は宗教の優劣や善悪を論ずるものではありませんが、文明の本質に迫るためにやや厳しい論評を行う事を了解下さい。

十字架にかけられたキリスト像を初めて見た子供の中には、怖がる子供もいるそうです。自分たち以外の他の存在を認めず、戦いの対象とする見る場合は、自分達が信じる神こそが唯一の神であるという一神教を信じます。一方、農業生産性の高いアジアでは戦いや抗争が無いわけではありませんが、農耕に励めば多くの人々が生きていくことができます。

私の私見ですが、十字架にはりつけられたキリスト像は、油断するとあのようになりますという警告と戒めの象徴と考えることもできるのではないでしょうか。対して、例えば仏教では、お釈迦様の座像が多くみられます。屋外では立像もよく見られますが、時には横になられているお姿の像もあります。

繰り返された氷河期には多くの地域が氷で覆われたヨーロッパを日本と比べると、日本の植生の種類は約十倍と言われていいます。それだけアジアは自然が豊かなわけで、多神教が存在する理由の一つでしょう。

厳しい自然のヨーロッパでは、戦いに負けてたとえ生かされても、冬を乗り越えることは大変困難です。同じく厳しい自然の中東などにおいては、戦に負けて砂漠などに追放されると生きていくのは極めて困難です。

もっとも、自然環境の厳しいところにいると、心身共に剛健になり、生き延びたり、戦に勝つ力が増強していくことも歴史上でよく見受けられます。

これからは東洋型文明の時代

もう世界は飽和状態です。残念ながらヨーロッパ文明を引き継ぐ欧米人は世界のどこにも進出して行く余地はありません。これからの世界は、東洋型の内部発展を進めていく時代です。そのとき、東洋の「中庸」や日本の「和」の思想が極めて重要な社会理念となるでしょう。

さて、昔ある日本人が、半分ジョークでイギリス人に対して、「前の大戦で日本がイギリスと戦って申し訳ないですと」言うと、そのイギリス人は「長い歴史でイギリスは戦争をしたことのない国はありませんので、気になさらないように」という言葉が返ってきたとのことです。

また、キリスト教の人が「多神教のアジア人よりも、争うことはあるが一神教のイスラム人の方が強い共感が持てる、信じる」と言っていることを聞いたことがあります。ただ、欧米人と接触する機会があっても、歴史や政治を話題にする必要はありません、むしろ触れない方が得策です。

欧米の大企業の経営者と日本の大企業の経営者の最大の違いは、どれだけ優れた歴史観や文明観を持っているかという点だと言われています。欧米の経営者から見ると日本の経営者は経営に必要な歴史観や文明観が欠如しているように見えることでしょう。多分読書の量が違うのでしょうが、私は読書量よりも取得した事実に対する理解力、さらには多数の情報の深層にある本質を見抜く力などが圧倒的に違うのではないかと思います。

西洋と東洋の文明の違いを自分なりにしっかりと持っておくことは極めて重要です。欧米人に対して決して臆することなく、堂々と渡り合える歴史観、文明観を心に培っておくことを期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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