2019年05月10日

日本の農産物・食品の輸出拡大

日本の農業は克服するべき課題を多く抱えています。日本農業をいかに変えていくかが議論されて久しいですが、なかなかの解決の糸口が見出だせません。日本農業の振興策の一つとして農産物の輸出増大が進められています。今回はこの点に触れつつ日本農業を展望します。

日本の農産物・食品の輸出拡大の取組み

自由貿易が推進されますと海外から安価な農産物や食品が輸入され、日本農業に大きな影響を与えます。その対策の一つとして政府の主導による日本の農産物・食品の輸出拡大の取組みがなされています。当面の目標は日本の農林水産物の年間の輸出総額1兆円です。それを支援するための取組みとしましては、経産省の外郭団体であるJETROにより海外市場でPRが行なわれています。また、万国博覧会やサミット、オリンピック等を通して日本食文化の普及や魅力が発信されています。さらに、各省の連携の下で農商工連携や在外公館を利用して日本食文化の普及が進められています。

東アジアと日本の商品

東アジア諸国の経済発展により生活が向上し消費が増えております。東アジアの多くの国々と日本は儒教文化や漢字文化を共有しています。また、漢字を使わなかったり、イスラム教やキリスト教の国々であっても、実際にその国の経済に大きな影響を与えている華僑の人々も漢字文化や儒教文化を共有しています。日本人がヨーロッパや北米などでビジネスを行う場合は、異なる文化を克服することが必要なときがあります。しかし、東アジアでは共通の価値観を持ちながらビジネスを進められるケースも多々あるのではないでしょうか。

東アジアで富裕層が増加しており、高級品の購買が増えたり、日本への旅行者が増加したりしています。日本の商品、製品の魅力を十分にアピールして、東アジアにおいて日本の商品は高級で優れている、日本の食品はおいしく安全安心なものであるという地位を確立することが今極めて重要な戦略と思われます。

かつて家電製品などは価格競争で敗れ、日本の製品は市場から退場しました。しかし、これからは家電製品のみならず、あらゆる日本製品が東アジアにおける高級品としての位置付けを得て盛り返す可能性があります。

輸出用大量効率生産と競争力あるブランドを

東アジアでは日本の農産物は中国産などに比べて安全安心であり、そして味が良いといったイメージが強くあります。また、日本の果物は高糖度で甘くておいしいと人気で、さらに葉物野菜まで人気が広がっています

今後日本からの輸出が増えると期待される農産品、加工食品は、様々な青果物、有機栽培のコメや米菓、日本酒、味噌や醤油などの加工食品、4等、5等の和牛肉などです。

日本の農産物の輸出を拡大するにも課題が指摘されています。日本の農産品はオーバースペックであり、棚持ちが悪く、棚回りも悪いとよく言われます。超高級野菜や果物の輸出振興には輸出用大量効率生産が必要であり、競争力ある企業ブランドを作る必要があります。

日本の農産物や食品の輸出振興の課題

輸出を増やすということは、海外の市場で競争に勝たなければなりません。それは容易なことではありません。たとえば今栽培している農産物を単に売込んでいくだけでは、国際的な競争には勝てないでしょう。積極的にニーズを取り込む必要があります。具体的には輸出先で売れる農産物や食品を新しく日本国内で作り、それを輸出するというような努力が必要です。苦労せずして輸出を伸ばすというようなことは成功しません。

また、甘くておいしい日本の果物がアジアで売れるとなると、世界的な農産物企業が日本以外の国の農家と契約して類似の果物を生産し、アジアに売出すというようなダイナミックな対応が行われることも十分にありうることです。

現在の日本の売込み方法は、アジアの主要都市で物産展を開催したり、中東の主要都市で常設展示を行っています。政府の援助はありますが、物産展などの多くは都道府県単位で行っています。しかし、相手のニーズを掘り起こし、それに対応して農産物や食品を輸出するという積極さが必要です。

日本の農産物の多くは県単位の品種であり、日本国内での販売ですと通用するかもしれませんが、世界の市場ではあまりにも小規模のブランドであり通用しないと思われます。世界には、果物や野菜の分野ではドール、サンキスト、チキータなどの有名なブランドがあります。日本の農産物も世界で競争できるビッグブランドで世界市場に乗り込んでいく必要があります。

経営人材の確保

輸出を商社まかせにしますと利益が少なくなり、結果農家が得る利益が減少します。農業事業者が主体となって輸出を行っていくべきです。しかし、世界での競争は極めて厳しいものです。輸出振興を図るためには経営体制の強化が必要で、特に経営人材の確保が大変重要です。

経済がグローバル化する中で、日本において低迷を乗り切るために外国人を経営のトップに据えた大企業がたくさんあります。たとえば、日産、ソニー、武田薬品、マツダ、日本板硝子、オリンパスなどです。

世界に通用するビジネス手法を持った人材を確保し、世界を相手に競争できる経営体制を築かなければ、国際競争に負けることは火を見るより明らかです。

世界は今日本食ブームでもあります。優れた日本の農産物や食品が一層輸出されると、日本農業の振興に役立ちます。国や地方自治体に頼るのではなく、自力で競争に勝ち販売できるような体制の確立を期待致します。