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コラム 政治・経済

2010年09月03日

民主党の右往左往

9月14日に予定されている民主党の代表選。その告示日(9月1日)を控えて、民主党内の駆け引きが活発だ。要するに挙党体制をつくるのかどうか、あからさまに言ってしまえば小沢一郎前幹事長やそのグループをどう処遇するのかということに尽きるのだろう。

そもそも民主党内に党派闘争を持ち込んだのは菅総理だと思う。まさに全共闘世代に相応しい排除の論理である。それが最も明らかに出たのが、鳩山代表が辞任した後の代表選だった。「しばらくおとなしくしていたほうが、民主党のためにも、国のためにも、本人のためにもいい」と脱小沢を「宣言」した。

排除の論理は必ず対立につながる。政治家は自らの影響力を失うことには敏感だ。この民主党の代表選で何もせずに、しかも排除されたままでいれば、小沢前幹事長はそれこそ民主党内の求心力を失うだろう。そうなったら、民主党からの離脱によってキャスティングボートを握ろうとする動きが小沢グループ内で生まれてくることははっきりしている。「政権党から離脱することはありえない」という見方もできるとは思うが、存在感が薄れてしまえば政権党にいる価値はない。

しかし最も問題なのは、こうした抗争が政策論争にまるで発展しないことだと思う。昨年の衆議院選挙のときのマニフェストを守ることが日本の現在の状況を救うのかどうか、救うのだとすればその財源をどうやって生み出すのかということについて菅首相も小沢前幹事長も多くを語っていない(菅首相は参院選で消費税を持ち出して敗れて以来、まるで借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。まるで言質を取られるのを恐れて、自らの口に封印をしているようにさえ見える)。

急激な円高に見舞われて、ようやく政府と日銀は対応策を打ち出したが、現状認識があまりにも遅いのと、内容的にも市場の「想定の範囲」であったために、円高を切り返すところまでは行きそうにない。

いま世界の先進国は共通した悩みを抱えている。経済を立て直すために内需が足りない(雇用が回復しない)のどうするかということだ。しかし国のポケットはそれほど深いわけではないし、ギリシアのように市場からノーを突きつけられれば、その破壊力は政治的な思惑など吹っ飛ばしてしまうほどすさまじい。だからこそ、自国通貨を安く誘導して輸出主導で景気を回復させることができればいいという誘惑が強まる。欧米はまさにその路線だ。1929年の大恐慌の後は、世界が保護貿易主義に陥り、それがやがて戦争への道をひらいていくことになったが、やや形を変えた「貿易戦争」が始まっているということも言えるのかもしれない。

そのような状況であることを考えれば、民主党が分裂するとかしないとか、党内抗争をやっている場合ではないという自民党の主張もよく分かる。ただビジョンや政策をきちんと議論できるのなら、選挙戦をやる意味はあると思う。もしそれがなければ、いくら挙党体制とかトロイカ体制とか言っても、いずれまた菅首相と小沢氏の間で対立が再燃することは避けられない。そもそも日本が置かれた状況をどう考えるかということについても、この二人の間には相当大きな開きがあるようにも思える。

日本の政治が経済にうまく対処できないことを見透かすように、円が買われ、またどこかで円が売りたたかれる。これで大きな損失を被るのは国民である。極端な円安になればエネルギーなど輸入されるものは高くなるし、日本政府の資金調達が難しくなって金利が高くなり、結果的に日本経済の足を引っ張られることにもなりかねない。そのあたりをしっかり見据えて、民主党代表選を戦ってもらいたい。もしそれができないのなら、民主党への政権交代は日本にとって沈没への一里塚だったと、後世の歴史家は言うかもしれないのである。

藤田正美

藤田正美

藤田正美ふじたまさよし

元ニューズウィーク日本版 編集長

東京大学経済学部卒業後、東洋経済新報社にて14年間、記者・編集者として自動車、金融、不動産、製薬産業などを取材。1985年、ニューズウィーク日本版創刊事業に参加。1995年、同誌編集長。2004年から…

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